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九章 欠けた歴史、欠けた器
31話
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【おもな登場人物】
《ミィラス》
聖ドリード教団で若くして聖典楽師となった、孔雀色の瞳が印象的な青年
《パルラ》
聖ドリード教団に所属する踊り子で、快活で強気な女性
旧き神──の分身──を封じ込めたロケットは、思わぬ副産物だった。
ミィラスはいつものように懐にしまおうとし、ふと、それがかすかに振動していることに気がつく。
手に乗せて観察してみると、じりじりとひとつの方向にロケットが動いていくのが分かる。まるで川底のしじみのようだ。
「もしかしたら、本体のいる方へ引き寄せられているのかもしれない」
ミィラスが言うと、パルラはロケットが向かう方向へ目を向ける。
「それなら、おおむね真西といったところね。このまま向かいましょう。魔物について見聞きした人がいるかもしれないわ」
「たしかに。案内を頼んでも?」
「もちろん。任せて」
パルラが言う途中の町というのはザルバという地で、町そのものは貧しいものの鍛冶が盛んだとのことだった。
町に入ってすぐ、周囲から金属音が響いてきた。道の左右を見れば、両脇に並ぶのはいずれも鍛冶工房であった。開け放たれた戸口の前を通ると、職人たちが金床に鎚を打ちつけている火花が見える。
「賑やかな町だ」
「そうでしょう。都会みたいな人のざわめきっていうより、働く人たちの迫力っていうのかしら」
宿を探す前に広場で休んでいると、荷台を牽いた男たちがぞろぞろとやってきて、大量の荷物を下ろし始める。
「なにかしら」
パルラが怪訝な顔になる。市場が立つには妙な時間であるし、なにより男たちの表情が険しかったからだ。
地面に置かれた筵の中から、金属の光がぎらぎらと漏れた。彼らが運んできたのは大量の武器だったのだ。
「これで全部だな。自警団の分はこっちだ。松明は分散して管理しろ、ひとところにまとめるな」
周囲に指示を出している男は色黒で、片目には眼帯をつけていた。恐らくどこかの工房の親方格だろう。
「まるで戦いの前みたいだわ」
パルラがそう呟いたのが聞こえたのか、男がじろりとこちらを見た。
「あんたたち、見ない顔だな」
「こんにちは」
ミィラスとパルラがお辞儀をすると、その仕草で聖ドリード教団の者だと気づいたのだろう。彼は一瞬戸惑ったあと、やや居住まいを正しながら歩み寄ってきた。
「ドリード神への感謝を……」
男は聖典楽師と踊り子に敬意を払って言い、しかし渋面で二人を見た。
「お早いお着きですな」
「早い……とは?」
顔を見合わせるミィラスとパルラに対し、男はぶつぶつと口の中で何かを言いながら「あなた方は」と表情を改めた。
「ザルバ小聖堂の再建のために来られたのでは?」
聞いたミィラスは驚き、男に尋ねた。
「我々は訳あって旅をしている者です。小聖堂の再建とは?」
どうやら想定していた事情とは違ったようだと気づいた男は、「あれですよ」と、広場の先、町並みの一箇所を指さした。
そちらに視線を向けたミィラスは驚愕した。
ザルバの小聖堂。鍛冶の町らしい灰色の煉瓦とタイル造りの質素な見た目である。聖ドリード教団の紋章をしるした垂れ布が、唯一華やかな色を添えていたのだろう。
だが今はそれもあるべき場所になく、とりあえずといったふうに、崩れた塀の上に引っ掛けられている。その奥に半壊した小聖堂があり、今にも崩れるのではないかと不安に駆られるような傾き方をしていた。落ちた屋根瓦も、破れて穴が空いた壁も、周囲に散乱した煉瓦も、ただごとでない何かが起こったことを示唆していた。
ミィラスは唖然とし、男に向き直った。
「何があったのです?」
尋ねながら、ミィラスの胸にざわめくものがある。これが危惧の通りであるならば──
「もしかして、これらの武器と関係が?」
そのとき、武器の数を数えていた男の一人が「親方!」と叫んだ。
「一本足りません!」
「なんだって?」
男は振り返り「倉庫を確認して来い!」と怒鳴り返した。
「ええ、なんでしたっけ」
男はミィラスに向き直る。
「ああ、小聖堂のあの有様についてでしたな。ほんの数日前ですよ。なんというか、そう、化け物が出ましてね」
「化け物……」
「本当に信じられないことですがね」
親方は苦々しい顔でため息をつく。
「この町は見ての通り鍛冶屋が多い。忌々しいその化け物が暴れたせいで、いくつかの工房が駄目になりましたし、職人が巻き込まれて何人も死にました。他にも女や子ども、年寄りも、化け物の黒い炎に当たった者は……。そのさなか、あの小聖堂も被害を免れませんで」
そのときに神職も犠牲になったのだと言う。もともと人数が少なかったこともあり、小聖堂を再建するには、別の場所から神職を呼び寄せなくてはならなくなった。だから最初、親方は「お早いお着きで」と言ったのだ。
「そう、だったのですか……」
ミィラスは心臓のあたりに生じた痛みに、無意識に手を添えた。
