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前進
【49】
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「いえいえ、全然、そんな。むしろちょっとキツイことも言ってしまった時もありまして……」
彼女の母親にカミングアウトをするのは気まずいけれど、決して優しくしたつもりはない。むしろ嫌味も言ったし、否定もした。
それでも自分を奮い立たせて努力し続けるのは、奏ちゃんの意思だ。
「昔から気が強くて、コミュニケーションが下手な子だったから、同世代の子とあまり上手く付き合えなかったのよ。最近じゃ、お義母さんにもすっかり優しくなって、この間なんて2人で散歩に出掛けてたの」
「え!? そうなんですね!」
「うん。昔、モデルを辞めたいって言った時、反対したから私のことを一時避けてたみたいだったけど……。こうして定期的に実家に戻ってきてくれるようになったし。それって皆まどかちゃんのおかげだと思う」
「それは考え過ぎですよ。奏ちゃん、表に出すのが苦手なだけで、もともと凄く優しい子だって思いますよ。今ふと思ったけど、私が病院行けてないかもって思ってわざわざ来てくれたのかなって……」
それでなければ、受診の話なんて出さないだろう。あまねくんや律くんの思いやり溢れる中で、愛情をたくさんもらって育ったんだ。そういう考えに至ったって不思議じゃない。
「奏が? そんな気の利いたことしてくれるかしら」
ダリアさんの方が不思議がってしまっている。
「してくれますよ。ダリアさんの子ですもん」
「……まどかちゃん」
「奏ちゃん、コレクション出られるといいですね。そしたら忙しくて会えなくなっちゃうから、今のうちにサイン貰っておかないと」
「それくらい売れてくれたら安心だけどね」
ダリアさんと顔を見合わせて笑う。今だって十分有名なモデルさんだけれど、やはり彼女を支持しているのは女子高生を初めとした若い女性ばかり。
日本の中でも1部の年齢層だけに留まってしまっている。
あんなにカッコいい奏ちゃんを、是非世界の人達にも見せたい。奏ちゃんの魅力は可愛いだけじゃない。綺麗もカッコいいも持ってるんだから。
「じゃ、ちょっといってきます」
「うん。気を付けてね」
ダリアさんに手を振って奏ちゃんと出掛けた。
初めて奏ちゃんの車を見たけれど、真っ赤な高級車だった。
「ねぇ、この車すっごく高いやつだよね」
「あー、うん1000万くらい?」
「1000万!?」
「モデルの表紙が決まった時に、パパとりっちゃんとあっくんが皆でプレゼントしてくれたの」
「プレゼント!?」
「この車が欲しいって言っておいたから、買ってくれたの」
なんと……。こんなふうに甘やかすからどこまでも我が儘になってしまうんじゃないかと、3人を恨めしく思った。
「向こうまで車で通ってるんだよね?」
「うん。昔は新幹線使ってたんだけど、ある程度稼げるようになったから、駐車場借りるようになったんだよね」
「でも家賃も高いよね?」
「まあね。22万だし」
「はぁ!? たっか……」
私の月収より上……。奏ちゃんは一時テレビに出てたこともあるし、全盛期には相当稼いでいたんだろう。
今だって全く出なくなってしまったわけではないし、地元のテレビ局ではレギュラー番組も持っている。
「うちでは皆、お金は使わないと入ってこないって思ってるから」
「それって、お金が増えることに出資するから増えるんじゃないの?」
「まあ、本来はそうなんだけど、望みは高く、買ったものよりも多く稼ぐ。これ、家訓みたいなものだから。りっちゃんもあっくんも車1台ずつ買ってもらってるの。でも、その約束事として、買ってもらった車よりも年収を超えること」
「え……」
「まあ、パパも本気じゃないと思うけど、りっちゃんもあっくんもすでにそれ叶えてるからね。次は私の番。大きく出たなってパパに笑われたけど、1回くらい、年収1000万超えるから」
前言撤回です。守屋家恐るべし。とんでもない野心の持ち主でした。
