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第三章 半世紀後の世界。
よい光景。よい加減。
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(…うむ、言われた通りにまずは隊長と弓兵を倒したか。偉いぞミケラ。)
ミケラの戦闘を見て空高くいる我は頷く。
ハコダンテ軍に攻撃を仕掛ける時、我はミケラにまずは隊長を倒せと言った。
敵の指揮系統を乱れさせることによって集団での行動を遅らせミケラが攻めやすくなるようにする為だ。
その後で遠距離攻撃による牽制をさせない為に弓兵を倒しミケラの得意な近距離での戦闘に持ち込ませる。
上からみた限りの数に先ほどの動揺している様子から精鋭というより一般兵レベルだろうからミケラの瞬発力に勝てることはまずないだろう。
「ぐあああぁぁぁぁ!?」
「は、速い!?」
「どこに行っがはっ!?」
と我が考えている間にミケラの一方的な攻撃が続く。
剣を振っても当たらず、次の瞬間には腕や首が宙を舞う者、頭や腹を殴られてうつ伏せに倒れる者が出てくる。
戦意を失い逃げ出そうとする兵士は真っ先にミケラの狩猟本能が嗅ぎ付け背中から爪で串刺しにされて絶命する。
「さあさあ!あたしの動きについてこれますかぁ!」
顔と髪を血でさらに染めながらミケラは気合いを入れて次の獲物へと突っ込んだ時だった。
「目を閉じて!」
そう叫ぶと副隊長は腰にあった鉛色のミニ水筒くらいの筒を頂点にある紐を引き抜いてからミケラに投げる。
空中で回転しながらミケラへと飛んだ筒は彼女に当たるよりずっと前に炸裂すると眩い光を放った。
(む?この世界に閃光爆弾だと?)
さすがにこれは我も知らなかった。
以前見つけた機械もだが半世紀という時の間に携帯品の技術も上がっていたようだ。
閃光はほんの二、三秒で終わったが顔を押さえて鳴くミケラがいた。
「よし!半分は負傷者の確認を!残りは私と奴隷隊で一気に攻める!続けぇ!」
副隊長の指示でバラバラだった兵士達の心に落ち着きが戻り剣を手に持つ者は副隊長に続いて果敢にミケラへと突撃する。
しかし兵士達とミケラの間に黒い物が落ちて地面に突き刺さり衝撃と風圧によって副隊長達は足を止められた。
土煙が晴れ副隊長達の前に見えたのは漆黒の盾であった。
「ミケラよ。不測の事態にも対応出来る心構えを持たねば弱者であろうと手痛い目に会うぞ?」
「ふにゃ…その声は、大魔将軍様。も、申し訳ありません……」
「ふふ、まあよい。今回が初陣ならば大目に見よう。」
空からゆっくりと盾の隣に着地した我が注意するとミケラは耳と尻尾をしょんぼりさせて謝罪してきたのですぐに慰める。
というか我も全く予想外だったからこういうことがまた起きないように反省しなくてはならない。
我が現れたことに対して兵士達は剣を前に出していたが、長命で有名なエルフ達の何人かが我の姿を知っているらしく勝利も生還も潰えたと悟って膝を着いて呆然としていた。
ともかくミケラが回復するまでここは下の者を守り店長としての威厳を敵に示しておこう。
「目が治ったらまた指示した通りに動け。その間に半分くらいは片付けてやろう。」
大盾を腕に当て磁石のようにくっ付ければ軽々と持ち上げてみせてから我は目の前の連中に言う。
「ハコダンテ軍よ、我が大魔将軍である。この森はすでに我の森である。いかなる侵略も我が許さない。本来なら部下の初陣を見守るだけに済ませたかったが、大事な眷属なのでな……」
すっと盾を持たぬ片手を前に出し手の平を前に出すと威圧感を込めて宣告した。
「五分、五分だけ相手してやろう。かかってこい。」
手を動かし手招きする仕草を見せてから我は直立して止まる。
仲間を倒されさらには虚仮にするような発言をして立ち尽くす相手に我慢できなかった兵士達が止めていた足を動かし突撃を再開する。
(悪いがに作戦通りにしたいから、お前達には死んでもらうぞ。)
片手を軽く円を描くように動かせば三つの魔方陣が空中に展開されそこから黒い鏃が発射されて前に出た兵士達の鎧を簡単に貫いて討ち取る。
「前に出た者だけ討つ。それしかしないから好きに動くがよい。」
それでミケラが回復したら、我はすぐに姿を消して彼女に任せるつもりだ。
