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しおりを挟む「ツヅリ!!」
声の方を向くとモモトセが立っていた。そのまま窓から部屋に入ってきて私の手とカバンを取り施設の外へ連れ出された。
そのまま施設と家の間の小さな公園に連れてこられた。夕方の時間だが今日は誰も遊びに来てなかった。
「なんであの男に触ろうとしてたん?」
怒っている…。初めて見た。顔はマスクとサングラスで見えなかったが雰囲気と声色がそう物語っていた。
「褒めて欲しいって、撫でて欲しいって言われたからしようとしてた。小さい子達にするように」
ここで変に誤魔化すのもおかしいと思い堂々と正直に答えた。
「やからってそんな簡単に他の男を触るのはやめてほしい…」
そう弱々しく言うといつもより強い力で抱きしめられた。まるで触れ合えなかった3日間を埋めるように隙間なく抱きしめてきた。
「…わかった。ごめんね、私が軽率だった。モモトセが嫌だと思うことはしたくないから、やめる」
モモトセは親しい人を取られてヤキモチを妬いているのだろう。でもこの気持ちがただの執着なのか恋愛なのかは判断できなかった。
私が少しモヤモヤした気持ちでいると、頬をすり合わせてきた。
「ふふ、くすぐったい。なにモモトセ?」
「ごめんな、俺寂しかってん。たった3日かもしれへんけどツヅリと2人で過ごす時間が欲しかったんよ。だから帰り道だけでも一緒に帰ろとおもて迎えにいったら…」
モモトセは木の影の方に私を連れてきてまた抱きしめた。
「あんな、俺ツヅリともう少し仲良くなりたいねん」
「…?今も仲良いつもりだけど、もっとってどういうこと?」
「嫌やったら後でなんぼでも怒ってええから少し触らせて」
モモトセはそう言うとマスク越しにキスをしてきた。ちゅっちゅっと啄むように口を吸われた。マスク越しだというのにとても官能的でクラクラした。
「嫌とちゃう…?」
キスの合間にこの行為を続けていいのか聞いてきた。私はもう与えられるキスに頭が支配されて考えることが出来なくなっていた。モモトセは背中に回していた右手を私の頬に持ってきて顔をモモトセの方に向かせた。そして私の耳元でそっと囁いた。
「直接してもえぇ…?」
その仕草と声にもう私は抗えなかった。軽く力が抜けてモモトセに支えられてモモトセは私の返事を待っていた。
「……して、ほしっ……ん」
性急に唇を合わせてきた。先程と同じように啄むようにしてきた。何度も角度を変えて頭を固定されて刺激が強かった。柔らかくて気持ちいい…そういう気持ちで心は支配された。
一通りキスをし終えたがモモトセの目は熱で潤んでおり女を求める顔をしていた。
「なぁ、舌もいれてみてもいい?」
私はあまりにも急速に事が進んでいてパニックになった。所謂供給過多というやつだ。して欲しい気持ちは山々だが、これ以上触られると壊れてしまうのではと怖くなった。
「こらー、モモちゃん。そこまでよ♡」
私はアテニャンさんに後ろから抱きしめられてモモトセと距離を取らせた。
「ここは外でしょ?今はアタシしかいなかったから良かったけど、他の人来たらどうするの?」
「…別に見られてもええもん。悪いことしとるわけやないし」
モモトセは不貞腐れた顔をしてそっぽ向き、外していたマスクを付け直していた。
「でも、ツヅリちゃんの気持ちも考えてあげないと。ここで長く生活していて子供たちのお手本となるような仕事をしているのだから、こういうのは他人に見えるところでしちゃダメよ。ツヅリちゃんが大切なら尚更よ」
アテニャンさんがモモトセにそう注意しても聞く耳を持ってないような態度をとっていた。
「ていうかいつまでツヅリにくっついてんねん!離れて」
「そういうとこよ。モモちゃん。このままだとツヅリちゃんのこと大切にできなさそうねぇ…。大切な2人を引き離すなんて本当はしたくないけどちょっとモモちゃんは一旦距離を置くべきね」
アテニャンさんはどこかに連絡すると近くに常駐しているSPの方2人やってきた。モモトセは2人に捕まえられてそのまま居住区の入り口まで連れて行かれてしまった。
「あの、モモトセは大丈夫なんでしょうか」
「大丈夫、大丈夫!ツヅリちゃん本当にごめんなさいね。ちゃんと見てたつもりだったんだけどいつの間にかいなくなってて、今のモモちゃんはツヅリちゃんに自分の欲求しかぶつけていないように見えるわ。そんなのアタシ悲しい。ツヅリちゃんとモモちゃんにはちゃんと幸せになって欲しいからあと4日しかないけど協力出来ることはするわ♡」
アテニャンさんは美しく優しい動作で私を慰めてくれた。4日後には連れて帰ると言いどこかへ旅立ってしまった。
次の日、ポツンと1人になった家で朝食を食べていた。昨日触れられたのがすごく嬉しかった反面アテニャンさんが言っていたこともわかるのだ。
アテニャンさんから先日聞いたが、アイドルは恋愛禁止で異性との接触をほとんど禁止されているらしい。そこの徹底ぷりはすごく、その代わりに18歳で卒業し、色々解禁になるのだそうだ。
そもそも恋愛をしたことないモモトセにとって初めて親しくなった異性は私で、特別嫌なところは無ければ当然男女の関係になっていくのは自然なことである。恋愛的な好きと錯覚するのもおかしくはない。ここ最近は異常に触りたがっている気がする。
私は明確にモモトセが好きだとわかった。この間のキスでハッキリとしたのだ。好意は最初からあったけど、それは私もよくわからなかった。家族というものを知らないので、まるで家族のように過ごしている事が嬉しくて家族のような特別な感情を抱いているかもしれないと思っていた。
しかし、キスされそうになった時、嫌じゃなかった。実際にマスク越しにキスされた時物足りなかった。直接唇に触れた時、嬉しくて体の中から震えた。
でも……モモトセは、好意を抱いてくれているのはわかる。女性としてみてくれているのもわかる。しかし、それはモモトセが弱っているとこに優しくしたからではないか?とか、飽きたら捨てられるのではという不安な気持ちもよぎっていた。
「今時、告白して付き合うってのも古いのかもしれないけど…モモトセの気持ちが知りたい」
未成熟なモモトセと私の気持ちが育つために必要な時間なのだと言い聞かせてとりあえずは自分のことに専念することにした。
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