【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

文字の大きさ
113 / 289
再会

【13】

しおりを挟む
「調子に乗るなよ、クソアマが。少しでも痛くないようにと思って配慮してやればこれだ。黙って俺の言うこと聞いとけ」

 彼は低く冷たい声でそう言った。
 その声を聞いて、初めて自分が殴られたのだと理解できた。未だに耳は何かが反響している。左頬はずんっと重たい鈍痛が続いていて、頭がぼーっとする。

 彼が、私の下半身に手を伸ばす。付き合っていた頃の彼のセックスを思い出す。触れられても何の感情も湧かなくて、気持ちよくはなくて、必死に耐えてただ終わるのを待った。あまり濡れなくても、無理に押し進めて、ギチギチと擦れるのが痛かった。
 あんなことをまた無理矢理されるのかと思ったら、自然と涙が溢れた。
 もうあんな思いはしたくない。この人には触れられたくない。
 殴られながら、更に乱暴にされるだなんて、そんな酷い扱いは受けたくない。

「……お願い、やめて……」

「……まどか? 泣いてるの? ごめん、ごめん。そんなに怖い思いさせるつもりはなかったんだよ。まどかが抵抗するから……」

 雅臣は、焦ったように私の顔を覗き込み、下腹部に伸ばした手で私の頭を撫でた。
 こんな奴の前で泣きたくなんかなかった。浮気された時も、別れた時も、泣きそうになるのを堪えて耐えた。
 こんな奴に弱味なんか見せまいと、いつだって弱音を吐いたり、甘えたりしなかったのに。
 悔しい……。
 私にもっと力があったら、自分で振りほどけるのに。もう1度蹴り上げて、殴り返して、家を飛び出せるのに。
 今の私には、泣くことでしか抵抗ができない。なんて無力なんだろう。

「……まどか。優しくするから。ね? 泣かないで」

 そう言って、今度は殴った私の頬を撫でる。触れられると、痛みが増して、口の中にも刺激が伝わる。

「いった……」

「あ……口の中、切れてる。ごめんね、痛かったね」

 彼は、私の下唇を親指で下げ、歯列を確認しているようだった。口の中いっぱいに広がる味からして、出血しているのだろう。

「もう痛くしないから。ゆっくりするから、泣かないの」

 もう1度、私の頭を撫で、そのまま私の髪に唇を押し当てる。再び、ゾクゾクと鳥肌が立つ。これ以上近付かないで……。

〔ピンポーン〕

 ようやく鳴ったチャイムの音。私がどれだけ彼を待ちわびていたか。
 よかった。これで、あまねくんに助けてもらえる。

 そう思ったのも束の間、彼はインターフォンに視線を移し、ドア前に立っているあまねくんの姿を捕らえた。

「……アイツ。……ねぇ、まどか。結婚するってまさかアイツと?」

「……」

 猫なで声で私の機嫌をとろうとしていた彼は、目を大きく見開いてギョロっとこちらに視線を移した。私に確認しようと発した声は、今までで1番冷徹な声だった。

 もしも今、雅臣が玄関の鍵を閉めに行ってしまったら、万事休すだ。
 私はもう逃れられない。

「……2人で俺を嵌めたのか?」

「……違う」

「だったら何でアイツがここへ来るんだよ」

 何て答えていいかわからず、口をつぐんでいると、ガチャッと音がして、同時に「まどかさん!!」と大きなあまねくんの声がした。

「……鍵、閉めない癖まだ治ってないのかよ」

 彼は大きく溜め息をついて、顔を歪めて私を見下ろした。面倒なことが起こった時にする顔だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ナイトプールで熱い夜

狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

処理中です...