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前進
【48】
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仕事が減ってきたことや、新たなライバルが登場したことは言わなかったけれど、そろそろギャルは卒業して、新しいジャンルに挑戦しようと思ったといったように奏ちゃんから説明がされた。
「まあまあ、凄いじゃない」
ダリアさんだって元スーパーモデルだ。charmeの偉大さはわかっているし、ダリアさんも昔何度もゲストとして特集が組まれたり、何ページにも及ぶ巻頭ページを飾ったとのことだった。
その雑誌の専属になれるなんて、そうはないと喜んでいる。
「今週、撮影があるから雑誌の発売後、コンポジに入れてパリに持ってく」
「え?」
「コレクション、目指すから」
「本当!?」
私とダリアさんは、手を取り合ってその場でぴょんぴょんと跳び跳ねる。
「あのね、まだこれから挑戦するんだからね」
「わかってるよー! でもさ、奏ちゃんガールズコレクション出てるよね?」
「うん。3年連続ね」
「私、それ見に行きたかったんだけどなぁ……」
「今年はどうだろうね。こんなふうにしちゃって完全にストライキ状態だし」
「でもさ、パリのコレクションに出られたら凄いよね!」
「そりゃ、世界中から人が集まるからね。規模が違うよ」
「私、パリまで見に行くよ!」
「まだ決まってないってば。それに、せっかくフランス行くなら、新婚旅行で行けば?」
「……新婚旅行……」
奏ちゃんの言葉に、ぱあっと目の前が明るくなる。新婚旅行であまねくんとヨーロッパに行けて、尚且つ奏ちゃんのランウェイを見られたらどんなに幸せだろうか。
「うん! 新婚旅行で奏ちゃんを見に行くよ!」
「いや、そうじゃなくて……」
意気込んでいる私を見て、ダリアさんは笑っているけれど、私はとても幸せだった。
「まあ、いいや。とりあえず報告がてら来ただけだし」
「え? じゃあ、もう東京に帰るの?」
「何、寂しいわけ?」
「もうちょっといてよ。一緒にご飯食べようよ」
頑張っている奏ちゃんを見たら、一緒にお祝いしたくて、すぐに帰してしまうのが惜しい気がした。
「……しょうがないな。いてあげてもいいけど……」
「本当!? 嬉しい! じゃあ、今日の晩御飯は奏ちゃんの好きなものにしたいね!」
私の口角は上がりっぱなしだ。久しぶりにこんなに嬉しいことがあったのだ。奏ちゃんにも喜んで欲しくて、身を屈めてぎゅっと手を握る。
「……最強だわ。あっくんが気が気じゃないのもわかる気が……」
顔を背けてボソボソと彼女が言うから、聞き取れなくて「なに?」と聞き返す。
しかし、彼女は「何でもない。それより、病院ちゃんと行ってんの?」と話を逸らした。
「あ! そうそう、行かなきゃ行けないんだった」
「交通手段あるの?」
「バスで行こうかなって思って」
「バス停まで歩いてるところ見つかったらどうすんの!?」
「うーん……でも」
家にはおばあちゃんがいるから、ダリアさんにお願いするわけにもいかないし、あまねくんは土日しか休みがないし。
両親や姉も同様に、皆平日は仕事だ。結局は、1人で行くしかない。
「こんなところで見つかったら、今まで頑張ってきたことが全部水の泡になるんだからね。連れてってあげるから早く支度しなよ」
「え!?」
意外な言葉だった。奏ちゃんからそんな言葉を聞けるなんて。
「何、不満なの?」
「ううん、いいの?」
「いいって言ってんでしょ。その眉毛ない状態で行くわけ?」
「急いで描いてきます!」
余計なことは言わず、私は彼女の言葉に甘えることにした。
