かつてあったかもしれない語られることの無かった物語

隠里雪樹

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『風と…』

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おとうさんがよく話してくれた。むかしこのせかいは、とってもきれいにひかる、くらくてまっくらなせかいにならないように、せかいを優しくてらしてた一匹の鳥さんがいたんだって。
それはとてもあたたかくて、みんながいやな気持ちにならないようにしていたの。

でも…みんなはやがてそのひかりを奪い合い、独占しようと考えるようになった。
人々の争いや私利私欲の考えに一匹の鳥…炎の鳥は嘆き、哀しみ。己の涙で自らの命とも言える炎を消し去った。
世界は闇に包まれ、人々からはいきる意思が消えたのだった。
幼い頃に父からよく聴かせてもらった世界を照らしていた優しく悲しい炎の鳥の物語。
しかし、この話しには続きがある。
父が言うには、我が家には代々受け継がれてきた灰色の羽のペンダントがある。
その羽をある時期のある場所にいるあるものに対して渡すと、世界は光を取り戻すのだとか。
だけど、僕には解らなかった。
生まれてから光の知らない世界で生きてきた僕にはこの荒んだ世界に光を戻す価値があるのかどうか。
僕には解らなかった。
幼い頃は父が語ってくれるこの話が好きだった。
そして父は私に良く言っていた。
「この炎の鳥の哀しみは痛いほど解る。だから父さんはこの炎の鳥は世界に反省して欲しくて世界から光を消したんだと思うんだ。結果的に争いは無くなったけど…
それと同時に人へ優しくする心も無くしてしまったんだと、人々の心の多くは凍ってしまったんだと私は思うんだ。
人は光があるからこそ。そこに夢や希望、優しさが生まれると父さんは考えてる。
だから、私の太陽には光がなくても優しさや夢を忘れないで欲しい。
人を思いやり、優しくし、夢は…まだ難しいかな?でもどんな事があっても、お前は優しさを忘れては行けないよ?
かつての炎の鳥のように、世界を優しく照らせるような太陽であって欲しい。」
     いつも言ってくれてた言葉
           でももう聴けない
      いつもいろんな事を教えてくれた
  でももう教えて貰えない
父は…お腹を空かせた通り魔に食べ物の奪い合いになって殺された。
今の世に法はない。
あるのは人に歪んだ楽しみを与える私刑だけ。
それを見るためだけで周りの人はそれを捕まえて…
被害者の家族に殺させる…
ねぇ父さん…こんなにも醜い人へ優しくしないと行けないの?
ねぇ父さん…こんな世界に夢はあるの?
ねぇ父さん…どうしたら父さんに会えるの?
ねぇ父さん…教えてよ、何時もみたいに…
  ねぇ父さん…
     父さん……………





      何で殺したんだ…!!








僕はその私刑を行う場所につくとドス黒い感情に思考が支配されていた。
その場所は炎の鳥が眠るとされる場所の真上
その場所はもはや殺戮を行われるための遊戯場
かつて世界を愛した鳥の上で殺しが行われるのである。
皮肉だ…本当に皮肉だ!
        それでも怒りは消えない…
  それでも憎しみは消えない…
 それでも一度向けてしまった悪意は消えない…
ナイフを片手に逃げるそいつに切りつける。
逃げるな。もがくな。そんな顔をするな!
こうなると解っていてなぜ殺した!こうなると解っててなぜ!
私刑場の角にそいつを追い詰める。
相当な時間が立ったのだろう、僕も息を切らして前のめりになり、ペンダントが宙に浮いた。
父がくれた灰色の羽のペンダント。
心なしか今日はその羽が…

   濁ったように黒く偏食していた

だが関係ない。こいつを殺せば父も浮かばれる。
こいつを殺せば全てが終わる。
こいつを殺せば…何もかもがもう終わるんだ…
なんの事か解らない核心が僕の右手に持つナイフを振り上げる。
だが…振り下ろそうとすると目の前には女の子が居た。
慌てて庇うように男は女の子を自分の体で覆い、この子は関係ない!助けてくれと懇願してくる。

ふざけるな…ふざけるなふざけるなふざけるな!!
俺は男の胸ぐらを掴み。僕は言った、大切な存在を知っていてなぜ殺した相手の事を考えなかったと。
そうしてナイフを離して男を殴り飛ばして膝をついた。
周りから早く殺れと声が聴こえる。
うるさい!僕は叫ぶ。
静まり返った後に僕はナイフを手に取る。

お前にも、お前の娘にも同じ気持ちを味会わせてやる…
娘が庇うならお前に同じ気持ちを…さぁ…



   世界の犠牲になるのはどっちだ?





















僕は驚いた。振り下ろしたナイフは…僕自信の左手を刺して止めていた。
自分でもわけの解らない行動に驚くと同時に痛みに教われてナイフを抜いてもがく。
こんな痛いものを父は受けたのか。
こんな痛いものをこの男は父に刺したのか。
こんな痛いものを…多くの人は僕と同じように多くの人に刺したのか…
こんな痛いものを…
   ・・・・・・
 僕は無関係な少女に行おうとしてたのか!?

自分の発想に今さら気が付く、自分の狂気に恐れる、自分の行いに、自分の感情に…殺意に恐れる…

僕は男を見た。娘を抱き締めながら何が起こったのか困惑する男。
           ・・
僕は痛みに我慢ナイフを左手で持ち…




















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
殺意を覚えた自分の右手を何度も突き刺した





















異様な光景に観客は唾を飲んで見ている。
それでもやめない。
何度も何度も何度も…感覚がなくなっても刺し続けた。

       もうやめろ!!

