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前進
【45】
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早起きをしたのにも関わらず、全く眠気は起こらず、清々しい気分だった。1日をのびのびと過ごし、居候2日目はあっという間に終わりを告げた。
ダリアさんが提案してくれた通り、翌日にはあまねくんが帰宅してから皆でホームビデオを見た。
前々日に、あまねくんと卒業アルバムや小学生の頃の姿を見たいと言っていたからか、既に用意されていた動画に彼は「本当に見るの?」とため息をついた。
最初に映されたのは、産まれたばかりのあまねくん。産まれた瞬間からこんなに可愛いことなんてある!? と疑う程に既に整っている。
なんと言っても若かりし頃のダリアさんとお父様。なんともお似合いで、ダリアさんに至っては眩しい程の美しさだ。
1歳になったばかりのあまねくんは、3歳の律くんが座っているところに歩いて行く。とぼとぼと歩き、律くんの肩に掴まっては、律くんが遊んでいたおもちゃを覗き込んでいる。
「可愛い……」
心が震える程可愛い。この2人の天使はなんですか。思わず口元を両手で覆い、感激に浸る。
現在のあまねくんと律くんはしらけた顔をしているが、私とダリアさんは前のめりだ。
「あっくん、こっち向いて」
カメラを回しながらダリアさんが言うと、顔を上げてきゃっきゃと笑うあまねくん。
「可愛いー」
もう心を掴まれて離れません。こんな子供がいたら幸せ過ぎる。子供は絶対男の子が欲しい! そう意気込む程に、彼らの笑顔は素敵だった。
「あっくん、いーって顔やって」
画面の中のダリアさんがそう言うと、あまねくんが目を大きく見開いて、少ない歯を見せながら口を「いー」とさせる。
「えー! 1才ってもうこんなことできるんですか!」
「そうなの! ね、可愛いでしょ!」
私とダリアさんは大興奮。
「りっちゃんは何歳ですか」
父親の声が聞こえて、律くんは無表情のまま左手の親指を曲げ、画面に突き出した。その手をぎゅっと握るちっちゃいあまねくん。
律くんが手を引くから、あまねくんはそのまま引っ張られて、2人の額がゴツンとぶつかった。
その瞬間、大声で泣き出す2人。泣き顔だって当然可愛い。
場面は変わって、もう今の律くんが出来上がっている美少年。小学生だろうか。律くんがこんなに大きいということは……
「かなちゃん、立てるかなー?」
そんな声がして、カメラは壁を伝って立ち上がろうとする奏ちゃんに移行する。くりっとした真ん丸い目に、赤ちゃんの時のあまねくんと比べて薄い髪。毛量が少ないのが、これまた可愛い。
あんなに子供を産むなら男の子! と思ったのに、小さな奏ちゃんを見たら、急激に女の子が欲しくなってしまう。
「か、可愛い……」
胸がきゅんと締め付けられる。
奏ちゃんが上手く立てずに転んで泣くと、少し大きくなったあまねくんがやって来て、頭を撫でていた。あまねお兄ちゃんは子供の頃から優しかったようだ。
すっかり大人びてしまった9歳のあまねくんが映る。
「撮らなくていーいー」
そんなふうに照れている姿が可愛い。運動着に頭にハチマキを巻いているので、おそらく運動会。
カメラを向けられ、「周、アンカーでしょ」と聞かれれば、大きく首を縦に振っている。
「優勝できますか?」
「わかんなーい」
笑いながら首を傾げている。何歳だって可愛い。
アナウンスがかかって、リレーが始まる。時折、待機するあまねくんの姿がズームになる。首を伸ばしてリレーの様子を伺っている。
途中、あまねくんの組の女の子が転んでしまい、どんどん抜かされていってしまった。
ダリアさんの残念そうな声も入っている。けれど、小さなあまねくんは、既に他の子と比べれば体が大きく、関係ないがずば抜けて美形。
とうとうビリになってしまったが、あまねくんの番になった途端、ぐんぐん差を縮め、次々に追い抜いていく。
「わぁ! 凄い凄い!」
画面越しに、私まで手を叩いてはしゃいでしまう。会場も、とても盛り上がっている。あんなに差があったのに、逆に2位に差をつけての1着ゴール。
「すごーい!」
ソファの上で何度も腰を浮かせれば、「まどかさん、喜びすぎ」と笑顔は昔のままのあまねくんが隣で言う。
「だって凄いよ! ねぇ、見た?」
「見たって、あれ俺だし」
