【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

文字の大きさ
69 / 289
ラポール形成

【15】

しおりを挟む
 まだ少し冷える野外を2人で並んで歩く。
 こうして夜一緒に歩いていると、去年の12月に雅臣と会った日のことを思い出す。泣きながら街中をうろついていた私を迎えに来てくれた彼。初めて彼と手を繋いで、知らない感情が芽生えた。

 思い返せば、あまねくんは、私にとっての初恋の人。
 あまねくんと出会うまでに色んな人とお付き合いをして、会いたいと思うこともあったけれど、どこかで彼氏、彼女の感情ってこんなものなのだろうと思っていた。けれど違った。
 あまねくんといると嬉しいことばかりで、自分の言動1つ1つが失礼に当たらないかと不安で、彼の全てを独り占めしたいと思う。

 今までの彼氏とのセックスだって、こんなものかと思っていた。
 恋人はこんなふうに形だけの愛情を確め合って、繋がりを求めるのかと思っていた。けれど、それも違った。
 好きだから触れたくて、触れて欲しくて、繋がっている間は、自分だけを見てくれていると安心できる。
 あまねくんと出会うまで、セックスがこんなに心まで満たしてくれるものだなんて知らなかった。

 彼と出会えたことで、今の私の人生はとても満たされている。
 車までの数十メートルを、彼の暖かい手が私の手を包んでくれるから、またくすぐったい気持ちになる。今日会えてよかった。

「ねぇ、まどかさん」

「ん?」

「俺ね、ちゃんとするから」

「何を?」

「家族のこと。今日、まどかさんがいい家族だねって言ってくれたの凄く嬉しかった。ばあちゃんのことがあって、あそこでご飯食べさせるってすごく失礼だと思うんだ。でもまどかさん、最後まで自分のことよりばあちゃんのこと考えてくれた。そういうの、誰にでもできることじゃないと思う」

 彼は歩きながら、ポツリポツリと語る。伏せ目がちで、憂いを帯びている。あんなに明るくしてたけど、本当は気にしてたんだなぁなんて感じとる。

「私だって仕事中はイライラしたりすることもあるよ。そんなに仏みたいな心は持ってないの。でも、おばあちゃんも客人がきてて言い出しにくかったんじゃないかな。認知症があるって聞いたのに、介護士としてそこに配慮できなかったのは私の落ち度だよ」

「えぇ!?  何でそんな考え方になるの?  ……まどかさんって凄いな」

「凄い?」

「うん。色々尊敬する」

「尊敬って……大したこと言ってないよ?」

「ううん。やっぱりまどかさんがいいな。奏のこともさ、もう1回ちゃんと説得して、まどかさんの魅力わかってもらうことにする。絶対まどかさんと結婚するんだー」

 そう言って繋いでいる手を上下に大きく揺らした。

「わっ」

 腕の長いあまねくんに引っ張られて、爪先立ちになる。3回くらい繰り返して、遂によろけた私を抱き締めた。

「実家だとイチャイチャできないから」

 そう声のトーンを落として、軽くキスをした。外でキスをされたのなんて初めてのことで、辺りをキョロキョロと見渡す。

「大丈夫。誰もいないよ。まどかさん、待っててね。すぐにでも入籍できるように婚姻届もらってくるし」

「……わかった」

 一生懸命になってくれているあまねくんに、うちの両親への挨拶はまだなのに、気が早いんじゃないかなんてことは言えなかった。
 とりあえず今は、やる気に満ちている彼と、同じ目標に向かって進んでいこうと決めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...