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婚姻届
【37】
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9月5日 木曜日
私は今、非常に落ち込んでいる。こんなことになるなら、全てを投げ出して朝一で並ぶんだった。
後悔したってもう遅い。優先順位を完全に間違えた。だけど、だからってこんなことがあるのか。そりゃ、彼女の魅力は重々承知だ。なんたって、提案したのは私だし。
SNSで大反響が起こっていたのは知っているし、ネットニュースになったのだって知っている。だからってこんなに早く完売してしまうものだろうか。
今日は、奏ちゃんが掲載される雑誌の発売日。1ヶ月前に撮影を終え、それがようやく雑誌となって発売される。
この日をどれ程待ちわびたことだろうか。ネットニュースで話題になったことで、奏ちゃんのページが急遽増えたことを知った。だからこそ、早く彼女の姿を見たかった。
今朝は、こんな時に限って母の車のタイヤがパンクしていた。どうやら昨日の仕事帰りに何かを踏んでしまったらしい。帰ってくるまでは異変に気付かず、家を出ようとしたらタイヤはぺちゃんこだったというわけだ。
たまたま実家にいた私は、叩き起こされただけでなく、母を学校まで送り届け、ディーラーに連絡してパンク修理を依頼した。
整備士が車を持っていったのを確認してから急いで本屋に向かった。それでも12時ちょっと過ぎには辿り着いた。しかし、中は半端ない人混みで、それらの目的は私と同じだった。
人混みをかき分け雑誌を探したが、既に「完売しました」の用紙が貼り付けられていた。
再び人混みをかき分け、別の本屋をはしごする。思いつく本屋を全て回り、ネットでも本屋を検索し、来店してみたものの、結果は同じだった。
なぜだ……。今日は平日だぞ。まだ学校始まってない学生なんかがいるのか?
それとも今日のために仕事や学校を休んだのか!? そんなバカな!
そうは思うが、現実は厳しい。結局手に入らず、とりあえず雑誌を購入してからディーラーに電話すればよかったと後悔しているところだ。
世界的に有名な雑誌ではあるが、私が覚えている限り、発行部数は人気ファッション誌に比べれば少ない気がする。おそらくそれが完売の原因だ。
奏ちゃんの功績を見たかった……。律くんにそっくりなカッコいい奏ちゃんを見たかった……。
涙が出そうな程悔しくて、私は奏ちゃんに電話をかけた。
「……もしもし?」
意外とすぐに出た電話。
「奏ちゃん!」
「え、なに?」
「雑誌買えなかったよぉ!!」
「ああ、そうみたいね」
「え!?」
「さっきから色んな人からひっきりなしに連絡きてるんだ。もう、うるさいからスマホの電源切ろうかと思ってたとこ」
本人は至って冷静だ。私はこんなにも悲しい気持ちでいるのに。
「私も奏ちゃんを見たかったよ! まさかこんなことになってるなんて思ってなかったし!」
「ちょ、大声出さないでよ」
「だってね、だってね、楽しみにしてたんだよぉ」
車内でハンドルにもたれ掛かり、一瞬クラクションがプッと音を立て、慌てて体を起こす。
「わかったから。発売前に2部編集者からもらったのがあるから、そんなに見たきゃ1部あげるよ」
「本当!?」
予期せぬ言葉に、自分でも口角が上がるのがわかる。
「本当、本当。今ちょうどこっちにいるから取りにくる?」
「いいの!?」
「うん」
「でも、何で静岡に?」
「東京にいたらどこにいても揉みくちゃにされそうだから」
「はぁ……なるほど。今どこにいるの? 家?」
「ううん、七間町のカフェ」
「1人で?」
「ううん、彼氏と」
「奏ちゃん、彼氏いるの!?」
初耳情報に驚いてばかりだ。1人ぼっちの車内で声を張り上げる私を、車の前を通りすぎる何人かが視線を向ける。まさか、声が漏れているわけでもあるまい。私の大きな体動に目がいくのだろう。
「……最近出来た」
「そう……。私、そこに行って大丈夫なの?」
「いいよ。紹介するし」
「え!?」
