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諦めること

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 歯を磨き終わった千紘は、脱衣場まで凪の腕を引っ張って連行し、服の裾に手をかけた。

「待て待て」

 慌てて凪が千紘の手首を掴むが、千紘はハフンハフンと鼻息を荒くさせて凪の首筋に唇を寄せた。
 誘ってきた凪の言葉がOKサインだと捉えた千紘は、凪の待てもおかまいなしに触り始める。

「おまっ、いい加減にっ」

「はぁ……凪、いい匂い」

 襟足から匂いを吸い込んで、凪の香りを堪能する。荒い息遣いが耳元で聞こえて、凪は思わず顔をしかめた。

「ちょ、ほんとに犬かよ」

 グイグイと千紘の肩を手で押すが、びくともしない。それどころが凪の方が壁まで追い込まれて、背中をピッタリと押し付けられた。

「あー……早く食べたい。シャワーなんか」

「シャワーは浴びる! とりあえず浴びてから」

「はあはあ……我慢できない」

 千紘の手はさわさわと凪の横腹を撫で、首筋に歯を立てた。

「んっ、ちょ……」

「凪の匂いする」

 軽く甘噛みした後は、舌全体を使ってそこを舐め上げた。

「こーら、やめろって」

 凪は、本当に千紘が大型犬に見えてきて、快感よりも呆れる方が上回った。

「美味しい……」

「おい、千紘。待て」

 千紘の顔と自分の首筋の間に手を差し込んだ凪が待てをする。千紘は、久しぶに凪に呼ばれた名前に反応し、ピタリと動きを止めた。

「……犬だな」

 凪は千紘の口を手で塞ぎ、押しのける。距離ができて目が合うと、「シャワー浴びるって言ってんだろ。がっつくな」と言い聞かせるように言った。
 千紘はコクコクと細かく頷くと、ようやく自分の服に手をかけた。それを見た凪がそっと手を離す。

「早く浴びよう! 早く!」

 誰かに追われてるんじゃないかというくらい性急にシャツを脱ぎ、洗濯機の中に投げ入れた。あっという間に裸になった千紘は、やっぱり凪の服の裾もグイグイと引っ張る。

「わかった! わかったから! 自分でやる! 先入ってろ」

「ヤダヤダ。凪の体見たい。触りたい、舐めたい」

「わーかったって言ってんだろ!」

「早く早く早く」

「るせ……」

 頭を抱えたい凪は、軽くため息を着きながらTシャツを首から抜いた。肌が顕になると、千紘の興奮はMAXに達し、凪の顎を手で掴んで唇を重ねた。
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