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諦めること

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 彼氏と彼女が別れるように、セフレが関係を解消するように、体の関係があったところから健全な関係にはならない。
 千紘の気持ちが離れたら、きっと凪からは追いかけない。だから、この関係は永遠ではない。

 凪はそう考えながら、それなら一体この微妙な関係性はいつまで続くのだろうかとグラスを持つ手に力を込めた。

「……ヤダよ。お前、寝かせてくんないから」

 凪は半笑いで言う。ただの添い寝なら、一緒にいるのも悪くないかもしれない。そんなふうに思ったからだ。
 この疲れた体に鞭を打って抱かれたら、そのまま起き上がれなくなりそうだった。

 そんな微妙な表情を浮かべた凪を見て、千紘はまた凪の様子を窺った。寝かせてくれるならいいというような口振りに、もう少し押してみてもいいんじゃないかと思い始める。

「抱かなかったらいいの?」

 千紘は真剣な顔でそう尋ねた。凪がちゃんと否定しないから、つい調子に乗ってしまいたくなる。少しでも可能性があるのなら、そのチャンスを逃したくなかった。

「……そう言っていつもするだろ」

「凪が嫌なことはしないって言ったじゃん。疲れてるならしないよ。一緒に寝る? ギュッてしてあげようか?」

 千紘は柔らかく笑った。いつも強気な凪が、なんとなく弱々しく見えたから。儚い凪の頭を優しく撫でて、胸の中に収めてあげたら安心してくれたりしないかな。そんな淡い期待を抱いた。
 凪は、その笑顔にトクンっと小さく胸が鳴ったのを感じた。

 いつか千紘が甘えてきた時のように、今度は反対に自分が甘える構図が頭に浮かんだ。女性の前では子供のように甘えることなんてカッコ悪くてできやしない。
 けれど、千紘ならそれすらも寛容に受け入れてくれる気がした。

「……うん」

 凪は無意識に返事をする。千紘の腕の中で眠るのも悪くないと思った。否、今日はそのまま眠りたいと心のどこかで思っていた。
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