【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

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再会

【1】

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 小型の画面を指先でタッチし、〔排泄〕の項目を選ぶ。排尿、排便を1つずつ入力し、画面を閉じた。
 私が入社した時には全て用紙に手書きしていたのに、今となってはスマートフォンに内蔵されている患者カルテに直接入力する。
 入社してから12年しか経っていないのに、10年もあれば完全にアナログからデジタルの時代に変貌を遂げた。

 今の時代に入社した子達にとってはこれが当たり前でも、私はこのシステムが導入された時、慣れるのに苦労した。入力することに時間がかかって仕事が進まなかった。
 慣れてしまえば何ヵ月分かの情報も残るし、電子カルテの方が保存も見直しも勝手がいいのかもしれないが、電源が落ちたりフリーズした時には全く使い物にならないのが難点でもあった。

「とりあえず排泄は全部入力したし、食事もさっき入れておいたから大丈夫だと思うけど」

 一緒に仕事をしていた大塚さんにそう言えば、「ありがとうございます。後は食介だけなので、大丈夫です。遅くまでありがとうございました」と彼女は頭を下げた。

 昼前に隣のフロアで急変があり、胸骨圧迫をしたり救急車を要請したりとバタバタしていた。そのため、私と大塚さんも応援に行ったり、こちらのフロアも対応したりと全体的に仕事が押していた。

 利用者さん達にとっては日常生活であっても、私達介護職員にとっては業務である。
 日々、こなさなければならないことはあり、滞れば利用者さん達の生活も乱れる。
 ようやく一段落ついた時には、日勤定時の17時半を大幅に過ぎており、食事も運ばれてきてしまっていた。
 お膳を配りながらも、トイレに行きたいという利用者さんをトイレに誘導したりと最後まで手伝っていたところだ。

「大塚さんも今日は大変だったね。色々ありがとう」

「いえ。急変なんて久しぶりだったんで、慌てちゃって私何にもしてないです」

「そんな事ないよ。新人さん達にはまだフロア任せられないしさ、いてくれて助かったよ」

「そう言ってもらえたら、必死に動いたかいがあります。栗田さんは大丈夫ですかね? けっこうショックだったみたいですけど」

「あー……ね。痙攣したのも、呼吸停止も初めて見ただろうけどさ、若い子の方がよっぼど肝が据わってるよね」

 食事介助を始めた大塚さんと話ながら、私は思わず笑ってしまった。
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