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前進
【43】
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暫くゆっくりと過ごすと律くんが先に家を出て、その後父親が出ていった。
律くんが勤める職場の方が通勤距離が遠いらしい。
2人を見送ると、ダリアさんは洗濯をするというので、私はおばあちゃんとリビングで過ごすことにした。
器用に細い毛糸を使って細かく編んでいく。
「何を作ってるんですか?」
「これはね、羽織だよ。暑い時季から編んどくと、寒くなってから着られるでね」
「自分で着るものを編むんですか?」
「そうだよ。昔はね、今みたいに良いものがなかったから、全部自分で編んだだじゃん」
「じゃあ、皆編み物ができたんですね」
「そうだね。わりあい、編み物でも何でも裁縫ができないと困ったでね。雑巾なんかも昔は縫っただよ。今じゃ、もうできたのが売ってるだってね」
そう言われて、そういえば小学生の頃は、母が一生懸命雑巾を手縫いしていたなぁと思い出す。ミシンも主流じゃなかったから、その頃はまだうちにはなかった。
「今は何でもありますからね。おばあちゃんは、いつも編み物をしてるんですか?」
「まあ、そうだね。それと花が好きだでね、水やったりしてね」
「あ! そういえば、このおうちってダリアが咲くんですよね?」
「ああ、そうそう。そろそろ咲く時季だよ。ダリアちゃんと同じ名前の花だね。ありゃ、菊だけんね、色んな種類があって綺麗だだよ」
おばあちゃんは、優しい笑みを浮かべながら、嬉しそうに話してくれた。
ダリアさんが戻ってきてからその話をすると、「もう早いのは咲いてるのよ。見に行こうか」と誘ってくれた。
いつも入ってくる玄関側ではなく、廊下を抜けて裏口へ回る。こんなに奥まで案内されたのは初めてで、思っていた以上の敷地の広さに圧倒させられた。
角を曲がった瞬間、息を飲む。まるで絵画のように目の前が一面ガラス貼りで、お伽噺に出てくるような花畑が広がっていた。
ガラス越しに見たって十分綺麗だけれど、庭に出ると、その美しさは言い現せない程だ。
色んな形のダリアがあった。満開まではいかないが、3分の1程は咲いていて、色とりどりの花達が迎えてくれた。
「凄い……綺麗」
全て綺麗に整備されていて、直径3メートル程の噴水がある。まるで公園だ。
「どうしても可愛いお庭が欲しかったの。主人にお願いしたら、好きにしていいよって言ってくれたから」
そう言ってふふっと笑うダリアさんは、本当に幸せそうだった。子供がこんなに大きくなるまで一緒にいても、愛し合っていることがわかる。
うちの両親なんて、父が高圧的だから家族もぎすぎすするし、母がダリアさんのような女性の顔をしながら父の話をする姿など見たこともない。
まさに理想の夫婦で、憧れてしまう。そりゃ、こんなに綺麗な奥さんをもらったら嫌でも大事にするしかないかなんて思ったりもする。しかし、ダリアさん自体が愛されるキャラクターであることも否めない。
「まどかちゃんも、せっかくお家を建てるなら、自分が住んでて幸せだって思える家にするのよ。周にたくさん我が儘言っていいからね」
実際、あまねくんは喜んで私の我が儘を聞いてくれるような気がした。けれど、私はこんなに広い庭を定期的に手入れできる気がしない。
私だったら、子供がのびのび遊べるような、遊具が欲しいなぁなんで、小さなブランコや、芝生の滑り台を想像した。
やっぱりいいなぁ、一軒家。付き合う時、あまねくんが「また一緒に間取りとか考えようね」と言っていた言葉を思い出す。
色んな家を参考に見て回るのも楽しそうだと、私も思わず顔が緩むのだった。
律くんが勤める職場の方が通勤距離が遠いらしい。
2人を見送ると、ダリアさんは洗濯をするというので、私はおばあちゃんとリビングで過ごすことにした。
器用に細い毛糸を使って細かく編んでいく。
「何を作ってるんですか?」
「これはね、羽織だよ。暑い時季から編んどくと、寒くなってから着られるでね」
「自分で着るものを編むんですか?」
「そうだよ。昔はね、今みたいに良いものがなかったから、全部自分で編んだだじゃん」
「じゃあ、皆編み物ができたんですね」
「そうだね。わりあい、編み物でも何でも裁縫ができないと困ったでね。雑巾なんかも昔は縫っただよ。今じゃ、もうできたのが売ってるだってね」
そう言われて、そういえば小学生の頃は、母が一生懸命雑巾を手縫いしていたなぁと思い出す。ミシンも主流じゃなかったから、その頃はまだうちにはなかった。
「今は何でもありますからね。おばあちゃんは、いつも編み物をしてるんですか?」
「まあ、そうだね。それと花が好きだでね、水やったりしてね」
「あ! そういえば、このおうちってダリアが咲くんですよね?」
「ああ、そうそう。そろそろ咲く時季だよ。ダリアちゃんと同じ名前の花だね。ありゃ、菊だけんね、色んな種類があって綺麗だだよ」
おばあちゃんは、優しい笑みを浮かべながら、嬉しそうに話してくれた。
ダリアさんが戻ってきてからその話をすると、「もう早いのは咲いてるのよ。見に行こうか」と誘ってくれた。
いつも入ってくる玄関側ではなく、廊下を抜けて裏口へ回る。こんなに奥まで案内されたのは初めてで、思っていた以上の敷地の広さに圧倒させられた。
角を曲がった瞬間、息を飲む。まるで絵画のように目の前が一面ガラス貼りで、お伽噺に出てくるような花畑が広がっていた。
ガラス越しに見たって十分綺麗だけれど、庭に出ると、その美しさは言い現せない程だ。
色んな形のダリアがあった。満開まではいかないが、3分の1程は咲いていて、色とりどりの花達が迎えてくれた。
「凄い……綺麗」
全て綺麗に整備されていて、直径3メートル程の噴水がある。まるで公園だ。
「どうしても可愛いお庭が欲しかったの。主人にお願いしたら、好きにしていいよって言ってくれたから」
そう言ってふふっと笑うダリアさんは、本当に幸せそうだった。子供がこんなに大きくなるまで一緒にいても、愛し合っていることがわかる。
うちの両親なんて、父が高圧的だから家族もぎすぎすするし、母がダリアさんのような女性の顔をしながら父の話をする姿など見たこともない。
まさに理想の夫婦で、憧れてしまう。そりゃ、こんなに綺麗な奥さんをもらったら嫌でも大事にするしかないかなんて思ったりもする。しかし、ダリアさん自体が愛されるキャラクターであることも否めない。
「まどかちゃんも、せっかくお家を建てるなら、自分が住んでて幸せだって思える家にするのよ。周にたくさん我が儘言っていいからね」
実際、あまねくんは喜んで私の我が儘を聞いてくれるような気がした。けれど、私はこんなに広い庭を定期的に手入れできる気がしない。
私だったら、子供がのびのび遊べるような、遊具が欲しいなぁなんで、小さなブランコや、芝生の滑り台を想像した。
やっぱりいいなぁ、一軒家。付き合う時、あまねくんが「また一緒に間取りとか考えようね」と言っていた言葉を思い出す。
色んな家を参考に見て回るのも楽しそうだと、私も思わず顔が緩むのだった。
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