かつてあったかもしれない語られることの無かった物語

隠里雪樹

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海へ出た男

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これはある海賊の物語。

その男は孤高の海賊
若い頃に家族と共に住んでいた街を捨て
伝説の秘宝を求めて海に飛び出した

伝説の秘宝
それは古より語り継がれていた物
手にはいれば莫大な富が得られる、世界を手にする力を得られる、神にすらなれるとさえも言われるほどの秘宝
しかし、伝説の秘宝を求めることなかれ…
多くの者達が伝説を信じ海へ出るも…
伝説は伝説のままに誰も見つけられず
その者達は消息を残さぬまま歴史から消えていった
求めることなかれ、求めれば失う
求めることなかれ、求めれば後悔する
求めることなかれ、求めれば間に合わなくなる
求めることなかれ…求めることなかれ…

それでも求める者達の1人にこの男は入ってしまった
止める家族の叫び声を無視して
男は風を操り進んで行く
嵐の海を越え、船が大破しそうなほどの荒波津波も何のその
男の技術にかかればその程度は造作もない
伝説と唄われるほどの巨大なタコや鮫
それすら振り切り男は進む
されど幾度と航海しようと伝説は糸口すら得られず
幾度も航海しようと伝説は影も形も現れず
やがて男は疲れきり、小さな…本当に奇跡にも近いような小さな無人島を発見した
男は上陸し、歩けば半刻もどで回れてしまう島をぐるりと回った

するとどうだ?そこには手記が一つ残されていた
・・・
数十年の時を経て、男は遂に伝説の糸口を手に入れたのだ!
男は手記にあった航路を進む
酷い荒波、酷い雨、時には津波に襲われ、あまりの揺れに食料と水分は大半が海に奪われ、大半は腐ってしまっていた
それでも男は止まらない
それでも男は求め続ける
もはや目的すら忘れたこの航海の終着を目指して
ひたすら男は進み続ける
力使い果たし、倒れそうになる男
しかし…男は遂にたどり着いたのだ
いつの間にか消えていた小さな無人島で発見した手記の書き示した場所に…
そこはもはや面影も残らない
かつて栄えていたが今やその残骸しか残っていない港街
男はここにお宝が躍起になって探し始める
しかし妙な違和感を覚える
ここは始めてのはずなのに
何故か足が簡単に前に進めれる
不自然な焼き崩れて見る影もないはずなのに
そこに何が建っていたのか何となくわかる
だがそれが何故かわからない
だが心臓の鼓動が五月蝿くなる
食料も水を無くして、もはや何も出ることのないと思われた体から汗が溢れる
男は走った
知らないはずのその街を
  ・・・・・・・・・・・・・・・・
  まるでかつて住んでいたかのように
     ・・・・・・・・・・・
     いとも簡単に走り続けた

やがて…男はたどり着いた
たどり着いてしまった
その街の中でもはやそこだけは影も形も残らず
それどころかか不自然に抉れてクレーターが出来上がってるその場所に
男は膝から崩れ落ちた
思いだした
思い出してしまった
かつてここが…

  ・・・・・・・・・・・・・・・・
  自分が家族と住んでいた街なのだと

男は涙を流した
こんなはずではなかったと
いつの間にか求めるだけになっていたこの航海の目的
それは家族に楽な幸せを与えるためだったと
だぎもうその家族はいない
求めた裁きなのだろうか…
ちらほらと残る街の中の骨とは違い
もはや自分の住んでいた痕跡は何もない
家も、両親も、子供達も、妻も…
何も残らない
絶望に泣き、後悔と苦しみが男を襲う

何時間…いや…何日たったのだろう…
クレーターの前で毎日後悔をしながら、屍のように街の中の骨を埋めていく
行動に意味はないが男は無心にその行動を行っていた
街の見える丘に建てた後、男はクレーターの前に戻る
するとそこには穴が無く
家族がお疲れ様と迎えてくれているではないか
男は涙を流しながら
妻に支えられながら、光溢れる家の中に入っていく





男は何かを呟きながら、クレーターの前に落ちていた黄金の剣で自分の心臓を貫いて自害していた

男の見た光景は幻なのか?
今となっては確かめる方法は無い

男は幸せ最後の瞬間に手に入れのか?
それは男にしかわからない…

崖の上に自ら建てた石碑を見ながら
男は虚ろな目で息絶えるまで呟き続ける

石碑にはこうかかれていた

      求めることなかれ
     求めれば大事な者を失う
      求めることなかれ
    求めれば自分の行動に後悔する
      求めることなかれ
求めれば最愛の人と別れに間に合わなくなる
      求めることなかれ
    求めれば裁きを受けるだろう
  求めることなかれ…求めることなかれ…
     伝説の秘宝はすぐ側に…

それは男の最後の命をかけた言葉
自分とは同じになると残した言葉
その願いを込めながら、虚ろの目で呟き続ける男の声はやがて消えていったのだった…

 「ただいま…ただいま…ただ…い…ま…」



 『海へ出た男~大切なものは…~』
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感想 1

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みんなの感想(1件)

氷晶 春妬
2021.07.24 氷晶 春妬

感想失礼します。
独特な雰囲気と硬派な文体が印象的な作品でした。そして教会、孤児、騎士見習い試験、王族、侍女……そうした中世西洋の生活文化のかけらたちが、どれも隠里さんの世界観を味わい深いものにしています。「籠の中にて住まう鳥よ、生を謳歌し自由へ羽ばたけ」とは、なるほどこの作品のテーマなのですね。最後の文、しびれました。
語られることのなかった物語、今後もそのより深い世界で魅せてくれることを、勝手ながら願っています。

解除

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