「可愛いね! ねぇ、あまねくん! 可愛いね!」
「わかった、わかった」
あまねくんの腕を掴んで、画面を指差す私に彼はおかしそうに笑った。
ダリアさんが提案してくれた通り、翌日にはあまねくんが帰宅してから皆でホームビデオを見た。
前々日に、あまねくんと卒業アルバムや小学生の頃の姿を見たいと言っていたからか、既に用意されていた動画に彼は「本当に見るの?」とため息をついた。
最初に映されたのは、産まれたばかりのあまねくん。産まれた瞬間からこんなに可愛いことなんてある!? と疑う程に既に整っている。
なんと言っても若かりし頃のダリアさんとお父様。なんともお似合いで、ダリアさんに至っては眩しい程の美しさだ。
1歳になったばかりのあまねくんは、3歳の律くんが座っているところに歩いて行く。とぼとぼと歩き、律くんの肩に掴まっては、律くんが遊んでいたおもちゃを覗き込んでいる。
「可愛い……」
心が震える程可愛い。この2人の天使はなんですか。思わず口元を両手で覆い、感激に浸る。
現在のあまねくんと律くんはしらけた顔をしているが、私とダリアさんは前のめりだ。
「あっくん、こっち向いて」
カメラを回しながらダリアさんが言うと、顔を上げてきゃっきゃと笑うあまねくん。
「可愛いー」
もう心を掴まれて離れません。こんな子供がいたら幸せ過ぎる。子供は絶対男の子が欲しい! そう意気込む程に、彼らの笑顔は素敵だった。
「あっくん、いーって顔やって」
画面の中のダリアさんがそう言うと、あまねくんが目を大きく見開いて、少ない歯を見せながら口を「いー」とさせる。
「えー! 1才ってもうこんなことできるんですか!」
「そうなの! ね、可愛いでしょ!」
私とダリアさんは大興奮。
「りっちゃんは何歳ですか」
父親の声が聞こえて、律くんは無表情のまま左手の親指を曲げ、画面に突き出した。その手をぎゅっと握るちっちゃいあまねくん。
律くんが手を引くから、あまねくんはそのまま引っ張られて、2人の額がゴツンとぶつかった。
その瞬間、大声で泣き出す2人。泣き顔だって当然可愛い。
場面は変わって、もう今の律くんが出来上がっている美少年。小学生だろうか。律くんがこんなに大きいということは……
「かなちゃん、立てるかなー?」
そんな声がして、カメラは壁を伝って立ち上がろうとする奏ちゃんに移行する。くりっとした真ん丸い目に、赤ちゃんの時のあまねくんと比べて薄い髪。毛量が少ないのが、これまた可愛い。
あんなに子供を産むなら男の子! と思ったのに、小さな奏ちゃんを見たら、急激に女の子が欲しくなってしまう。
「か、可愛い……」
胸がきゅんと締め付けられる。
奏ちゃんが上手く立てずに転んで泣くと、少し大きくなったあまねくんがやって来て、頭を撫でていた。あまねお兄ちゃんは子供の頃から優しかったようだ。
すっかり大人びてしまった9歳のあまねくんが映る。
「撮らなくていーいー」
そんなふうに照れている姿が可愛い。運動着に頭にハチマキを巻いているので、おそらく運動会。
カメラを向けられ、「周、アンカーでしょ」と聞かれれば、大きく首を縦に振っている。
「優勝できますか?」
「わかんなーい」
笑いながら首を傾げている。何歳だって可愛い。
アナウンスがかかって、リレーが始まる。時折、待機するあまねくんの姿がズームになる。首を伸ばしてリレーの様子を伺っている。
途中、あまねくんの組の女の子が転んでしまい、どんどん抜かされていってしまった。
ダリアさんの残念そうな声も入っている。けれど、小さなあまねくんは、既に他の子と比べれば体が大きく、関係ないがずば抜けて美形。
とうとうビリになってしまったが、あまねくんの番になった途端、ぐんぐん差を縮め、次々に追い抜いていく。
「わぁ! 凄い凄い!」
画面越しに、私まで手を叩いてはしゃいでしまう。会場も、とても盛り上がっている。あんなに差があったのに、逆に2位に差をつけての1着ゴール。
「すごーい!」
ソファの上で何度も腰を浮かせれば、「まどかさん、喜びすぎ」と笑顔は昔のままのあまねくんが隣で言う。
「だって凄いよ! ねぇ、見た?」
「見たって、あれ俺だし」
「可愛いね! ねぇ、あまねくん! 可愛いね!」
「わかった、わかった」
あまねくんの腕を掴んで、画面を指差す私に彼はおかしそうに笑った。
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