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3.王子様の救出
めでたしめでたし
しおりを挟む『シェリア!魔法でうちの姿を人にすることってできない?』
メイドの仕事を終えて城の自室に帰るとまーちゃんがそう頼んできた。
「どうして?」
『だってイチャイチャしたい!デートしたり手を繋ぎたい…』
良かった。イチャイチャしたいと言われて今日の聖女のハーレムを見て嫌な気持ちになったがまーちゃんのイチャイチャは健全であった。
「もしかして、シャルルと気持ちを通じ合わせることができたの?」
そう聞くとテレテレと顔が赤くなっていた。
「良かったね!おめでと!」
私は思わずまーちゃんを抱きしめた。もふもふの毛並みも少し良くなった気がした。
『そういうシェリアはどうなの?』
「ん?」
『ルカといい感じなんじゃないの?ノエ様もシェリアのこと気に入ってそうだったけど、ルカの目が好きだ~ってシェリアのこと見てるもんね。いつも』
え、そうなのか。好きになってもらえる要素なんてない。あぁしてはっきりと好意を告げられてもピンときていなかった。
「私は…好きなのかな…これは恋愛なのかどうかはわかんない」
大切にされていると嬉しい。触られるとドキドキする。でも中身は23歳でも恋愛に関しては未熟だった。それを小説屋漫画などで擬似的にしか体験していないのでこれが恋という気持ちなのかはわからなかった。
『ウチ的にはキスされても嫌じゃなかったら結構もう好きだと思うなぁ…』
「…そうなの?」
『だってルカ以外とキスすること考えてみてよ?どう?』
「………」
そもそも想像がつかなかった。ルカとのキスも必要だからしているのであって、好き同士の人がやるものではないのだ。…なんかモヤモヤする。
「それより!シャルルとうまくいってるってことはハーレム成功したの?」
『うん!ラ・フォア王国の王子はウチの虜でっせ……』
ちょっとその様子を見てみたい。
「肝心のシャルルの魂の件はどうなったの?」
『多分もう元に戻っているはず…ってことはウチも……』
まーちゃんがパタリと倒れた。もしかしてシャルルに入っていたうさぎが戻ってくるのかもしれない。そう思い庭に連れ出して待ってみた。
するとうさぎが目を覚まして、何も離さずそそくさと逃げていった。
「や、やったの…」
とりあえず城の中の聖女を探して回ると、誰かを探してそうな聖女がいた。
恐る恐る近づくと
「シェリア!ウチ元に戻った!」
「…まーちゃん」
嬉しくて抱き合った。良かった。これで一件落着だ。
†
「私は無駄に啖呵を切っただけでまーちゃんが全部解決してくれた…。ありがとう」
「いやいや、いいんだよ。ほらシャルルも元通りだし、これから困っている人たちを助けに行くことにするよ」
「うん、元気で。たまに遊びに来る」
「…私たち表向きは敵同士みたいになっちゃったけど、少しずつ関係は良好ですってして行けたらいいね」
「うん」
私はもう城で仕事をする必要がなくなったのでメイドを辞めて別荘に帰る準備をしていた。
「良かった。間に合った…」
別れの挨拶をしていると息を切らしたルカがやってきた。
「あの、マツリカ様。ラ・フォア王国のマナ不足の調査はリオン王子とやってきたので報告書をご覧ください。俺たちの魔力ではどうにもできなかったので、すみませんがお願いします」
ペコリと頭を下げた。なんだがとても仕事ができる人みたいに見えた。
「任せて。ありがとう。聖典もウチの元に戻ったことだしこの後はみんなが幸せになれるようなお話にするよ。もちろん!ウチが1番幸せになるんだけどね」
「もちろん!幸せの報告待ってるよ」
まーちゃんは輝かしい笑顔で見送ってくれた。ほんとよかった。
†
2人で挨拶して移動魔法で自分家まで帰ってきた。
「シェリアに言っておかないといけない事がある」
「なに?」
「……あの聖女の中に入ってたのはうちの妹だったんだ」
「えっ」
「うちは姉、俺、ノエ、妹って兄弟なんだけど、何ヶ月か前からずっと妹が原因不明の昏睡状態になってて、それを解決するのにノエと俺が色んなところに調査に行ってたんだ」
なるほど、だからあんな辺鄙なところにルカがいたのか。
「で、あの魂の入れ替わり騒動が解決すると目を覚ました。で、暴れ始めてシャルルがどうのとかリオンがどうのと喚き始めている。そこまではよかったんだが……」
ルカは頭を抱えて地面を見た。いや、もう完全に土下座し始めていた。
「本当に申し訳ないんだけど、あることないこと結局のところ全ての原因はシェリアにあるって言い回っているんだ。俺は必死に訂正して回っているが、俺は国での信用度が地の底だ。お察しの通り」
「は、ははは」
やはり私にハッピーエンドなどないのだ。ド気まま女に振り回される人生だった。
「で、シェリアにヘイトが溜まって国民がこちらに向かってきているかもしれん。闇の魔法でここをわかりにくくしてるし、姉さんはシェリアのせいじゃないと言ってくれてはいるんだが……」
「…いや、いいんだ。結局のところわかってくれている人はわかってくれてるんだったら無理に訂正しなくてもいいかな」
そう、あの時の干魃に耐えていた街の人のように。私を大切にしてくれる人だけを大切にしよう。
「だって、ルカはずっと私のそばにいてくれるんでしょ?」
私はそっとルカに抱きついた。ルカの鼓動が速くなった。
「もちろん。どこまでも地獄の底まで。俺のお姫様」
「じゃあそれでいいよ!私最初も言ったけどラスボス憧れてたんだ」
ラスボスっぽくなくただ異世界に来てもだもだしていたら何となく問題が起き、なんとなく解決していたのだ。
「ありがとう……好きだよ」
ルカはちゅっと愛おしむようにキスをしてくれた。
これからは本当のラスボス悪役令嬢として邁進していくしかありませんわ。
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