男が飛び込んで左手を掴みナイフを振るう僕の手を止めた。
涙を浮かべながら刺すなら私を刺してスッキリしてくれと懇願してくる。
だが僕は…

右手が痛くてあんたを殺したくてももう動かない。腹が立つし殺してやりたいけど仕方ない…
動かないし左手はさっきから自分の体の言うことを離れて右手を刺してくるし…刺されると痛いって解ったらもう刺せない…
だからあんたを許すしかないな…あぁ…悔しいなぁ…


そう言って男に許しを与えた
男どころか周りも驚く
だが僕は血だらけの右手を空に掲げながら

いてぇ!いてぇ!と何度も叫んだ
何でこんな痛いものを恨みとか苦しいからって刺せるんだ!?
刺そうとする瞬間なんて後悔と苦しみに押し潰されそうだ!殺ったことあるならもっと苦しいだろうな!でも周りの目もこえぇし!殺らなきゃ行けないって思えてくるし!かつて世界を愛した火の鳥はこう思うだろうな!

   【この世界から光を無くして正解
       だったって!!!】

僕は力の限り叫んだ。別に諭す気なんて無い
ただ叫びたかった。わかってほしかった。
人が人を殺す事なんておこがましいんだと。
人の苦しみを理解してやれるのは同じ苦しみを持つものだけだと。
誰にも響かなくて良い。
ただ叫びたかったんだ。
僕はもう…苦しみたくないって…

やがて一人の女性が近寄ってきた。
そして自分の手を僕と同じように勢い良く刺してすぐに抜いた。
声にならない叫びで苦しんだ後に僕を見た

「確かに痛いね…これ…私は恨みを晴らしたけど…スッキリなんてしなかったよ…苦しいだけ…だって何にも残りゃしないからねぇ…こういってはいけないのかもだけど…あんたが思い止まって…私みたいな思いをしなくて良かったと思うよ…」

そう涙を流しながら刺した手で僕の頬を撫でながら泣く女性。
それからは凄かった。
その女性のように自分の手を刺していく人が1人、また1人と増えていったのだ。
その中にはそんな思いをしてない人がやったりもしていた。
お互いに手を刺し合ってこれは気分が悪いなと言い合う者も…
やがてそれは集落全体に…まるで痛みを分かち合い、苦しみを分かち合い…全員が刺し終わる頃にはみんなが謝ったり抱き合いながら笑っていたりしていた。
僕も笑ってしまっていた。
男だけは苦しそうにしながらナイフを僕に差し出した後に土下座して殺してくれと言ってくる。
でも僕はまだ何とか右手で持てたナイフそのまま地面にこぼれ落とした。
もう良いんだ…父はそれを望んでない。
男に周りを見るように言った。
父が望んでいるのはこの光景、光は無くても互いを理解しあい、世界を優しく包み込む。
笑顔…世界はいまだに明るいけど、何故か僕には光が灯ってるように見えた。

男の娘が近寄ってくる。
いつの間にか灰色に…心なしか淡く光っていたペンダント。
それを何故かこの子にあげようと思えた。
理由はない、ただそうした方が良いという直感だった。
女の子が躊躇しながら男の…父親の手と共にそれを受け取ろうと手を重ねると灰色の羽は息を吹き替えしたかのように、まるで待っていたかのように眩く光始めた。

その光をとても暖かく。まるで包み込んでくれるように優しく照らしていた。





      お前を誇りに思う…
      私の愛しい太陽よ…





誰かに抱き締められ、誰かにそう言われた気がした。
僕は涙が溢れて止まらなかった。
ずっと見ていてくれてたんだ。
ずっとそばで…止めてくれてたんだ…

光は地面からも溢れだし、やがてそれは形となる。
美しく、聖なる五色に輝く翼を身に纏い。
気高く雄々しい炎の鳥は、こちらを見た後、優しい目をして
高く広いこの空に
世界を再び照らすために復活した。
雄々しく美しい歌声を響かせ、風をその身に強く感じさせながら
闇に呑まれたこの世界を…






   多くの仲間と共に照らし始めた






父の語る物語ではずっと一匹だった炎の鳥。
僕はずっと不思議だった。
炎の鳥は一羽で寂しくないのかと。
寂しいなんてとんでもなかった。
炎の鳥達は空高く大きな円を描きながら羽ばたいていった。
中には喜びで涙が出そうになるのを堪えながら飛び立つ炎の鳥はも居た。
やがて炎の鳥達は肉眼では確認できないほど天高く飛び立ち。
まるで太陽のように世界を優しく照らし始めた。

それは闇の時代の終わりを告げる光。

その輝きを眺めていると何故か痛みの消えていた左手に感触を感じられた。
視点を下に向けると女の子が左手を握っていた。
そして炎の鳥に負けないほどの笑顔で言ってきた。
俺はそれに泣きながら答えた。




    『こちらこそありがとう』と…





『風と炎の鳥』







こちらの作品はYouTubeにて投稿されている
「月野鷹星」様の楽曲
【AIきりたん】風と炎の鳥【NEUTRINOオリジナル曲】 
を題材に書かせていただき、ご本人の許可をいただき投稿させていただきました。

こちらの楽曲は炎の鳥の物語。
ほん作品とは正反対に優しくとても綺麗な音色で語られていく炎の鳥の物語。
そして炎の鳥の復活の物語の曲となっております。
とっても素敵な楽曲です。
下記URLにて楽曲を聴けますので皆様、是非一度ご視聴してみてください。
https://youtu.be/cVfyk_Olnuo
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