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甘えん坊

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 急に甘え始めた凪にどんな心境の変化があったのかわからないが、千紘にとっては大歓迎である。

 何も言わずにただ千紘の膝の上でスマートフォンをいじる。千紘も同じようにスマートフォンを取り出して画面を見つめる。

「なんか自然が多いところでのんびりしたいかも」

 凪がポツリと呟いた。千紘は顔を上げて、凪の手元を見る。見えてしまったスマートフォンの画面には、グランピングの文字。

「自然? 緑が多いところに行きたいの?」

「んー。パラグライダーやりたい」

「うん……」

 千紘はグランピングと関係あるかな? と思いながら、凪の話を聞くことにした。

「パラグライダーもいいけど、グランピングしたいの?」

「俺、したことない。でも、なんか面倒くさそうだからやっぱ料理は出てくる方がいいわ」

「ああ、そう。じゃあ、ちょっといいところの宿とか」

「温泉? あー……温泉いいかも。それなら金目の煮付けか伊勢海老か」

 うーん、と考える凪が可愛くて、千紘はきゅうっと胸が苦しくなる。グランピングをしたいのかと思いきやパラグライダーがしたいと言ったり、温泉がいいと言いながら食事のことを考えたり。

 全くやる気がなかった凪が、やりたいことを見つけたのは千紘も嬉しい。そして千紘も凪が一緒だったらなんでもやってみたかった。
 特に2人で旅行だなんて非現実的で最高にいいと感じた。

 旅館でもとってゆっくり温泉に浸かって美味しいものを食べてのんびりと過ごせる。家で一緒に過ごせる今だって十分幸せだけれど、それとは違った空間が味わえる。
 それに、なにが嬉しいかといえば、凪の方からその提案をしてくれていることだ。

 一緒に温泉だなんて意地でも行かないと言ったであろう凪が、1つの候補として挙げているのだ。千紘が期待しないわけがなかった。
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