支度をしてると、ダリアさんがやってきて「何だか、知らない間にすっかり仲良しになったのね。奏に優しくしてくれてありがとうね。あの子があんなに笑うようになったの、まどかちゃんが来るようになってからよ」と優しい笑顔を向けてくれた。
「まあまあ、凄いじゃない」
ダリアさんだって元スーパーモデルだ。charmeの偉大さはわかっているし、ダリアさんも昔何度もゲストとして特集が組まれたり、何ページにも及ぶ巻頭ページを飾ったとのことだった。
その雑誌の専属になれるなんて、そうはないと喜んでいる。
「今週、撮影があるから雑誌の発売後、コンポジに入れてパリに持ってく」
「え?」
「コレクション、目指すから」
「本当!?」
私とダリアさんは、手を取り合ってその場でぴょんぴょんと跳び跳ねる。
「あのね、まだこれから挑戦するんだからね」
「わかってるよー! でもさ、奏ちゃんガールズコレクション出てるよね?」
「うん。3年連続ね」
「私、それ見に行きたかったんだけどなぁ……」
「今年はどうだろうね。こんなふうにしちゃって完全にストライキ状態だし」
「でもさ、パリのコレクションに出られたら凄いよね!」
「そりゃ、世界中から人が集まるからね。規模が違うよ」
「私、パリまで見に行くよ!」
「まだ決まってないってば。それに、せっかくフランス行くなら、新婚旅行で行けば?」
「……新婚旅行……」
奏ちゃんの言葉に、ぱあっと目の前が明るくなる。新婚旅行であまねくんとヨーロッパに行けて、尚且つ奏ちゃんのランウェイを見られたらどんなに幸せだろうか。
「うん! 新婚旅行で奏ちゃんを見に行くよ!」
「いや、そうじゃなくて……」
意気込んでいる私を見て、ダリアさんは笑っているけれど、私はとても幸せだった。
「まあ、いいや。とりあえず報告がてら来ただけだし」
「え? じゃあ、もう東京に帰るの?」
「何、寂しいわけ?」
「もうちょっといてよ。一緒にご飯食べようよ」
頑張っている奏ちゃんを見たら、一緒にお祝いしたくて、すぐに帰してしまうのが惜しい気がした。
「……しょうがないな。いてあげてもいいけど……」
「本当!? 嬉しい! じゃあ、今日の晩御飯は奏ちゃんの好きなものにしたいね!」
私の口角は上がりっぱなしだ。久しぶりにこんなに嬉しいことがあったのだ。奏ちゃんにも喜んで欲しくて、身を屈めてぎゅっと手を握る。
「……最強だわ。あっくんが気が気じゃないのもわかる気が……」
顔を背けてボソボソと彼女が言うから、聞き取れなくて「なに?」と聞き返す。
しかし、彼女は「何でもない。それより、病院ちゃんと行ってんの?」と話を逸らした。
「あ! そうそう、行かなきゃ行けないんだった」
「交通手段あるの?」
「バスで行こうかなって思って」
「バス停まで歩いてるところ見つかったらどうすんの!?」
「うーん……でも」
家にはおばあちゃんがいるから、ダリアさんにお願いするわけにもいかないし、あまねくんは土日しか休みがないし。
両親や姉も同様に、皆平日は仕事だ。結局は、1人で行くしかない。
「こんなところで見つかったら、今まで頑張ってきたことが全部水の泡になるんだからね。連れてってあげるから早く支度しなよ」
「え!?」
意外な言葉だった。奏ちゃんからそんな言葉を聞けるなんて。
「何、不満なの?」
「ううん、いいの?」
「いいって言ってんでしょ。その眉毛ない状態で行くわけ?」
「急いで描いてきます!」
余計なことは言わず、私は彼女の言葉に甘えることにした。
支度をしてると、ダリアさんがやってきて「何だか、知らない間にすっかり仲良しになったのね。奏に優しくしてくれてありがとうね。あの子があんなに笑うようになったの、まどかちゃんが来るようになってからよ」と優しい笑顔を向けてくれた。
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