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諦めること
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千紘は食器を片付けながら、思わずにやけてしまいそうになるのをぐっと堪えた。アラームをかけずに眠れると言ったことに対して、凪は否定しなかった。
千紘としては、凪と一緒にいられるのならそれが眠っている時間でもよかった。目が覚めたら凪がいる。ただそれだけで幸せなのだ。
以前の凪なら、客がキャンセルしたことなど絶対に千紘に言ったりはしなかったはずだ。スケジュールを把握されることを嫌うし、その時間をどう過ごすのか聞かれるのも嫌がる。
それを知っているからこそ、千紘は嬉しかった。その時間を自分のために使って欲しいだなんて贅沢は言わない。凪が自ら赴いてくれただけで十分だったから。
ただ、凪の仕事の時間まで寝ててもいいよと言ったのは、出勤時間が11時だとわかっていてあわよくばギリギリまで一緒にいてくれたらいいなという願望ではあった。
最近は千紘の方がアラームが鳴っても起きないから、凪の寝顔を見ることも少なくなった。けれど、前回は凪が先に寝たおかげで久しぶりに凪の寝顔を見ることができたのだ。
次に見るのは、自分が目覚めた時がいいなぁなんて、勝手に想像してみたりした。そんなふうに寝る度に毎回違うシチュエーションが待ち受けているのは楽しみでしかない。
片付けを終えて凪の近くに寄れば、既にうとうととし始めていて、自然と頬が緩んだ。
「凪、歯磨きとお風呂は?」
「ん……する」
テーブルに肘をついたままだった凪は、顔を上げてゆっくり瞬きをするとのろのろと洗面所へと向かった。
千紘は、寝室は既に洗ったばかりのシーツに張り替えてあるし、空調も整えてあることを確認してから凪の着替えを用意した。
凪の準備が全て整うと、彼は当たり前のように寝室へ行った。スマートフォンはテーブルの上に置き去りで、まるで警戒心のない凪に笑いながら千紘はその後を追いかけた。
千紘としては、凪と一緒にいられるのならそれが眠っている時間でもよかった。目が覚めたら凪がいる。ただそれだけで幸せなのだ。
以前の凪なら、客がキャンセルしたことなど絶対に千紘に言ったりはしなかったはずだ。スケジュールを把握されることを嫌うし、その時間をどう過ごすのか聞かれるのも嫌がる。
それを知っているからこそ、千紘は嬉しかった。その時間を自分のために使って欲しいだなんて贅沢は言わない。凪が自ら赴いてくれただけで十分だったから。
ただ、凪の仕事の時間まで寝ててもいいよと言ったのは、出勤時間が11時だとわかっていてあわよくばギリギリまで一緒にいてくれたらいいなという願望ではあった。
最近は千紘の方がアラームが鳴っても起きないから、凪の寝顔を見ることも少なくなった。けれど、前回は凪が先に寝たおかげで久しぶりに凪の寝顔を見ることができたのだ。
次に見るのは、自分が目覚めた時がいいなぁなんて、勝手に想像してみたりした。そんなふうに寝る度に毎回違うシチュエーションが待ち受けているのは楽しみでしかない。
片付けを終えて凪の近くに寄れば、既にうとうととし始めていて、自然と頬が緩んだ。
「凪、歯磨きとお風呂は?」
「ん……する」
テーブルに肘をついたままだった凪は、顔を上げてゆっくり瞬きをするとのろのろと洗面所へと向かった。
千紘は、寝室は既に洗ったばかりのシーツに張り替えてあるし、空調も整えてあることを確認してから凪の着替えを用意した。
凪の準備が全て整うと、彼は当たり前のように寝室へ行った。スマートフォンはテーブルの上に置き去りで、まるで警戒心のない凪に笑いながら千紘はその後を追いかけた。
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