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前進
【16】
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娘の私が言うのもなんだけれど、母は年齢の割りに小綺麗にしていると思う。昔の写真を見せてもらうと、そこそこ美人だ。
友梨の母親からも、母がとてもモテたというエピソードを聞かされたものだ。だから、高校生の時には彼氏がいたとしてもおかしくはないのだけれど、同じ高校の他の男の子達とも仲がよかったというのは不思議な感覚だった。
母から聞いた話を要約すると、こうだ。当時、母には彼氏がいて、友梨の父である隆さんのことは友人としか思っていなかった。保健師を目指していた母は、看護学校に進学したことで仲良し3人と離れることになった。
保健師の資格をとって働き始めた頃、久しぶりに皆で集まろうと声をかけられた。参加した飲みの席にいたのが隆さんの大学の先輩である私の父ということだった。
高校時代に仲のよかったこうちゃんという人は、既に結婚しており、婿養子に入ったがために県外に引っ越していた。そのため、その席には参加できず、代わりに父がやってきたらしい。
母も高校時代の彼氏とはとうに別れてしまっていて、フリーだったし、隆さんも彼女はいなかった。友梨の母である菜々美さんには彼氏がいて、自然と母は隆さんと会うことが多くなっていったのだという。
しかし、母に惚れた父が猛アピールするものだから、後輩にあたる隆さんは身を引く形で離れていってしまった。
気付いた時には隆さんと菜々美さんは付き合っていて、母は父の押しに負けて交際を始めたとのことだった。
「ねぇ、お父さん完全に邪魔者じゃん」
「うん、そうなの。もうちょっとで隆と付き合えるところだったんだけどね」
「複雑……」
「そうだねぇ。友梨のお父さんとって考えるとまどかにとっては複雑かもね」
笑いながらミルクティーを飲んでいるけれど、今度友梨のお父さんに会ったら顔が引きつってしまいそうだ。
「お母さんはそれでよかったの?」
「んー、まあよかったのかもね。お父さん、一途だったから。お母さんは、追いかけるより追われる恋を選んだの」
「いやいや、その年でそういうこと言わないでよ」
「なんでよー。だって、隆は昔からモテてたからさ、隆と結婚してたらお母さんも浮気されてたかもしれないじゃん」
「え……友梨のお父さんって不倫してんの?」
「友梨に言うんじゃないよ」
「言えないわ」
呆れるというか、軽蔑する。「まどかちゃんは美人だなぁ。友梨もこのくらいの色気が出てくれたらよかったんだけどなぁ」と昔、友梨の父親に言われたことを思い出し、鳥肌がだった。
ごめん友梨、あんたの父親気持ち悪いかも。
「だから、お父さんでよかったでしょ? 自分のこと自分でやらないし、お母さんに頼ってばっかりだけど、休みの日も真面目に勉強して遊びに行かないような人だったし。お母さんがどっか行きたいって言えば連れてってくれたし」
「まあ……お母さんがそれでよかったならいいけど」
「でも、もうちょっと恋愛を楽しみたかったのもあるんだけどね。お母さんもあまねくんみたいなイケメンと付き合ってみたかったし」
何故か、両頬を手で覆って顔を赤らめている。なぜ母が照れる。
「あまねくんみたいなイケメンは、その辺じゃ手に入らないよ。私だって夢見心地なんだから」
「そうよねぇ……。やっぱり、恋の力って偉大だねぇ」
「何それ」
「だって、あまねくんの話をするまどかが嬉しそうだから」
「そう……」
無意識だったけれど、彼の名前を出すと心が弾む気がする。会えない分、好きという気持ちがどんどん大きくなる。
彼の話をする度に、彼との思い出が蘇る。だから、余計に嬉しいのかもしれない。
「結城くんのことがあって、あまねくんに会いに行くのも危険だってお母さんも思ってたけどさ、まどかが具合悪くなっちゃうくらいだったら一緒にいた方がいいよね」
