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愛情
【17】
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「そういえば、周はまどかさんのご両親に挨拶したのか」
食事を始めて暫くしてから、父親がそう口にした。
「いや、まだなんだ。この間、たまたまお母様とはお逢いして」
「結婚も視野に入れているならしっかり挨拶してきなさい。まどかさんのご両親だって心配するだろう」
彼の父親がそう言ってくれて安心する。どうやら結婚に反対はしていないようだ。おそらく今までの話の流れからして、私の年齢も知ってのことだろうと思えた。
「そうだね。俺も、今度改めて挨拶に行かせてもらうね」
「う、うん。うちの両親も喜ぶと思う」
うちには男がいないから。
経済力のある若い男性なら、あの父親も文句はないだろう。母は、すっかりあまねくんの美貌に惚れ惚れしてしまっているし、仮に反対されたとしたって説得するのは父親だけだ。
「まどかさんのご両親はどんなお仕事をされているんですか?」
話の流れで父親がそう尋ねる。こういった場合、両親の仕事も大事だなと思う。
「父が高校の教師で、母は養護教諭です」
「ほう……高校の。それはそれは……お父様は厳しかったんじゃないですか?」
「そうですね……道徳や倫理に関しては厳しかったようにも思います。けれど、勉強や将来のことについては好きにさせてくれました」
「そうですか。それでは、まどかさんの優しいところや誠実なところはお父様讓りでしょうか」
目の前で穏やかに微笑んでくれるものだから、一気に気持ちが豊かになる。
お世辞でもそんなふうに言ってくれたら、少しは認めてもらえた気分になる。
「周からも聞いてるのよ。まどかちゃんは介護士さんで、お年寄りにとても優しい子だって」
あまねくんを挟んだ母からもそんな言葉をもらい、私もつい笑顔が溢れてしまう。
「うちには母もいますしね。高齢者に優しい方がいるのは嬉しいですよ。お母様も養護教諭っていいましたね?」
「養護教諭って保健室の先生?」
父親に続き、あまねくんがそう尋ねる。
「うん。もともとは保健師で、市の保健センターで働いていたみたいなんだけど、急に枠が空いたみたいで、倍率が高くて中々養護教諭にはなれないからこの機会にっていって転職したみたい」
「そうなんだ……職場恋愛?」
「ううん、その時にはもう私が産まれてたみたい。もともとは養護教諭を目指してたみたいなんだけど、中々就職先がないこともわかってたから保健センターで働きながら転職できる時にしようって最初から決めてたんだって」
「すごい、計画的」
「うん。皆が皆、就きたい仕事に就けるわけじゃないもんね」
「そうだね……でも、転職できたならよかったね」
「うん。楽しそうに働いてる」
いつの間にかあまねくんと2人で話してしまっていてはっとする。正面を向けば、「まどかさんも仕事は続けるんですか?」とすかさず質問された。
「あ、はい。続けようと思っています」
「そうですか。妻はぱったりと仕事を辞めて子育てに専念していましたが、そこは2人の問題なので2人で話し合ってくれればいいと思っています」
「ありがとうございます……」
あまねくんのお母さん、今は専業主婦なんだ。すごい活躍をしていたモデルさんなのに、スッパリやめちゃうなんてもったいないとすら思った。
「仕事はどっちでもいいけど、孫は早く見せて欲しいな。律ももう30になるのに女の子の1人も連れてこないし、奏はまだ23だし。今ようやくお仕事もらえてるから、結婚や出産も遠くなりそうだもの。きっと1番早いのは周とまどかちゃんね」
母親の声は弾んでいる。それに対して律くんは、「悪かったね、まだ孫の顔も見せてあげられなくて」と興味なさそうに一言言って、お寿司を一貫口に運んだ。
食事を始めて暫くしてから、父親がそう口にした。
「いや、まだなんだ。この間、たまたまお母様とはお逢いして」
「結婚も視野に入れているならしっかり挨拶してきなさい。まどかさんのご両親だって心配するだろう」
彼の父親がそう言ってくれて安心する。どうやら結婚に反対はしていないようだ。おそらく今までの話の流れからして、私の年齢も知ってのことだろうと思えた。
「そうだね。俺も、今度改めて挨拶に行かせてもらうね」
「う、うん。うちの両親も喜ぶと思う」
うちには男がいないから。
経済力のある若い男性なら、あの父親も文句はないだろう。母は、すっかりあまねくんの美貌に惚れ惚れしてしまっているし、仮に反対されたとしたって説得するのは父親だけだ。
「まどかさんのご両親はどんなお仕事をされているんですか?」
話の流れで父親がそう尋ねる。こういった場合、両親の仕事も大事だなと思う。
「父が高校の教師で、母は養護教諭です」
「ほう……高校の。それはそれは……お父様は厳しかったんじゃないですか?」
「そうですね……道徳や倫理に関しては厳しかったようにも思います。けれど、勉強や将来のことについては好きにさせてくれました」
「そうですか。それでは、まどかさんの優しいところや誠実なところはお父様讓りでしょうか」
目の前で穏やかに微笑んでくれるものだから、一気に気持ちが豊かになる。
お世辞でもそんなふうに言ってくれたら、少しは認めてもらえた気分になる。
「周からも聞いてるのよ。まどかちゃんは介護士さんで、お年寄りにとても優しい子だって」
あまねくんを挟んだ母からもそんな言葉をもらい、私もつい笑顔が溢れてしまう。
「うちには母もいますしね。高齢者に優しい方がいるのは嬉しいですよ。お母様も養護教諭っていいましたね?」
「養護教諭って保健室の先生?」
父親に続き、あまねくんがそう尋ねる。
「うん。もともとは保健師で、市の保健センターで働いていたみたいなんだけど、急に枠が空いたみたいで、倍率が高くて中々養護教諭にはなれないからこの機会にっていって転職したみたい」
「そうなんだ……職場恋愛?」
「ううん、その時にはもう私が産まれてたみたい。もともとは養護教諭を目指してたみたいなんだけど、中々就職先がないこともわかってたから保健センターで働きながら転職できる時にしようって最初から決めてたんだって」
「すごい、計画的」
「うん。皆が皆、就きたい仕事に就けるわけじゃないもんね」
「そうだね……でも、転職できたならよかったね」
「うん。楽しそうに働いてる」
いつの間にかあまねくんと2人で話してしまっていてはっとする。正面を向けば、「まどかさんも仕事は続けるんですか?」とすかさず質問された。
「あ、はい。続けようと思っています」
「そうですか。妻はぱったりと仕事を辞めて子育てに専念していましたが、そこは2人の問題なので2人で話し合ってくれればいいと思っています」
「ありがとうございます……」
あまねくんのお母さん、今は専業主婦なんだ。すごい活躍をしていたモデルさんなのに、スッパリやめちゃうなんてもったいないとすら思った。
「仕事はどっちでもいいけど、孫は早く見せて欲しいな。律ももう30になるのに女の子の1人も連れてこないし、奏はまだ23だし。今ようやくお仕事もらえてるから、結婚や出産も遠くなりそうだもの。きっと1番早いのは周とまどかちゃんね」
母親の声は弾んでいる。それに対して律くんは、「悪かったね、まだ孫の顔も見せてあげられなくて」と興味なさそうに一言言って、お寿司を一貫口に運んだ。
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