我の言葉と無駄に流れようとする時間の板挟みに兵士達はどうすることも出来ずに困惑していく様を眺めていれば下を向いていた副隊長が剣を両手に持って構える。
「人を弄ぶのも大概にしろ!私は決して魔獣に屈しはしない!」
声を張って言ってきた副隊長。
先ほどから聞いていたが、この副隊長もしかしたら女性かもしれない。
兜を被っていたのと他の兵士と同じ防具だったので気づくのが遅れたが近くで聞いた声色からして可能性が高くなったし感じた気迫は確かなものなので実に勇敢な女性兵士だ。
副隊長は声を出しながら我へと駆け出してきたので盾の一部をリボルバー型に変形させ手に持つと正面に構える。
「ならば散れ!【漆黒の弾丸・狙撃】!」
リボルバーの引き金を六回引けば魔力の弾丸が六発放たれ副隊長へと飛んでいく。
副隊長は弾丸を防ごうと剣を前に出した態勢で進む。
しかし弾丸は副隊長の左右を抜けて後ろの兵士に風穴を開けて一気に六人を討ち取る。
【漆黒の弾丸・狙撃】は我が任意にマーキングした対象に向けて追尾する闇属性の光弾を発射するスキルだ。
悲鳴に副隊長はまさかと足を止めて振り返れば地面に倒れた兵士達を見てよくも!と怒り改めて突撃しようとしたところを我は狙った。
「遅い!悲鳴に振り返るようでは戦場は生きられんぞ!」
正義感の強そうな感じだったので副隊長ではなく他の兵士を撃てばやはり脚を止めたのでその隙にすぐ目の前まで接近した我はこちらへと向き直した副隊長に盾をぶつけ足を浮かせるとそのまま地面に押しつけてやった。
地面に軽く亀裂を作るほどの衝撃に加減してやったが副隊長は気を失ったようだ。
そしてここで時間がやってきた。
「みゃあっ!大魔将軍様!」
「治ったかミケラよ。なら後は作戦通りに暴れてみせよ!」
閃光から回復したミケラに我は言うと後は高見の見物となった。
さっきの倍の速度で次々とハコダンテ軍の連中を殴る斬るの一方的なミケラの活躍で十分もかからず掃討が完了した。
再び静寂が訪れる中で我は今回の成果について確認する。
「…これでよし、そっちはどうだエイム?」
兵士達の装備を外して肉体と装備を別々に集めてから振り返ってエイムに尋ねる。
エイムの方は倒れているエルフの額を触って頷いてから返す。
「うん大丈夫だよマスター。エルフの皆は命に別状はないよ。」
エイムの返事に我はそうかと頷く。
見事作戦通りにミケラが活躍してみせたことが確認できたからだ。
ミケラが戦いに出る前に我はもう1つある指示を送った。
侵略にきた連中の中で長い耳の者達は気絶で済ませ、他は全員討ってよしという指示をミケラに与えた。
この指示を出した理由は二つある。
一つは相手によって対応する行動をミケラに学ばせる為。
もう一つは長命で記憶力もあるエルフ族から森の外の今の世界の情報を得る為である。
結果ミケラは見事にハコダンテ軍の装備を着けた者は爪で切り裂き、エルフ達は殴って気絶させるだけで済ませていた。
ちなみに今エルフと一緒に寝かせている蒼髪が似合う人間の副隊長の女性は我がしたことなのでそこはノーカウントにする。
「というわけだから、初陣の評価は百点満点中の五十三点です。」
「みゃーん!?頑張ったのにどうしてそんなに低いんですか!?」
なんて考えていたらエイムが勝手に採点してミケラがショックを受けていた。
「だって不覚を取ってマスターを前に出させたから。これでもかなり譲歩してだからね?次は一人で出来るようにしないとダメだよ。」
見事に先輩風を吹かして理由を伝えてみせたエイムにミケラが落ち込むのを見て我が間に入ってあげた。
「そこまでにしておけエイムよ。ミケラ、さっきも言ったがこのことをしっかり反省して次に活かすのだ。」
「はい!次こそは私一人で出来るように頑張ります!」
耳と尻尾を立てて気合いを見せるミケラに我はうんうんと頷いてから次の行動に移ることにした。
まずはエルフの首に着いている首輪のようなものに【情報開示】を使う。
出てきた名前は〔魔封じの首輪〕と書かれており、どうやら魔法を使おうとすれば首輪から雷属性が発生してダメージを与える仕組みのようだ。
しかも首を跳ねた隊長の着けていた腕輪によって任意に発動させることも出来たらしくまさに虐げる為に作られた道具と言えよう。