数ヶ月前なら絶対に聞けなかった言葉だ。奏ちゃんからの色んな言葉が嬉しくて、心踊らせながら私は直ぐ様奏ちゃんが指定したカフェへと向かった。
私は今、非常に落ち込んでいる。こんなことになるなら、全てを投げ出して朝一で並ぶんだった。
後悔したってもう遅い。優先順位を完全に間違えた。だけど、だからってこんなことがあるのか。そりゃ、彼女の魅力は重々承知だ。なんたって、提案したのは私だし。
SNSで大反響が起こっていたのは知っているし、ネットニュースになったのだって知っている。だからってこんなに早く完売してしまうものだろうか。
今日は、奏ちゃんが掲載される雑誌の発売日。1ヶ月前に撮影を終え、それがようやく雑誌となって発売される。
この日をどれ程待ちわびたことだろうか。ネットニュースで話題になったことで、奏ちゃんのページが急遽増えたことを知った。だからこそ、早く彼女の姿を見たかった。
今朝は、こんな時に限って母の車のタイヤがパンクしていた。どうやら昨日の仕事帰りに何かを踏んでしまったらしい。帰ってくるまでは異変に気付かず、家を出ようとしたらタイヤはぺちゃんこだったというわけだ。
たまたま実家にいた私は、叩き起こされただけでなく、母を学校まで送り届け、ディーラーに連絡してパンク修理を依頼した。
整備士が車を持っていったのを確認してから急いで本屋に向かった。それでも12時ちょっと過ぎには辿り着いた。しかし、中は半端ない人混みで、それらの目的は私と同じだった。
人混みをかき分け雑誌を探したが、既に「完売しました」の用紙が貼り付けられていた。
再び人混みをかき分け、別の本屋をはしごする。思いつく本屋を全て回り、ネットでも本屋を検索し、来店してみたものの、結果は同じだった。
なぜだ……。今日は平日だぞ。まだ学校始まってない学生なんかがいるのか?
それとも今日のために仕事や学校を休んだのか!? そんなバカな!
そうは思うが、現実は厳しい。結局手に入らず、とりあえず雑誌を購入してからディーラーに電話すればよかったと後悔しているところだ。
世界的に有名な雑誌ではあるが、私が覚えている限り、発行部数は人気ファッション誌に比べれば少ない気がする。おそらくそれが完売の原因だ。
奏ちゃんの功績を見たかった……。律くんにそっくりなカッコいい奏ちゃんを見たかった……。
涙が出そうな程悔しくて、私は奏ちゃんに電話をかけた。
「……もしもし?」
意外とすぐに出た電話。
「奏ちゃん!」
「え、なに?」
「雑誌買えなかったよぉ!!」
「ああ、そうみたいね」
「え!?」
「さっきから色んな人からひっきりなしに連絡きてるんだ。もう、うるさいからスマホの電源切ろうかと思ってたとこ」
本人は至って冷静だ。私はこんなにも悲しい気持ちでいるのに。
「私も奏ちゃんを見たかったよ! まさかこんなことになってるなんて思ってなかったし!」
「ちょ、大声出さないでよ」
「だってね、だってね、楽しみにしてたんだよぉ」
車内でハンドルにもたれ掛かり、一瞬クラクションがプッと音を立て、慌てて体を起こす。
「わかったから。発売前に2部編集者からもらったのがあるから、そんなに見たきゃ1部あげるよ」
「本当!?」
予期せぬ言葉に、自分でも口角が上がるのがわかる。
「本当、本当。今ちょうどこっちにいるから取りにくる?」
「いいの!?」
「うん」
「でも、何で静岡に?」
「東京にいたらどこにいても揉みくちゃにされそうだから」
「はぁ……なるほど。今どこにいるの? 家?」
「ううん、七間町のカフェ」
「1人で?」
「ううん、彼氏と」
「奏ちゃん、彼氏いるの!?」
初耳情報に驚いてばかりだ。1人ぼっちの車内で声を張り上げる私を、車の前を通りすぎる何人かが視線を向ける。まさか、声が漏れているわけでもあるまい。私の大きな体動に目がいくのだろう。
「……最近出来た」
「そう……。私、そこに行って大丈夫なの?」
「いいよ。紹介するし」
「え!?」
数ヶ月前なら絶対に聞けなかった言葉だ。奏ちゃんからの色んな言葉が嬉しくて、心踊らせながら私は直ぐ様奏ちゃんが指定したカフェへと向かった。
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