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脅しの存在
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「千紘……?」
数回呼出音が鳴った後、樹月はすぐに電話に出た。今の今までこの男と話していたのだから、スマートフォンは手元にあったのだろう。
ずっと連絡を取らずにいた懐かしい声。昔はこの声を聞くだけで癒されたのに、今では嫌悪しかなかった。
「ねぇ、樹月。なんで俺の邪魔するの?」
「え……?」
樹月は、予約が空いて時間が取れるようになったから連絡をくれたとでも思ったのか、最初の声よりも幾分もトーンを下げて聞き返した。
「今、樹月のお友達といる。一緒に俺の予約を埋めてキャンセルして、営業妨害してたってね」
「ち、違っ……」
「聞いたよ。話持ちかけられただけっていうのも。でも、俺はそういうの止めてほしかったよ」
「千紘、俺っ……」
「俺、仕事頑張りたいって言ったよね? 別に樹月のこと嫌いで仕事詰め込んでたわけじゃないし。この世界でトップになりたかったんだよ。樹月には理解してほしかったけど、無理だった。だから別れたんだけど、俺の仕事の邪魔するほど俺のこと憎くなった?」
千紘はわざとそんな言い方をする。樹月が未だに千紘に好意を寄せているのはわかっている。未練による嫌がらせだということも。
しかし、頭ごなしに怒ることは樹月のメンタル上、逆効果だということも理解していた。
「違うよ! そうじゃない! 俺……」
電話の向こうで言葉を詰まらせ、喉を鳴らす音が聞こえた。千紘の隣にいた男は居心地悪そうに自分の靴を見つめていた。
「俺の仕事が減っても樹月のところには帰らないよ」
「っ……」
「仮に美容師やめたとしてももうよりは戻さない。俺はね、人の邪魔をする人じゃなくて、頑張ってる人が好きなの。頑張ってる人を認めて応援できる人が好き」
そう言った千紘の頭の中に浮かんだのは凪の顔だった。きっと付き合っていたのが樹月でなく凪だったなら、仕事も応援してくれただろうし、さっき以上に自分のために怒ってくれただろうなと思えた。
「ご、ごめっ……。俺、まだ千紘のこと好きでっ」
「俺はもう好きじゃない。今回のことで更に好きじゃなくなった」
千紘がそう言えば、樹月は黙り込み、隣の男は勢いよく顔を上げた。それから一歩踏み出し「そんな言い方しなくてもいいだろ!? 悪いのは俺だって言ってんだから!」と声を荒らげた。
千紘は尚も冷めた目で彼を見下ろし「話に乗った時点で同罪だって言ったじゃん。俺はね、気を引くために他人を利用するのも、傷付けるのも大嫌いなの。だから嫌いだよ、お前も樹月も」と感情のない声で言った。
数回呼出音が鳴った後、樹月はすぐに電話に出た。今の今までこの男と話していたのだから、スマートフォンは手元にあったのだろう。
ずっと連絡を取らずにいた懐かしい声。昔はこの声を聞くだけで癒されたのに、今では嫌悪しかなかった。
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「え……?」
樹月は、予約が空いて時間が取れるようになったから連絡をくれたとでも思ったのか、最初の声よりも幾分もトーンを下げて聞き返した。
「今、樹月のお友達といる。一緒に俺の予約を埋めてキャンセルして、営業妨害してたってね」
「ち、違っ……」
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千紘はわざとそんな言い方をする。樹月が未だに千紘に好意を寄せているのはわかっている。未練による嫌がらせだということも。
しかし、頭ごなしに怒ることは樹月のメンタル上、逆効果だということも理解していた。
「違うよ! そうじゃない! 俺……」
電話の向こうで言葉を詰まらせ、喉を鳴らす音が聞こえた。千紘の隣にいた男は居心地悪そうに自分の靴を見つめていた。
「俺の仕事が減っても樹月のところには帰らないよ」
「っ……」
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そう言った千紘の頭の中に浮かんだのは凪の顔だった。きっと付き合っていたのが樹月でなく凪だったなら、仕事も応援してくれただろうし、さっき以上に自分のために怒ってくれただろうなと思えた。
「ご、ごめっ……。俺、まだ千紘のこと好きでっ」
「俺はもう好きじゃない。今回のことで更に好きじゃなくなった」
千紘がそう言えば、樹月は黙り込み、隣の男は勢いよく顔を上げた。それから一歩踏み出し「そんな言い方しなくてもいいだろ!? 悪いのは俺だって言ってんだから!」と声を荒らげた。
千紘は尚も冷めた目で彼を見下ろし「話に乗った時点で同罪だって言ったじゃん。俺はね、気を引くために他人を利用するのも、傷付けるのも大嫌いなの。だから嫌いだよ、お前も樹月も」と感情のない声で言った。
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