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婚姻届
【35】
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律くんと別れて車に乗り込むと、私はすぐにあまねくんに電話をかけた。彼からの着信が入っていたからだ。
「あ、もしもし。お疲れ様。電話出られなくてごめんね。今解散したからうちに帰るよ」
「わかった。どのくらいで着く? 俺の方は、今日定時であがってきたから、もう支度終わったよ」
「お待たせしてごめんね。30分くらいで着くと思う」
「全然待ってはないからいいんだけどね。ただ、早く会いたくて……」
少し気恥ずかしそうに、そう呟く彼。先程律くんとあまねくんの話をしたこともあり、胸がきゅんと高鳴る。
「私もだよ。今日楽しみにしてたの」
「うん。じゃあ、早く会いたいからもう戻ってきて。俺ももう少ししたら家出るから」
あまねくんと心暖まるやり取りをして、私は実家へと向かった。母はもう帰って来ているだろう。父は残業で遅くなることを期待しながら、ハンドルを握りしめた。
実家の駐車場であまねくんを待ち、彼と一緒に中に入る。玄関のドアを開ければ、父の靴があり、期待通りにいかなかったことに溜め息をついた。
「ただいまー」
玄関で声をかけてから、中へ入る。ダイニングへ行けば、まだスーツ姿の父が夕刊を読みながら、こちらを一瞥した。
「こんばんは。お邪魔します」
「ああ」
珍しく、父があまねくんの挨拶に返事をした。雅臣に殺されかけたことはもちろん知っている。そして、私を命がけで守ってくれたことも。
しかし、結局は守屋家も見つかってしまい、雅臣に知られていないのは、残すところあまねくんのマンションだけになった。
結局どこへ逃げたところで、普通に生活している以上、市内にいれば見つかるリスクは高いということだ。
「いらっしゃい。相変わらず、イケメンねぇ」
久しぶりにあまねくんを見て、うっとりしている母。
そうでしょう、目の保養になるでしょう。
そう思っていると、またもあまねくんに近寄って腕を掴んだり、背中を擦ったりする母。
「ねぇ、触らないの」
「いいじゃない。お母さんだってね、たまには若い男の子に触りたいのよ」
「何でよ!」
どうして触ったらいけないのかとでも言いたげに、顔をしかめる母。
父の前だというのに、油断も隙もあったもんじゃない。
横目に父の様子を伺えば、新聞を読んでいるふりをして、耳をすませていることなど一目瞭然だ。
「あまねくんは別にいいでしょ?」
「はい、大丈夫です」
母の言葉に嫌がる素振りもなく笑顔で対応するあまねくん。彼の方が大人だ。
「あのね、そんな言われ方したら、嫌って言えないでしょ」
「え? そうなの?」
「そんなことないですよ。大丈夫ですから」
優しくあまねくんは、そう言うが私がやたらとあまねくんに触ってほしくないのも事実だ。
「あ、もしもし。お疲れ様。電話出られなくてごめんね。今解散したからうちに帰るよ」
「わかった。どのくらいで着く? 俺の方は、今日定時であがってきたから、もう支度終わったよ」
「お待たせしてごめんね。30分くらいで着くと思う」
「全然待ってはないからいいんだけどね。ただ、早く会いたくて……」
少し気恥ずかしそうに、そう呟く彼。先程律くんとあまねくんの話をしたこともあり、胸がきゅんと高鳴る。
「私もだよ。今日楽しみにしてたの」
「うん。じゃあ、早く会いたいからもう戻ってきて。俺ももう少ししたら家出るから」
あまねくんと心暖まるやり取りをして、私は実家へと向かった。母はもう帰って来ているだろう。父は残業で遅くなることを期待しながら、ハンドルを握りしめた。
実家の駐車場であまねくんを待ち、彼と一緒に中に入る。玄関のドアを開ければ、父の靴があり、期待通りにいかなかったことに溜め息をついた。
「ただいまー」
玄関で声をかけてから、中へ入る。ダイニングへ行けば、まだスーツ姿の父が夕刊を読みながら、こちらを一瞥した。
「こんばんは。お邪魔します」
「ああ」
珍しく、父があまねくんの挨拶に返事をした。雅臣に殺されかけたことはもちろん知っている。そして、私を命がけで守ってくれたことも。
しかし、結局は守屋家も見つかってしまい、雅臣に知られていないのは、残すところあまねくんのマンションだけになった。
結局どこへ逃げたところで、普通に生活している以上、市内にいれば見つかるリスクは高いということだ。
「いらっしゃい。相変わらず、イケメンねぇ」
久しぶりにあまねくんを見て、うっとりしている母。
そうでしょう、目の保養になるでしょう。
そう思っていると、またもあまねくんに近寄って腕を掴んだり、背中を擦ったりする母。
「ねぇ、触らないの」
「いいじゃない。お母さんだってね、たまには若い男の子に触りたいのよ」
「何でよ!」
どうして触ったらいけないのかとでも言いたげに、顔をしかめる母。
父の前だというのに、油断も隙もあったもんじゃない。
横目に父の様子を伺えば、新聞を読んでいるふりをして、耳をすませていることなど一目瞭然だ。
「あまねくんは別にいいでしょ?」
「はい、大丈夫です」
母の言葉に嫌がる素振りもなく笑顔で対応するあまねくん。彼の方が大人だ。
「あのね、そんな言われ方したら、嫌って言えないでしょ」
「え? そうなの?」
「そんなことないですよ。大丈夫ですから」
優しくあまねくんは、そう言うが私がやたらとあまねくんに触ってほしくないのも事実だ。
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