【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

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婚姻届

【73】

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――鼻を掠める芳ばしい匂いで目が覚めた。

 あれ? 今何時? いつもなら目覚ましが鳴ればすぐに起きるはずなのに。

 昨日は遅くまであまねくんとコレクションを見て話をしていたから、いつもよりも睡眠時間が短い。それでも愛しい彼のために朝御飯を作らなければと思っていたのに、なぜかいい匂いがする。

 体を起こしてスマホを見れば、朝の5時23分を差している。そうか、なるほど。目覚ましが鳴る前に目を覚ましたのね。
 そう思って隣をみると、一緒に眠りに就いたはずの愛しの彼はいない。
 あまねくんでなければ、それは不思議な光景ではない。しかし、私の知るあまねくんはとても朝が弱くて一度や二度起こしたくらいじゃ目を覚まさないのが日常だ。
 その彼が、私よりも先に起きているだなんて、そんなことはほとんどない。

 布団から出てキッチンへ向かう。

「あまねくん?」

「あ、まどかさんおはよう。早いね」

 朝からキラキラと輝くような眩しい笑顔。彼は今日も美しい。

「あまねくんこそどうしたの? こんな朝早くに。朝起きれるなんて珍しいね」

「うん。俺ね、昨日はまどかさんに色々嫌な思いさせちゃったなって思ってちょっと反省したんだ。俺のせいでまどかさんが睡眠不足になるのは辛いから、今日は俺が朝御飯作ろうと思って」

 彼の言葉に胸が暖かくなる。なんて優しい人なんだろう。

「そんなに無理して大丈夫? 今から仕事でしょ?」

「うん。大丈夫。朝からまどかさんの顔見られたら、いくらでも仕事頑張れるよ」

「頼もしいね、うちの旦那さんは」

「まどかさんとお腹の子を養ってかなきゃいけないからね。もうご飯できるよ。そっち座って」

 促されてダイニングテーブルの前まで行く。ふわふわのだし巻き卵にカレイのムニエル、ベーコンのサラダが並んでいる。

「え……? これ、あまねくんが作ったの?」

 並んでいるのは、私がいつも作るものと見た目が似ている。

「うん。まどかさんと一緒に作ったものだよ。俺も作れるように、一生懸命見て覚えたんだ。これでも暗記は得意なんだよ」

 そう言って差し出されたのは、油揚げとワカメの味噌汁。
 出会った頃は、野菜炒めとカレーしか作れなかったのに……。

「今はいいけど、もしまどかさんがつわりひどくなったり、体調悪くなってご飯作るのも他の家事やるのも大変になるかもしれないでしょ? そしたらまどかさんが安心して療養できるように、俺も料理覚えることにしたんだ」

「あまねくん……」

 優しくて、嬉しくて、涙が出そうになる。昨日はあんなに呆れて、笑わせられたのに。あんなコレクションなんか見せられなくても、あまねくんの愛情はこんなにもちゃんと伝わってくる。

「ほら、食べよう?」

「うん……。ありがとうね」

「うん。たくさん食べて赤ちゃんにも栄養あげなきゃね」

「そうだね」

 あまねくんは、私のことだけじゃなく、お腹の子のことだってちゃんと考えてくれている。
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