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19.
しおりを挟む要点をまとめるとこんな感じであった。以下は敬称略で説明する。
目的
○ハッカイの目的は明確ではないが、いなくなったナナミの行方を探している。ナナミの行方を探すためにモモトセを利用しようとしている。
○コスモとミラーはナナミの行方を探す一方モモトセが犠牲にならないように動いている。
経緯
○ナナミは突然行方不明になる。おそらく亡くなっている。
○ナナミと同じように行方不明になった芸能人が数名いた。
○誘拐した犯人は芸能人を集めている?特に遺伝子組み換えをした人間のみ誘拐している。
○ある程度犯人は絞れており、おそらく遺伝子組み換えをしている病院の研究機関の人間である。
○ハッカイは機会を伺っておりどこかのタイミングで探りを入れようと秘密裏に動いている。
補足
○モモトセの父はハッカイで合っており、ナナミはモモトセの伯父さん。モモトセとナナミはそっくりである。
○モモトセとナナミは遺伝子がほぼ同じ。モモトセのままアイドルをするとナナミほぼそのままになり、相手方の動きが分からない以上、危険があるため声や動きを別人にする必要があった。
「わかりました。でもここに私はどのように関与しているのでしょうか」
そう尋ねるとミラーさんは少し話しにくそうな顔をした。しかしコスモさんは毅然と話をした。
「さっき話した遺伝子組み換えの研究機関に君のお父さんが所属しているんだ」
「お父さん…」
会ったことないお父さんがそんな偉い人だったなんて。それに犯人の候補に上がっている。体の芯が冷えた気がした。
「何人かいるうちの1人だからお父さんが犯人とは決まってないけど、遺伝子組み換え技術を誕生させた第1人者でもあるからハッカイからはかなり強く疑われている」
「そうなんですね…」
「K、話は一旦ここまでにしましょう。モモトセさんが帰ってきました」
ミラーさんが小さな声でそう言うと、玄関の方からドアを開ける音が聞こえた。
「あれ?元マネージャー!久しぶり~。うわぁ、Kやんけ。おまえはよ帰れ」
仕事帰りなのでちょっとおしゃれな服を着ていつもいい匂いをさせて帰ってきていた。
「ツヅリ、ただいま。今からお風呂入るけどええかな?」
「おかえりなさい、モモトセ。お風呂まだ沸かしてないから準備するね」
「いやいや、それくらい自分でやるよ。それより…」
モモトセはミラーさんとコスモさんの方をチラッと見た。ミラーさんは察したのかではそろそろ失礼しますと言ってコスモさんを引きずって帰って行った。
「ツヅリ、明日楽しみやな。俺商業区に遊びに行くの初めてや」
「うん、私も」
私が曇った表情をしていたからか励ますように声をかけてくれた。でも私はさっきのことが気になって仕方なかった。話も途中だったし、デートが終わったらまた続きを聞きたいと思っていた。
「どないしたん?ツヅリ、なんか嫌なことでも言われたん?」
モモトセは私の顔を覗き込むように見てきた。私は慌てて笑顔を作って大したことないと誤魔化した。
「嘘つかんといてほしいわ。俺はツヅリの恋人なんやし頼って欲しい」
モモトセの両手が私の顔を包んだ。それだけで心が癒された。ここに頼ってもいいのだと思わせてくれるような暖かさだった。
「…家族のこと聞いて」
「ツヅリの?」
「うん。私お父さんのこと全く知らなかったんだけど、まさか遺伝子組み換えの研究機関にいたなんて知らなかった」
「そうなんや、でもそんな偉い人がなんでツヅリのことを…」
その先の言葉は続かなかったがかなりにふわりと抱き締められた。
「俺も父親のことあんまり得意じゃないねん。俺に興味なさそうやったしな。生きてても死んでもええって言われてもうたし。こんなんならおってもおらんでも一緒かなって思うこともあるわ」
背中をよしよしと撫でられながらモモトセは優しい声で話を続けた。
「でも俺はツヅリに会えた。大切にしたいと思える人。想いを通じ合える人に出会えたことはホンマに幸せやね。ツヅリが生きてくれてるだけで俺は嬉しい。ありがとう」
泣きそうだった。父がいる事を嬉しいと思った反面、悪いことに手を染めているかもしれない、そしてモモトセを間接的に傷つけるかもしれないという事実がただ悲しかった。
「こんなこと言ってもらえる資格なんて…ない…よ。ごめんね、ごめん」
確証がないから言えないけど、予感はしていた。父はきっと何か関係があると。そうなるともう嫌われてしまうかもしれない。こんな風に穏やかに幸せな時間は過ごせないかもしれない。
それなら、明日は目一杯楽しんでその後にモモトセや私を取り巻いている問題に取り組もうと決心した。
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