(こういう道具は勇者や魔科学者のあいつは嫌っていた発想だったな。)
簡単に魔法を発動させる装置に閃光爆弾だけでなく、奴隷に使う道具も進歩してしまっていることに我はヒト族の業の深さを改めて認識した。
「エイム、この首輪を解析し分解することは可能か?」
「任せて。」
我はエイムに命令して首輪を解析する名目で外してあげることにした。
片手をスライム化させて女性エルフの首輪を包むように取り込むと数秒でボロボロと粒子化されて消えた。
解析からエイムが言うには首輪の素材はこの世界の一般的なもので使われていた魔術も複雑なものではないので複製は余裕だとのこと。
だが我も勇者達と同様に道具を使って虐げるようなことは断固として嫌っているのでエイムに全ての首輪を分解するように指示した。
ついでに暴れて抵抗しないように分解した素材を【再構成】させ手錠を作るとミケラに頼んでエルフ達に装着させる。
それが済んでから十五人いた内の六人の女性エルフを起こす。
目覚めたエルフ達は我とミケラを見るなり悲鳴を上げて後退りしようとしたところをエイムがスライム化した腕を伸ばして六人の腹部に巻きつけて固定する。
「落ち着けエルフ族よ。我はお前達に危害を加える気はない。」
我はエルフ達に一言伝えてからさらに首輪を取り除いてやったことを言えば彼女らははっと自分の首を触ってお互いに見合って確認する。
すると彼女らはすぐ近くまで集めたせいか手錠に繋がれた手を取り合って泣き出してしまった。
よほど首輪から解放されたことが嬉しかったのだろうか、我の方を見ると何度もお礼を言ってきた。
正直これで彼女らが魔法攻撃でもしてきたらきっとエイムが反逆者として始末してしまったかもしれないので我は内心ほっとしてエイムに拘束を解くよう伝えた。
「さてと、まずはお前達に聞きたいことがある。お前達の一団で一番の年長者は誰だ?」
我が尋ねたことにエルフの彼女らは話し合ってから一人が手をあげて言う。
「た、多分ですけどパーサーさんではないかと思います。」
「パーサー?」
出てきた名前に我はどこかで聞いたような気がしたが誰がパーサーかを続けて尋ねれば手をあげたエルフの女性が片手を差し出して五厘頭のエルフの男性を指して伝えてくれた。
男性でも艶やかな長髪を垂らすか後ろに纏める程度に維持するエルフ族にしては珍しい髪型の男性パーサーを我自ら揺さぶって起こしてあげた。
目覚めたパーサーは視界に我の顔を捉えると飛び起きるように身体を起こしてから振り返って再び確認するとしばらく唖然とした表情を見せたが先ほどのエルフ女性とは違った行動を取った。
「まさか半世紀の時を過ぎて再びあなた様に会えるとは夢にも思っておりませんでした。」
パーサーは急に平伏すると地面を見ながら言ってきた。
その声と姿勢に我の記憶からとある一場面が思い出された。
「お主、もしや[灰の一団]のパーサーか?」
「おお、覚えておいていただけていたとは、父も喜びましょう。」
我の口から出た名前を聞いてパーサーは嬉しそうに顔をあげて返す。
[灰の一団]とは今はこの大黒林や他の森に住んでいたエルフ族の集団である。
彼らは森での乱獲や密猟者を処罰して平和を守りながら生活していた。
我がこのパーサーと出会ったのは魔空城建設の折に偵察からの報告で当時の大黒林にいた灰の一団と直接交渉した時である。
確か半世紀前は顔がしゅっとした美青年だったが記憶があるが今は髭が似合う男前な顔つきになっている。
話を戻して灰の一団の長であるパーサーの父と対談した我はそちらが建設の邪魔をしなければこちらは灰の一団と森に一切の被害は出さないという約束を結んだ。
まあ我一人で行こうとしたら威厳を示すべきだと魔族の大団体がついてきてしまって向こうにとっては結ばされたという印象になってないか不安だったが……
ともかく彼なら半世紀の間に何かあったかを知っているはずだ。
「大魔将軍様、私達はあなたが勇者に倒されたと聞いておりましたが?」
「うむ、それについては追々話そう。パーサーよ、お前にエルフ達をまとめ我についてくる任務を与える。」
いつまでもここにいるわけにはいかないので我はパーサーに命令すると彼は素直に承知しましたと返してくれたので森に帰還することにした。
