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3.王子様の救出

恋は人を狂わせる

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 あれから各々自分のやるべきことをやっていた。私は言われた通りルカと共に魔法国・ユグドラシルにやってきていた。

 親にこれまであったことを説明して、ユグドラシルの王に謁見の許可を得てこれまでのことを説明した。

「誰がそうしたのかはわからないが、各国に魔法使いを派遣しよう。それと、彼の件だが…」

 例の土の魔法使いくんは行方をくらましているらしい。一度派遣から帰ってきた時はひどく絶望していたらしい。

「で、シェリアよ。横のルカ王子…ドラゴンはどのようなものなのだ」

 好奇心旺盛な王様がルカの中にいるドラゴンについて触れてきた。

「特には、全属性の魔力があることと、私の別荘は闇の魔力が溜まっていることくらいで特には何も変化はありません」

「そうか…。ドラゴンは本来は世界を漂っている存在だ。本来はきっとそうしておくのがいいのだろうが…。闇のドラゴンしか覚醒していないのならそれは難しいかもしれぬ。それに、2つのドラゴンが覚醒すると世界は一度リセットされる」


 今のところ何も問題はないが、ノエさんも覚醒してしまうといよいよ世界がまずいということなのか。
 元々ノエさんにあった魔力がルカと私に移動しているところを見るに、覚醒は2人同時に行わないといけないと思う。

 なので、問題は特になさそうであると判断した。





 謁見を終え、ユグドラシルの街をルカと歩いていた。私は悪い意味で有名になってしまったため街を歩くと人々は遠巻きにヒソヒソと見てきていた。

 ルカは微塵も気にしていないようだった。まぁ確かにルカはずっとこうだったから慣れっこなのだろう。

 嫌われているのなら玉子ぶつけられたりするのかと思いきや遠巻きに見られているだけだった。
 それなら全くもって大丈夫だった。

「なんか、ユグドラシルは落ち着くな」

「そう?」

 人があまりにも冷たい気がするが、この距離感がいいのだろうか。

「自然は全くもってないのに、魔法使いがたくさんいるからかマナが安定してて心地いい。ずっと住みたい」

 確かにこの辺りは水辺も無いし、植物もない。鉱石のみ取れるのでそういうものを用いて街を作っているので全体的に硬いし、キラキラしていた。


「そういえばマリーはよくわからんことを言ってたな」

「ん?どこが?」

 あの時自分のしたことを全て白状していた。なにか疑問に思うところはあっただろうか。

「土の魔法使いのことが好きなら聖女になった時点で彼をラ・フォア王国に呼ぶなり、結婚するなり出来たはずだ。あんなに意のままに操れていたのに。それをせずに王子たちと戯れていたのはなんでた?」

「確かに…。元の体に戻る可能性も考えて、お遊び感覚でちょっかいを出していたとかなのかな」

「それもありうるが…マリーは誰かの気を引きたい時に違う異性を誘惑してヤキモチを妬かせたがる傾向があるから、どうも土の魔法使いが本命に思えない…。それにマリーは本当に欲しいものを人に言わない。手に入れてから見せびらかす」

「なるほど…。ちょっとその辺りは注意しておかないとだね」

 そんな話をしていると商店街まで来ていた。

「あ、そうだ。せっかくだしラスボスセットかお」

 地元にはお気に入りのブランド店があるのだ。そこでゴシック系の服をたらふく買ってやる。





「あれ、似合っちゃう」

 自分の服を選んだ後にルカにゴシック系の服を着せて遊んでいたら意外と似合っていて驚いた。

 体格も細くも無いが、太くも無いのでそんなに違和感は無かった。
 それに顔が垂れ目のくっきり二重なのでそれが優しげでどこか女性的な感じもあるからか、服と雰囲気がマッチしていた。

「あの、いつものかっこいい服もいいけど、これも買わない?」

「服はなんでもいいけど。動きにくそう」

 まぁそうではある。完全に見た目に振り切っている。

「良ければ機能性も上げたオーダーメイドなどもございますけど、いかがでしょう?」

 そんなふうに洋服を楽しく選んでいると、ものすごい地震が来た。


「何事っ!」

 慌てて外に出るとユグドラシルは暗闇に包まれていた。と、いうか土の壁に覆われていた。

「なに、これ」

 ルカも慌てて外に出てきて辺りを見回していた。

「これは…土の魔法使いの力だ。こんなに広い範囲でできるようになってる」

 どうやらマリーが好きな土の魔法使いことツッニー君の仕業だそうだ。
 あの時計台のてっぺんに禍々しい魔力を放っている彼がいた。

「あそこにツッチー君がいる!連れてってルカ」

「ツッチー君…?」

 私は驚くほど名前を覚えるのが苦手だ。なのでニックネームをつけているのだ。
 ルカはなんとなく土の魔法使いの事を指しているのだと察して特に言及せずに私を彼のもとへ連れて行ってくれた。






「どうして!どうしてぼくはマリーと離されなければならなかったのだっ」

 1人で悲劇に浸っていた。それでこの騒ぎはやばい。魔法陣をあんなに細かく敷き詰めての魔法の展開だからここに帰ってきてから毎日せっせと作っていたのだろう。

「あのう…そういうのは国を巻き込まないでいただきたいのですが……」

「シェリア様…。もしかしてぼくを救い
に来てくれたのですか?ぼくは貴女に淡い恋を抱いていた時もありましたっ…」


 なんか微妙に気持ち悪いなツッチー君。いや全国のツッチー君は気持ち悪く無いです。この土の魔法使いことツッチー君のことです。
 悲劇のヒーローブりたいのか。

 私がドン引いているとルカが目を見開いてツッチー君の頭を掴んでいた。

「なにおまえ如きがシェリアに告白してんだよ。身の程を知れ。というかマリーはどうしたんだよ」

「マリー…あぁマリー…君だけはぼくのことを愛してくれると信じていたのに………」

「いや、だから悲観に浸るのはいいんですけど、あれなんとかしてくれません?」

「………戻し方がわかりません」


 気づいたらツッチー君を殴っていた。このとんでもない事態に頭を抱えていた。





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