婚約者は元アイドル〜まったり過ごすつもりが波瀾万丈⁈〜

こと葉揺

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「うわぁ~綺麗」

 チェックインの手続きはもうインターネットで済ませたのでIDを入力し部屋に入室した。

 部屋は近未来な感じだった。かろうじてトイレのみ隠れているが、それ以外はスケスケでどこにいてもどこからでも見えてしまう部屋の作りだった。


「えらいあからさまな部屋を借りたんやね…ツヅリのお友達」

 モモトセは苦笑いをしていたが、耐えれるかなとボソリと呟いていたのは聞き逃しておいた。

「もうすぐディナーが運ばれてくるって楽しみだなぁ」

 気を紛らわそうと話題を変えた。モモトセは話に乗ってくれた。

「せやねぇ。今日はフレンチのコースやねんて。フレンチもええよなぁ」

「モモトセは和食が好きだよね」

「せやね。生まれたところの文化が和が多い地域やったからね。もう俺らの地域に住んでる人なんてほとんどいなくなってしもたんやけど」

 モモトセは話しながら帽子、サングラス、マスクを順に外していた。顔があらわになる瞬間はつい見惚れてしまっている。

「…そんなに見つめられると照れるねんけど」

 モモトセは少し頬を染めていた。その後は化粧水やら乳液やらで保湿していた。いつも丁寧にケアをしている。

「そういえば、ツヅリは今日いつもと違うメイクでかわいいなぁ。服も見たことないやつやし…もしかしてデートってことでおしゃれしてくれたん?」

「うん…」

 気合を入れてオシャレしてきたものの何も言ってくれなかったので気づいてくれていないものかと思っていた。まぁすねる暇もなく全力で楽しんでしまったのでさっきまで忘れていたのだが。

「嬉しい。俺は毎日かっこよく見えるように努力してるんよ。あんまり言うとカッコ悪いかもしれへんけど、身体鍛えたり、お肌整えたり、ツヅリには良く思われたいから頑張ってるねん」

 モモトセは恥ずかしいのか少し頬をかいていた。

「やからいつものツヅリももちろんかわいいねんけど、オシャレしてるツヅリもまたかわいいなぁって話。同じように意識してくれてるって思ってもええんかな?」

 ちょっといい雰囲気になったところでちょうどディナーの時間になったようで部屋のチャイムが鳴った。
 コース料理がきて、初めてのテーブルマナーにドギマギした。一応知識としては知っているが本当に振る舞いとして合ってるのか不安だった。
 そう私の顔に書いてあったのかモモトセは合っとるでと耳打ちしてくれた。
 料理も終盤にさしかかった頃サプライズで用意していたケーキとプレゼントを準備してモモトセに渡した。


「お誕生日おめでとう、モモトセ。出会って数ヶ月だけどこんなに好きになれた人、一緒にいて楽しい人って初めてで毎日楽しいよ。生まれてきてくれてありがとう」

 そう言うとモモトセはツーッと涙が一筋溢れていた。

「あ、あははごめん。嬉しくて。今まではファンからのプレゼントは事務所がダメって言って貰えてなくて、それ以外からはお察しの通り貰えてなくて、ちょっと感動してしもた」

 モモトセは私の手を取り指先にキスをくれた。その手は離されずずっと繋がれたままだった。

「ごめん、こんなことで。子どもみたいやな。プレゼントも開けてみてもええかな?」


 プレゼントは悩みに悩んだ結果工具セットにしてしまった。実用性重視にしたが、もっとアクセサリーとかの方が喜んだかもしれないとショッピング中に思っていた。

「わぁ嬉しい!これは絶対に使うやつやんね。何個あっても困らへんからね」

 モモトセは喜んでくれたようだ。子どものようにキラキラした顔で道具の一つ一つをじっくりと見つめていた。

「あ、そうや。ここの部屋ツヅリの入りたがってた最新のお風呂やで。良かったら入ってきたら?俺は買ったものとプレゼントを自宅に郵送しに行っとくから。30分後に帰ってくるね」

 そう言って荷物を手に持ち足早に出て行った。先程モモトセに言われた通りにお風呂に入ることにした。一瞬で終わるなら5分ほどでも良かったのではと思ったが、彼なりの配慮なので受け取っておこう。
 洋服を脱ぎ、裸になったところでシャワールームに入る。ボタンがあるのでそこを押してみた。すると一瞬すごい風圧?水圧を感じただけで全て綺麗に洗い終わっていた。

「なにこれ?髪も乾いてる…?てか洗ったの?これ…」

 それくらい早かった。しかし身体からはシャンプーやボディソープのいい香りがしたので確実に洗い終わっている。顔を見てもメイクが落ちすっぴんになっていた。

「すごいけど逆に不安になる…」


 何事も経験だなと痛感した。一瞬で洗い終わってしまったのでホテルに置かれていた浴衣を着てスキンケアをすることにした。

 モモトセ、今日は喜んでくれたかな。
ずっと笑顔で楽しそうだった。なので楽しかったと思いたい。私も最高の1日だった。また出かけたいと思うほどに。

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