ミケラの戦闘を見て空高くいる我は頷く。
ハコダンテ軍に攻撃を仕掛ける時、我はミケラにまずは隊長を倒せと言った。
敵の指揮系統を乱れさせることによって集団での行動を遅らせミケラが攻めやすくなるようにする為だ。
その後で遠距離攻撃による牽制をさせない為に弓兵を倒しミケラの得意な近距離での戦闘に持ち込ませる。
上からみた限りの数に先ほどの動揺している様子から精鋭というより一般兵レベルだろうからミケラの瞬発力に勝てることはまずないだろう。
「ぐあああぁぁぁぁ!?」
「は、速い!?」
「どこに行っがはっ!?」
と我が考えている間にミケラの一方的な攻撃が続く。
剣を振っても当たらず、次の瞬間には腕や首が宙を舞う者、頭や腹を殴られてうつ伏せに倒れる者が出てくる。
戦意を失い逃げ出そうとする兵士は真っ先にミケラの狩猟本能が嗅ぎ付け背中から爪で串刺しにされて絶命する。
「さあさあ!あたしの動きについてこれますかぁ!」
顔と髪を血でさらに染めながらミケラは気合いを入れて次の獲物へと突っ込んだ時だった。
「目を閉じて!」
そう叫ぶと副隊長は腰にあった鉛色のミニ水筒くらいの筒を頂点にある紐を引き抜いてからミケラに投げる。
空中で回転しながらミケラへと飛んだ筒は彼女に当たるよりずっと前に炸裂すると眩い光を放った。
(む?この世界に閃光爆弾だと?)
さすがにこれは我も知らなかった。
以前見つけた機械もだが半世紀という時の間に携帯品の技術も上がっていたようだ。
閃光はほんの二、三秒で終わったが顔を押さえて鳴くミケラがいた。
「よし!半分は負傷者の確認を!残りは私と奴隷隊で一気に攻める!続けぇ!」
副隊長の指示でバラバラだった兵士達の心に落ち着きが戻り剣を手に持つ者は副隊長に続いて果敢にミケラへと突撃する。
しかし兵士達とミケラの間に黒い物が落ちて地面に突き刺さり衝撃と風圧によって副隊長達は足を止められた。
土煙が晴れ副隊長達の前に見えたのは漆黒の盾であった。
「ミケラよ。不測の事態にも対応出来る心構えを持たねば弱者であろうと手痛い目に会うぞ?」
「ふにゃ…その声は、大魔将軍様。も、申し訳ありません……」
「ふふ、まあよい。今回が初陣ならば大目に見よう。」
空からゆっくりと盾の隣に着地した我が注意するとミケラは耳と尻尾をしょんぼりさせて謝罪してきたのですぐに慰める。
というか我も全く予想外だったからこういうことがまた起きないように反省しなくてはならない。
我が現れたことに対して兵士達は剣を前に出していたが、長命で有名なエルフ達の何人かが我の姿を知っているらしく勝利も生還も潰えたと悟って膝を着いて呆然としていた。
ともかくミケラが回復するまでここは下の者を守り店長としての威厳を敵に示しておこう。
「目が治ったらまた指示した通りに動け。その間に半分くらいは片付けてやろう。」
大盾を腕に当て磁石のようにくっ付ければ軽々と持ち上げてみせてから我は目の前の連中に言う。
「ハコダンテ軍よ、我が大魔将軍である。この森はすでに我の森である。いかなる侵略も我が許さない。本来なら部下の初陣を見守るだけに済ませたかったが、大事な眷属なのでな……」
すっと盾を持たぬ片手を前に出し手の平を前に出すと威圧感を込めて宣告した。
「五分、五分だけ相手してやろう。かかってこい。」
手を動かし手招きする仕草を見せてから我は直立して止まる。
仲間を倒されさらには虚仮にするような発言をして立ち尽くす相手に我慢できなかった兵士達が止めていた足を動かし突撃を再開する。
(悪いがに作戦通りにしたいから、お前達には死んでもらうぞ。)
片手を軽く円を描くように動かせば三つの魔方陣が空中に展開されそこから黒い鏃が発射されて前に出た兵士達の鎧を簡単に貫いて討ち取る。
「前に出た者だけ討つ。それしかしないから好きに動くがよい。」
それでミケラが回復したら、我はすぐに姿を消して彼女に任せるつもりだ。
我の言葉と無駄に流れようとする時間の板挟みに兵士達はどうすることも出来ずに困惑していく様を眺めていれば下を向いていた副隊長が剣を両手に持って構える。
「人を弄ぶのも大概にしろ!私は決して魔獣に屈しはしない!」
声を張って言ってきた副隊長。
先ほどから聞いていたが、この副隊長もしかしたら女性かもしれない。
