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気持ちは変わるもの

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 凪にとって里緒は本気で好きになった人だったし、浮気をしようと思わないほど一途に想っていたつもりだった。
 けれどそれは里緒には伝わらず、彼女の気持ちも離れていった。

 そんなふうに男と女も上手くいかないのだ。男同士なんて余計に難しいことだろう。それなのに千紘は諦めない。それどころか、凪に諦めろと言ってくる始末だ。
 ほとんど同じ年数を生きてきた千紘も、凪と同じように色んな経験を経て今がある。同じ失敗を繰り返さないためにも、今できることを惜しみなくするつもりであることは伝わってきた。

 凪は、いつまでも自分が振り向かずにいたら、千紘はいずれ諦めるのだろうかと考える。里緒のように想いが一方通行のままだと感じたら、他の人間に目移りするのだろうか。
 あんなにも好きだと言ってくっついてきて、時間さえあれば会いたがる千紘が、「なんか疲れた」と言う日がくるのだろうか。

 千紘と付き合うことなど全く考えられないのに、里緒のように突然いなくなるのは切ない気がした。
 あんなにも情熱的に好きだと言われたら、無理やり犯されたこと以外は悪い気はしない。相手が男であっても、見た目だけで寄ってくる女性よりもまともに思えた。

 セラピストになった今、里緒から連絡がきたら寄りを戻しただろうか。そう考えてみれば、答えはNOだった。きっとあの頃と同じように好きにはなれないし、あの時の失敗を繰り返したくないと思っても、あの時以上に大切にはできない。
 里緒のためにセラピストを辞めるつもりもない。なんだかんだこの仕事は好きだし、金になるし、ずっと他人と接していると余計なことを考えなくて済むから気持ち的にも楽だ。

 そうやってあの時の感情も過去のものに変わっていく。おそらく里緒にとっての自分もとっくに過去になっているのだろう。凪はそう思うが、千紘の元彼はそうではなかった。
 いつまでも引きずって、未だに千紘を思い続ける。もしも千紘がそれに応えたら、元の鞘に収まるのだ。

 シャンプーをしてもらいながら、やっぱり胸の奥はずっとモヤモヤとする。自分が元カノと連絡を取らないからといって、他人もそうだとは限らないから。
 凪はアシスタントの言葉も耳に入らず、ずっとぼんやりと考え込んでいた。
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