「え?」
母が不意にそんなことを言うから、胸が1つとくんと音を立てた。
友梨の母親からも、母がとてもモテたというエピソードを聞かされたものだ。だから、高校生の時には彼氏がいたとしてもおかしくはないのだけれど、同じ高校の他の男の子達とも仲がよかったというのは不思議な感覚だった。
母から聞いた話を要約すると、こうだ。当時、母には彼氏がいて、友梨の父である隆さんのことは友人としか思っていなかった。保健師を目指していた母は、看護学校に進学したことで仲良し3人と離れることになった。
保健師の資格をとって働き始めた頃、久しぶりに皆で集まろうと声をかけられた。参加した飲みの席にいたのが隆さんの大学の先輩である私の父ということだった。
高校時代に仲のよかったこうちゃんという人は、既に結婚しており、婿養子に入ったがために県外に引っ越していた。そのため、その席には参加できず、代わりに父がやってきたらしい。
母も高校時代の彼氏とはとうに別れてしまっていて、フリーだったし、隆さんも彼女はいなかった。友梨の母である菜々美さんには彼氏がいて、自然と母は隆さんと会うことが多くなっていったのだという。
しかし、母に惚れた父が猛アピールするものだから、後輩にあたる隆さんは身を引く形で離れていってしまった。
気付いた時には隆さんと菜々美さんは付き合っていて、母は父の押しに負けて交際を始めたとのことだった。
「ねぇ、お父さん完全に邪魔者じゃん」
「うん、そうなの。もうちょっとで隆と付き合えるところだったんだけどね」
「複雑……」
「そうだねぇ。友梨のお父さんとって考えるとまどかにとっては複雑かもね」
笑いながらミルクティーを飲んでいるけれど、今度友梨のお父さんに会ったら顔が引きつってしまいそうだ。
「お母さんはそれでよかったの?」
「んー、まあよかったのかもね。お父さん、一途だったから。お母さんは、追いかけるより追われる恋を選んだの」
「いやいや、その年でそういうこと言わないでよ」
「なんでよー。だって、隆は昔からモテてたからさ、隆と結婚してたらお母さんも浮気されてたかもしれないじゃん」
「え……友梨のお父さんって不倫してんの?」
「友梨に言うんじゃないよ」
「言えないわ」
呆れるというか、軽蔑する。「まどかちゃんは美人だなぁ。友梨もこのくらいの色気が出てくれたらよかったんだけどなぁ」と昔、友梨の父親に言われたことを思い出し、鳥肌がだった。
ごめん友梨、あんたの父親気持ち悪いかも。
「だから、お父さんでよかったでしょ? 自分のこと自分でやらないし、お母さんに頼ってばっかりだけど、休みの日も真面目に勉強して遊びに行かないような人だったし。お母さんがどっか行きたいって言えば連れてってくれたし」
「まあ……お母さんがそれでよかったならいいけど」
「でも、もうちょっと恋愛を楽しみたかったのもあるんだけどね。お母さんもあまねくんみたいなイケメンと付き合ってみたかったし」
何故か、両頬を手で覆って顔を赤らめている。なぜ母が照れる。
「あまねくんみたいなイケメンは、その辺じゃ手に入らないよ。私だって夢見心地なんだから」
「そうよねぇ……。やっぱり、恋の力って偉大だねぇ」
「何それ」
「だって、あまねくんの話をするまどかが嬉しそうだから」
「そう……」
無意識だったけれど、彼の名前を出すと心が弾む気がする。会えない分、好きという気持ちがどんどん大きくなる。
彼の話をする度に、彼との思い出が蘇る。だから、余計に嬉しいのかもしれない。
「結城くんのことがあって、あまねくんに会いに行くのも危険だってお母さんも思ってたけどさ、まどかが具合悪くなっちゃうくらいだったら一緒にいた方がいいよね」
「え?」
母が不意にそんなことを言うから、胸が1つとくんと音を立てた。
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