兜を被っていたのと他の兵士と同じ防具だったので気づくのが遅れたが近くで聞いた声色からして可能性が高くなったし感じた気迫は確かなものなので実に勇敢な女性兵士だ。
副隊長は声を出しながら我へと駆け出してきたので盾の一部をリボルバー型に変形させ手に持つと正面に構える。
「ならば散れ!【漆黒の弾丸・狙撃】!」
リボルバーの引き金を六回引けば魔力の弾丸が六発放たれ副隊長へと飛んでいく。
副隊長は弾丸を防ごうと剣を前に出した態勢で進む。
しかし弾丸は副隊長の左右を抜けて後ろの兵士に風穴を開けて一気に六人を討ち取る。
【漆黒の弾丸・狙撃】は我が任意にマーキングした対象に向けて追尾する闇属性の光弾を発射するスキルだ。
悲鳴に副隊長はまさかと足を止めて振り返れば地面に倒れた兵士達を見てよくも!と怒り改めて突撃しようとしたところを我は狙った。
「遅い!悲鳴に振り返るようでは戦場は生きられんぞ!」
正義感の強そうな感じだったので副隊長ではなく他の兵士を撃てばやはり脚を止めたのでその隙にすぐ目の前まで接近した我はこちらへと向き直した副隊長に盾をぶつけ足を浮かせるとそのまま地面に押しつけてやった。
地面に軽く亀裂を作るほどの衝撃に加減してやったが副隊長は気を失ったようだ。
そしてここで時間がやってきた。
「みゃあっ!大魔将軍様!」
「治ったかミケラよ。なら後は作戦通りに暴れてみせよ!」
閃光から回復したミケラに我は言うと後は高見の見物となった。
さっきの倍の速度で次々とハコダンテ軍の連中を殴る斬るの一方的なミケラの活躍で十分もかからず掃討が完了した。
再び静寂が訪れる中で我は今回の成果について確認する。
「…これでよし、そっちはどうだエイム?」
兵士達の装備を外して肉体と装備を別々に集めてから振り返ってエイムに尋ねる。
エイムの方は倒れているエルフの額を触って頷いてから返す。
「うん大丈夫だよマスター。エルフの皆は命に別状はないよ。」
エイムの返事に我はそうかと頷く。
見事作戦通りにミケラが活躍してみせたことが確認できたからだ。
ミケラが戦いに出る前に我はもう1つある指示を送った。
侵略にきた連中の中で長い耳の者達は気絶で済ませ、他は全員討ってよしという指示をミケラに与えた。
この指示を出した理由は二つある。
一つは相手によって対応する行動をミケラに学ばせる為。
もう一つは長命で記憶力もあるエルフ族から森の外の今の世界の情報を得る為である。
結果ミケラは見事にハコダンテ軍の装備を着けた者は爪で切り裂き、エルフ達は殴って気絶させるだけで済ませていた。
ちなみに今エルフと一緒に寝かせている蒼髪が似合う人間の副隊長の女性は我がしたことなのでそこはノーカウントにする。
「というわけだから、初陣の評価は百点満点中の五十三点です。」
「みゃーん!?頑張ったのにどうしてそんなに低いんですか!?」
なんて考えていたらエイムが勝手に採点してミケラがショックを受けていた。
「だって不覚を取ってマスターを前に出させたから。これでもかなり譲歩してだからね?次は一人で出来るようにしないとダメだよ。」
見事に先輩風を吹かして理由を伝えてみせたエイムにミケラが落ち込むのを見て我が間に入ってあげた。
「そこまでにしておけエイムよ。ミケラ、さっきも言ったがこのことをしっかり反省して次に活かすのだ。」
「はい!次こそは私一人で出来るように頑張ります!」
耳と尻尾を立てて気合いを見せるミケラに我はうんうんと頷いてから次の行動に移ることにした。
まずはエルフの首に着いている首輪のようなものに【情報開示】を使う。
出てきた名前は〔魔封じの首輪〕と書かれており、どうやら魔法を使おうとすれば首輪から雷属性が発生してダメージを与える仕組みのようだ。
しかも首を跳ねた隊長の着けていた腕輪によって任意に発動させることも出来たらしくまさに虐げる為に作られた道具と言えよう。
(こういう道具は勇者や魔科学者のあいつは嫌っていた発想だったな。)
簡単に魔法を発動させる装置に閃光爆弾だけでなく、奴隷に使う道具も進歩してしまっていることに我はヒト族の業の深さを改めて認識した。
「エイム、この首輪を解析し分解することは可能か?」
「任せて。」
我はエイムに命令して首輪を解析する名目で外してあげることにした。
