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体だけでも

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 何度も体を痙攣させ、ここ数週間味わったことのない快感とともに、大量の欲を吐き出した。今まで凪が求めていた射精に限りなく近かった。
 自分でも驚く程の量に、吐き出した白濁液と共に体力全てを持っていかれかのように放心した。どんなに努力しても得られなかったもの。
 自分の体は自分が1番よくわかっている。そう思って試行錯誤し、何時間かけてもそこに辿り着けなかった。

 射精できたとしても、満足できるほどの量は得られず、感覚もまた残尿感に似た不快感が腹部を支配していた。それが、たった数分だ。体感的には数十秒。
 こんなにも簡単に果てることができるなんて。凪は呆気に取られたまま、じっと仰向けで天井を見つめていた。

「イけるじゃん。わりと早かったね」

 凪の足の間で声が聞こえる。視線だけ下げた凪。千紘の髪が揺れるのが見えた。

「……不本意だ」

「まあまあ、異常なさそうでよかったじゃん」

 スラスラと喋る千紘に凪はふと疑問が湧く。たしかに自分は千紘の口内に液を放ったはず。

「お前……口の中のものどうした」

「ん? 飲んだよ。ごちそうさま」

 凪の顔の前までわっと飛び出し、顔を寄せた千紘は、舌をべっと出してにっこり笑った。凪は険しい顔で前髪をかきわけると、そのまま掌で目元を覆った。
 AVで女性が飲み込む分には興奮する性癖の持ち主もいるが、相手が男となるとやはり話は違う。

「何してんだよ……」

「前回飲みたいと思ってたのに、飲み損ねたから」

「居酒屋みたいに言うな」

「射精できなかったのは本当みたいだね。とっても濃く」

「言うな!」

 感想をずらずら並べられるのはいい気がしない。ただでさえ、千紘に与えられた快感で絶頂を迎えただけでもショックだというのに、これ以上現実を突きつけないで欲しいと凪はぐったりと項垂れた。
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