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諦めること
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「料理嫌いなんじゃないの?」
凪は目の前に置かれた箸に手を伸ばしながら言った。
「嫌いじゃないよ。時間がないだけ。でも凪が食べてくれるなら毎日作ってもいいかな」
「毎日ってなんだよ。食っていいの?」
そう聞きながらも凪は箸を手に取り構えていた。千紘は、食べる気でいてくれる凪に感激しながら「どうぞ」と言って微笑んだ。
凪がまず箸を伸ばしたのはナスの揚げ浸しだった。和食が並んでるのは素直に嬉しかった。
「うま……」
柔らかくて味が染み込んでいて、素直に飛び出た感想だった。凪はそれを噛み締めて目を丸くさせた。
「ほんと? よかった。凪の好きなもの知っておかないと」
「前に教えた」
「それ、嫌いなものでしょ?」
「そうだっけ? まあ、いいや。ここに並んでるのはどれも好き、多分」
凪が次々と他の料理にも手をつける。一緒に外食した時と同じくらいのペースで食べてくれるものだから、千紘は心の底から嬉しさでいっぱいになった。
レシピは頭の中にあっても、他人に料理を作るなんて久々過ぎて少し緊張もしたのだ。
凪がご飯を食べていないと言ったら、最初から何かしら作るつもりだった。凪の返事も聞かない内から、何を作ろうかとある程度候補を決めておいた。
それでも実際に作ってみると、好きな人に手料理を振る舞う嬉しさと、美味しいと言ってくれるかの不安と、喜んでくれるかもしれないという期待が混合した。
もしかしたら、手料理なんて気持ち悪がって食べてくれないかもしれない。そんなマイナスなことももちろん考えた。そんな時用にレトルト食品や乾麺も用意していた。
けれどそれらが活躍する場面はなさそうで、千紘は自然と口角が上がるのを感じた。
「お前は食わないの?」
じっと凪が食べているところを見たままの千紘に向かって凪は首を傾げた。自分ばかりが腹を空かせているように見えたのだ。
「食べるよ。凪が美味しそうに食べてくれて嬉しいなって感激してたところ」
「あっそ。普通に美味いわ」
もはや悪態すらつかない凪に千紘も拍子抜けしてしまう。牙が折れてしまったのではないかと思えるほど、柔らかい対応の凪に千紘は少なからず戸惑った。
凪は目の前に置かれた箸に手を伸ばしながら言った。
「嫌いじゃないよ。時間がないだけ。でも凪が食べてくれるなら毎日作ってもいいかな」
「毎日ってなんだよ。食っていいの?」
そう聞きながらも凪は箸を手に取り構えていた。千紘は、食べる気でいてくれる凪に感激しながら「どうぞ」と言って微笑んだ。
凪がまず箸を伸ばしたのはナスの揚げ浸しだった。和食が並んでるのは素直に嬉しかった。
「うま……」
柔らかくて味が染み込んでいて、素直に飛び出た感想だった。凪はそれを噛み締めて目を丸くさせた。
「ほんと? よかった。凪の好きなもの知っておかないと」
「前に教えた」
「それ、嫌いなものでしょ?」
「そうだっけ? まあ、いいや。ここに並んでるのはどれも好き、多分」
凪が次々と他の料理にも手をつける。一緒に外食した時と同じくらいのペースで食べてくれるものだから、千紘は心の底から嬉しさでいっぱいになった。
レシピは頭の中にあっても、他人に料理を作るなんて久々過ぎて少し緊張もしたのだ。
凪がご飯を食べていないと言ったら、最初から何かしら作るつもりだった。凪の返事も聞かない内から、何を作ろうかとある程度候補を決めておいた。
それでも実際に作ってみると、好きな人に手料理を振る舞う嬉しさと、美味しいと言ってくれるかの不安と、喜んでくれるかもしれないという期待が混合した。
もしかしたら、手料理なんて気持ち悪がって食べてくれないかもしれない。そんなマイナスなことももちろん考えた。そんな時用にレトルト食品や乾麺も用意していた。
けれどそれらが活躍する場面はなさそうで、千紘は自然と口角が上がるのを感じた。
「お前は食わないの?」
じっと凪が食べているところを見たままの千紘に向かって凪は首を傾げた。自分ばかりが腹を空かせているように見えたのだ。
「食べるよ。凪が美味しそうに食べてくれて嬉しいなって感激してたところ」
「あっそ。普通に美味いわ」
もはや悪態すらつかない凪に千紘も拍子抜けしてしまう。牙が折れてしまったのではないかと思えるほど、柔らかい対応の凪に千紘は少なからず戸惑った。
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