先に目標金額の物を買ってもらい、そこに自分が追い付くように努力する。あの家が立派な理由がわかった気がした。
彼女の母親にカミングアウトをするのは気まずいけれど、決して優しくしたつもりはない。むしろ嫌味も言ったし、否定もした。
それでも自分を奮い立たせて努力し続けるのは、奏ちゃんの意思だ。
「昔から気が強くて、コミュニケーションが下手な子だったから、同世代の子とあまり上手く付き合えなかったのよ。最近じゃ、お義母さんにもすっかり優しくなって、この間なんて2人で散歩に出掛けてたの」
「え!? そうなんですね!」
「うん。昔、モデルを辞めたいって言った時、反対したから私のことを一時避けてたみたいだったけど……。こうして定期的に実家に戻ってきてくれるようになったし。それって皆まどかちゃんのおかげだと思う」
「それは考え過ぎですよ。奏ちゃん、表に出すのが苦手なだけで、もともと凄く優しい子だって思いますよ。今ふと思ったけど、私が病院行けてないかもって思ってわざわざ来てくれたのかなって……」
それでなければ、受診の話なんて出さないだろう。あまねくんや律くんの思いやり溢れる中で、愛情をたくさんもらって育ったんだ。そういう考えに至ったって不思議じゃない。
「奏が? そんな気の利いたことしてくれるかしら」
ダリアさんの方が不思議がってしまっている。
「してくれますよ。ダリアさんの子ですもん」
「……まどかちゃん」
「奏ちゃん、コレクション出られるといいですね。そしたら忙しくて会えなくなっちゃうから、今のうちにサイン貰っておかないと」
「それくらい売れてくれたら安心だけどね」
ダリアさんと顔を見合わせて笑う。今だって十分有名なモデルさんだけれど、やはり彼女を支持しているのは女子高生を初めとした若い女性ばかり。
日本の中でも1部の年齢層だけに留まってしまっている。
あんなにカッコいい奏ちゃんを、是非世界の人達にも見せたい。奏ちゃんの魅力は可愛いだけじゃない。綺麗もカッコいいも持ってるんだから。
「じゃ、ちょっといってきます」
「うん。気を付けてね」
ダリアさんに手を振って奏ちゃんと出掛けた。
初めて奏ちゃんの車を見たけれど、真っ赤な高級車だった。
「ねぇ、この車すっごく高いやつだよね」
「あー、うん1000万くらい?」
「1000万!?」
「モデルの表紙が決まった時に、パパとりっちゃんとあっくんが皆でプレゼントしてくれたの」
「プレゼント!?」
「この車が欲しいって言っておいたから、買ってくれたの」
なんと……。こんなふうに甘やかすからどこまでも我が儘になってしまうんじゃないかと、3人を恨めしく思った。
「向こうまで車で通ってるんだよね?」
「うん。昔は新幹線使ってたんだけど、ある程度稼げるようになったから、駐車場借りるようになったんだよね」
「でも家賃も高いよね?」
「まあね。22万だし」
「はぁ!? たっか……」
私の月収より上……。奏ちゃんは一時テレビに出てたこともあるし、全盛期には相当稼いでいたんだろう。
今だって全く出なくなってしまったわけではないし、地元のテレビ局ではレギュラー番組も持っている。
「うちでは皆、お金は使わないと入ってこないって思ってるから」
「それって、お金が増えることに出資するから増えるんじゃないの?」
「まあ、本来はそうなんだけど、望みは高く、買ったものよりも多く稼ぐ。これ、家訓みたいなものだから。りっちゃんもあっくんも車1台ずつ買ってもらってるの。でも、その約束事として、買ってもらった車よりも年収を超えること」
「え……」
「まあ、パパも本気じゃないと思うけど、りっちゃんもあっくんもすでにそれ叶えてるからね。次は私の番。大きく出たなってパパに笑われたけど、1回くらい、年収1000万超えるから」
前言撤回です。守屋家恐るべし。とんでもない野心の持ち主でした。
先に目標金額の物を買ってもらい、そこに自分が追い付くように努力する。あの家が立派な理由がわかった気がした。
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