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再会
【42】
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ーー8畳一間に押し込められた荷物。この部屋には大きすぎるテレビにセミダブルのベッド。
お気に入りのガラステーブルは肩身が狭そうで、ラグはベッド下まで入り込んでいる。
おかしいな。12畳のリビングでは、あんなに綺麗に配置されていたのに。
4畳違うだけでこうも違うか。
テレビラックは入らなくて分解して捨てた。追加で購入したアイボリーの洋風クローゼットの1つは似つかわしくない居間に押し込んだ。
もう1つのクローゼットは何とか部屋の隅に置いて、春服と夏服だけを詰め込んだ。
だがしかし、狭すぎてベッドのフレームに当たるため、左の扉は半分しか開かない。
私、昔どうやってここで生活してたんだっけ!? もっと広く感じたはずなんだけど……。
感覚的には、アパートのリビングと然程変わらないつもりでいた。けれど、明らかに入りきらない。そりゃもちろん、1LDKのあちこちに置いてあった荷物が全て8畳に収まるだなんて馬鹿なことは考えてはいなかった。
それにしたってこうも入らないものか。お父さん……よく帰ってこいなんていったよな。
部屋を空にしたところで、入らないものは入らない。
「狭くない?」
そんな空間に来客。第一声には文句。赤茶色の前下がりボブ。私の実家を「懐かしい!」と言いながら、階段を駆け上がる人物など1人しかいない。
「しょんないじゃん。入んなかっただもんで」
「いやいや、普通に考えればわかるら? あの荷物は入らんら」
「いやー、久しぶりに入ったけんさ、こんなに狭いと思わなかったわ」
膝を突き合わす程、2人縮こまって会話をするというへんてこな状況。
そんな彼女と会うのも久しぶりなのに、相変わらず狭いだの、この配置はないだの文句しか言わない。
それが彼女らしいと言えばらしいのだけれど……。
「そんで、どうなってるだ?」
小ぢんまりとしているのも窮屈なのか、茉紀はベッドの上へ移動し、ぼふっと今朝交換したばかりの掛布の上に腰をかけた。
あーあ、せっかく天日干しして、いい具合で取り込んだのに。ふかふかの布団でお昼寝しようと思ってたのに。
茉紀に下敷きにされ、形よく膨れていた掛け布団は潰されている。
実家に戻ってきてから1週間が経った。雅臣の勾留期間が伸びたことで、彼はまだ釈放がされていない。
そのため、平穏な日々が続き、私も毎日だらだらと過ごすことに慣れ始めていた。
そんな中、久しぶりの茉紀からの連絡を受けた。あまり公にはしたくなかったが、親友にだけは打ち明けることにした。
こんな茉紀でも、一大事の時には駆けつけてくれる優しさを持つ。すぐにすっ飛んできてくれたのだけれど、減らず口は相変わらずだった。
「この前、あまねくんのお父さんと検察の人に会いに行ってきた」
「検察ってめっちゃ怖いイメージだけん」
「いやいや、私被害者よ。それでも、人によっては何ですぐに引っ越さなかったのかとか、先に1人で部屋に上がるのも如何なものかくらいのことを言ってきたよ」
「何それ! そんなに簡単に引っ越しできるわけないじゃんね。馬鹿じゃないだか。そんなら、お前らが引っ越し費用出せよって話」
「本当、それ」
思い出すと、気が滅入ることもある。それでも、味方のように優しく話を聞いてくれる人もいる。あまねくんの父親も、発言に対して検察官に注意してくれたりもするし、弁護士さんがついててよかったと思う部分は多々ある。
お気に入りのガラステーブルは肩身が狭そうで、ラグはベッド下まで入り込んでいる。
おかしいな。12畳のリビングでは、あんなに綺麗に配置されていたのに。
4畳違うだけでこうも違うか。
テレビラックは入らなくて分解して捨てた。追加で購入したアイボリーの洋風クローゼットの1つは似つかわしくない居間に押し込んだ。
もう1つのクローゼットは何とか部屋の隅に置いて、春服と夏服だけを詰め込んだ。
だがしかし、狭すぎてベッドのフレームに当たるため、左の扉は半分しか開かない。
私、昔どうやってここで生活してたんだっけ!? もっと広く感じたはずなんだけど……。
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部屋を空にしたところで、入らないものは入らない。
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そんな空間に来客。第一声には文句。赤茶色の前下がりボブ。私の実家を「懐かしい!」と言いながら、階段を駆け上がる人物など1人しかいない。
「しょんないじゃん。入んなかっただもんで」
「いやいや、普通に考えればわかるら? あの荷物は入らんら」
「いやー、久しぶりに入ったけんさ、こんなに狭いと思わなかったわ」
膝を突き合わす程、2人縮こまって会話をするというへんてこな状況。
そんな彼女と会うのも久しぶりなのに、相変わらず狭いだの、この配置はないだの文句しか言わない。
それが彼女らしいと言えばらしいのだけれど……。
「そんで、どうなってるだ?」
小ぢんまりとしているのも窮屈なのか、茉紀はベッドの上へ移動し、ぼふっと今朝交換したばかりの掛布の上に腰をかけた。
あーあ、せっかく天日干しして、いい具合で取り込んだのに。ふかふかの布団でお昼寝しようと思ってたのに。
茉紀に下敷きにされ、形よく膨れていた掛け布団は潰されている。
実家に戻ってきてから1週間が経った。雅臣の勾留期間が伸びたことで、彼はまだ釈放がされていない。
そのため、平穏な日々が続き、私も毎日だらだらと過ごすことに慣れ始めていた。
そんな中、久しぶりの茉紀からの連絡を受けた。あまり公にはしたくなかったが、親友にだけは打ち明けることにした。
こんな茉紀でも、一大事の時には駆けつけてくれる優しさを持つ。すぐにすっ飛んできてくれたのだけれど、減らず口は相変わらずだった。
「この前、あまねくんのお父さんと検察の人に会いに行ってきた」
「検察ってめっちゃ怖いイメージだけん」
「いやいや、私被害者よ。それでも、人によっては何ですぐに引っ越さなかったのかとか、先に1人で部屋に上がるのも如何なものかくらいのことを言ってきたよ」
「何それ! そんなに簡単に引っ越しできるわけないじゃんね。馬鹿じゃないだか。そんなら、お前らが引っ越し費用出せよって話」
「本当、それ」
思い出すと、気が滅入ることもある。それでも、味方のように優しく話を聞いてくれる人もいる。あまねくんの父親も、発言に対して検察官に注意してくれたりもするし、弁護士さんがついててよかったと思う部分は多々ある。
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