片手をスライム化させて女性エルフの首輪を包むように取り込むと数秒でボロボロと粒子化されて消えた。
解析からエイムが言うには首輪の素材はこの世界の一般的なもので使われていた魔術も複雑なものではないので複製は余裕だとのこと。
だが我も勇者達と同様に道具を使って虐げるようなことは断固として嫌っているのでエイムに全ての首輪を分解するように指示した。
ついでに暴れて抵抗しないように分解した素材を【再構成】させ手錠を作るとミケラに頼んでエルフ達に装着させる。
それが済んでから十五人いた内の六人の女性エルフを起こす。
目覚めたエルフ達は我とミケラを見るなり悲鳴を上げて後退りしようとしたところをエイムがスライム化した腕を伸ばして六人の腹部に巻きつけて固定する。
「落ち着けエルフ族よ。我はお前達に危害を加える気はない。」
我はエルフ達に一言伝えてからさらに首輪を取り除いてやったことを言えば彼女らははっと自分の首を触ってお互いに見合って確認する。
すると彼女らはすぐ近くまで集めたせいか手錠に繋がれた手を取り合って泣き出してしまった。
よほど首輪から解放されたことが嬉しかったのだろうか、我の方を見ると何度もお礼を言ってきた。
正直これで彼女らが魔法攻撃でもしてきたらきっとエイムが反逆者として始末してしまったかもしれないので我は内心ほっとしてエイムに拘束を解くよう伝えた。
「さてと、まずはお前達に聞きたいことがある。お前達の一団で一番の年長者は誰だ?」
我が尋ねたことにエルフの彼女らは話し合ってから一人が手をあげて言う。
「た、多分ですけどパーサーさんではないかと思います。」
「パーサー?」
出てきた名前に我はどこかで聞いたような気がしたが誰がパーサーかを続けて尋ねれば手をあげたエルフの女性が片手を差し出して五厘頭のエルフの男性を指して伝えてくれた。
男性でも艶やかな長髪を垂らすか後ろに纏める程度に維持するエルフ族にしては珍しい髪型の男性パーサーを我自ら揺さぶって起こしてあげた。
目覚めたパーサーは視界に我の顔を捉えると飛び起きるように身体を起こしてから振り返って再び確認するとしばらく唖然とした表情を見せたが先ほどのエルフ女性とは違った行動を取った。
「まさか半世紀の時を過ぎて再びあなた様に会えるとは夢にも思っておりませんでした。」
パーサーは急に平伏すると地面を見ながら言ってきた。
その声と姿勢に我の記憶からとある一場面が思い出された。
「お主、もしや[灰の一団]のパーサーか?」
「おお、覚えておいていただけていたとは、父も喜びましょう。」
我の口から出た名前を聞いてパーサーは嬉しそうに顔をあげて返す。
[灰の一団]とは今はこの大黒林や他の森に住んでいたエルフ族の集団である。
彼らは森での乱獲や密猟者を処罰して平和を守りながら生活していた。
我がこのパーサーと出会ったのは魔空城建設の折に偵察からの報告で当時の大黒林にいた灰の一団と直接交渉した時である。
確か半世紀前は顔がしゅっとした美青年だったが記憶があるが今は髭が似合う男前な顔つきになっている。
話を戻して灰の一団の長であるパーサーの父と対談した我はそちらが建設の邪魔をしなければこちらは灰の一団と森に一切の被害は出さないという約束を結んだ。
まあ我一人で行こうとしたら威厳を示すべきだと魔族の大団体がついてきてしまって向こうにとっては結ばされたという印象になってないか不安だったが……
ともかく彼なら半世紀の間に何かあったかを知っているはずだ。
「大魔将軍様、私達はあなたが勇者に倒されたと聞いておりましたが?」
「うむ、それについては追々話そう。パーサーよ、お前にエルフ達をまとめ我についてくる任務を与える。」
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ファンタジー
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その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
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