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得るものと失うもの
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「辞めるの?」
千紘は驚いたように目を瞬かせた。なんだかんだ凪はセラピストを続けるものだと思った。ノンケの男と体の関係に至ったことも何度かあったが、結局は皆女がいいと戻って行ったからだ。
凪が仕事を嫌になった理由は千紘にもよくわからなかった。女性で反応しなくなったとしても、業務的に相手を満足させることはできる。
本番をしなくたって中にはそれでもいいから凪じゃなきゃ嫌だという客もいるだろう。
仕事として割り切れば続けられるはず。それなのに辞めるまでに至ったということは、完全に女性が嫌になったか、性的なことに興味がなくなったかどちらかしかないような気がした。
「俺、やっぱ多分女無理だと思う」
千紘は凪の言葉を聞いて、そっちかと思うのと同時に無理になったんだ……と唖然とした。
千紘が望んでいたことだったはず。女性になんか目を向けず、自分だけを見て欲しいと。
セラピストを辞めてくれることだって、密かに千紘が期待していたことだった。それなのに素直に喜べないのは、辞める理由が決して自分を好きになったからではないからだ。
「勃たないから?」
「いや、なんか生理的に無理になった。もしかしたら、女だけじゃないかもだし」
「男も無理ってこと?」
「んー……人と関わることに疲れたのかも。他人が一生に関わる人間の数に達した気がする」
「それは相当な出会いがあったね」
「って、それ言ったらお前の方が客多いか」
凪は、芋洗い式に次々とカットしていく千紘の姿を思い出した。人と関わった数なら圧倒的に千紘の方が多いような気がした。
「でも俺の場合は短時間だからね。凪みたいに1人と2人きりの空間で何時間もとかはないから。合わないなって思ったらカットだけしてアシスタントに投げちゃうこともできるから」
「ああ、そっか……」
「そういう面では、1から10まで自分が責任もって対応しなきゃいけないし、時間を買われてる分、自由はないだろうし」
「うん。多分そういうことなんだろうな」
「それで、辞めて暫くはまた休むの?」
「いや、とりあえずセラピストは辞めるけど、業界にはまだ残ることにした」
凪は千紘に電話をかけたあと、オーナーに連絡を取った経緯を思い出していた。
千紘は驚いたように目を瞬かせた。なんだかんだ凪はセラピストを続けるものだと思った。ノンケの男と体の関係に至ったことも何度かあったが、結局は皆女がいいと戻って行ったからだ。
凪が仕事を嫌になった理由は千紘にもよくわからなかった。女性で反応しなくなったとしても、業務的に相手を満足させることはできる。
本番をしなくたって中にはそれでもいいから凪じゃなきゃ嫌だという客もいるだろう。
仕事として割り切れば続けられるはず。それなのに辞めるまでに至ったということは、完全に女性が嫌になったか、性的なことに興味がなくなったかどちらかしかないような気がした。
「俺、やっぱ多分女無理だと思う」
千紘は凪の言葉を聞いて、そっちかと思うのと同時に無理になったんだ……と唖然とした。
千紘が望んでいたことだったはず。女性になんか目を向けず、自分だけを見て欲しいと。
セラピストを辞めてくれることだって、密かに千紘が期待していたことだった。それなのに素直に喜べないのは、辞める理由が決して自分を好きになったからではないからだ。
「勃たないから?」
「いや、なんか生理的に無理になった。もしかしたら、女だけじゃないかもだし」
「男も無理ってこと?」
「んー……人と関わることに疲れたのかも。他人が一生に関わる人間の数に達した気がする」
「それは相当な出会いがあったね」
「って、それ言ったらお前の方が客多いか」
凪は、芋洗い式に次々とカットしていく千紘の姿を思い出した。人と関わった数なら圧倒的に千紘の方が多いような気がした。
「でも俺の場合は短時間だからね。凪みたいに1人と2人きりの空間で何時間もとかはないから。合わないなって思ったらカットだけしてアシスタントに投げちゃうこともできるから」
「ああ、そっか……」
「そういう面では、1から10まで自分が責任もって対応しなきゃいけないし、時間を買われてる分、自由はないだろうし」
「うん。多分そういうことなんだろうな」
「それで、辞めて暫くはまた休むの?」
「いや、とりあえずセラピストは辞めるけど、業界にはまだ残ることにした」
凪は千紘に電話をかけたあと、オーナーに連絡を取った経緯を思い出していた。
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