ヴァインの街に次いで、鴉の魔物が人に危害を加えたという明らかな証拠だった。予想されるべき事態だったが、ついに──と胸に氷を差し込まれたような心地がする。
「それじゃあ、ここにある武器ってもしかして」
パルラが言うと、親方はぐっと胸を反らし、腕を組んだ。
「あの化け物が飛び去るとき、声を聞いた者がおりましてな。七日後にまた来る……と。また住人を殺されたり、町をめちゃくちゃにされるわけにはいきませんでしょう。あと三日ある。動ける者は準備を進めています。自分たちの身を守るためだ」
「迎え討つのですか」
ミィラスは身が竦むような気がした。またあの惨劇が起こるのだ。脳裏に白夜城の光景が蘇る。
彼らを止めなければならない。すぐに町から避難するべきだと。
口を開きかけたミィラスの袖が引かれた。隣を見ると、パルラが視線を前に向けたまま、法衣を引っ張っているのだった。
「ああそうだ。せっかく教団の方が来てくださったんだ。我々に祝福を授けていただけませんか」
親方が言った言葉に、周囲の者が顔を上げてこちらを見てくる。彼らの血気盛んな顔には、死と破壊に対する憤りと不撓の覚悟が見られた。普段は火床の前でふいごや鎚を握っているであろう彼らは、その逞しい手に今は武器を握りしめ、仇討ちの日を待ち構えているのだ。
ミィラスは、喉元まで出かかった言葉を飲み込むと、パルラに言う。
「パルラ、君に舞を頼みたい。この町の人がドリード神の加護を授かるように、使う道具に英気を宿す儀式にしよう」
その言葉にパルラは頷いた。〝聖典の詩〟を失っているミィラスの代わりに、踊り子の舞踊による儀式を行うのだ。
広場には鍛冶職人を中心に男達が輪を作った。その外側から女子どもが窺うように眺めている。
増えていく人だかりにじっと視線を注ぎながら、ミィラスは考えていた。
彼らの顔に浮かぶ不安の色。自分たちにはそれを晴らしてやることなどできない。壊された町を元通りにしてやることも、失われた命を引き戻してやることも。
聖典楽師の、ドリード神に仕える者の務めとはなんだ?
神の教えを学んでも、ドリード神は常に天上界にあり、地に生きる人々とともにある自分たちはその声を聞くこともなく、神の望みすら知らない。
此岸の川辺でリィンが言っていた言葉を思い出す。
『私は結局、神の教えの真髄に至ることはできなかった』と。
かの者ほどの聖典楽師でさえ会得できなかったものを、果たして自分が見つけられるだろうか。『真理』もまた、そこにはあるのだろうか。
群衆のざわめきが聞こえる。そこにいる人々の、様々な視線が、ミィラスやパルラに向けられている。彼らの息づかいがしんしんと身に染みる。
ミィラスは一度目を閉じ、頭上から注ぐ光と、足許に落ちる影、その間で呼吸をする自分自身に集中した。
己が目よ、曇ることなかれ。真理の光を求めても、その輝きに眩むことなく、盲目となって深淵の闇に囚われることもなく、歩むべき道のみを示し給え。
ミィラスは竪琴を構え、パルラの準備が終わるのを待った。彼女は小聖堂の瓦礫の中から、わずかな香灰を集めてきて、広場の地面に撒き、さらに自身と集められた武器の上にも振りかけて清めていた。
最後にパルラが装束の裾をぱっとはらうと、日焼けした腕が踊り子特有の長い袖に覆われて見えなくなる。
ミィラスは弦に優しく指をかけ、最初の音をつま弾いた。
澄んだ音色が、瀞々と、凜々と、こぼれ出す。
群衆のあちこちから、ほうとため息が上がった。
小聖堂から時折聞こえていた音楽とは、また少し違うようだと人々は思った。
朗々と響く人の声のようでいて、まるで夜明けに開く花のつぼみが弾ける音、焚き火の爆ぜる音、軒先から雨だれの落ちる音、そういったささやかで取るに足らない──しかしいずれも知っている音がより合わさったような、そんな音色だった。
《ミィラス》
聖ドリード教団で若くして聖典楽師となった、孔雀色の瞳が印象的な青年
《パルラ》
聖ドリード教団に所属する踊り子で、快活で強気な女性
旧き神──の分身──を封じ込めたロケットは、思わぬ副産物だった。
ミィラスはいつものように懐にしまおうとし、ふと、それがかすかに振動していることに気がつく。
手に乗せて観察してみると、じりじりとひとつの方向にロケットが動いていくのが分かる。まるで川底のしじみのようだ。
「もしかしたら、本体のいる方へ引き寄せられているのかもしれない」
ミィラスが言うと、パルラはロケットが向かう方向へ目を向ける。
「それなら、おおむね真西といったところね。このまま向かいましょう。魔物について見聞きした人がいるかもしれないわ」
「たしかに。案内を頼んでも?」
「もちろん。任せて」
パルラが言う途中の町というのはザルバという地で、町そのものは貧しいものの鍛冶が盛んだとのことだった。
町に入ってすぐ、周囲から金属音が響いてきた。道の左右を見れば、両脇に並ぶのはいずれも鍛冶工房であった。開け放たれた戸口の前を通ると、職人たちが金床に鎚を打ちつけている火花が見える。
「賑やかな町だ」
「そうでしょう。都会みたいな人のざわめきっていうより、働く人たちの迫力っていうのかしら」
宿を探す前に広場で休んでいると、荷台を牽いた男たちがぞろぞろとやってきて、大量の荷物を下ろし始める。
「なにかしら」
パルラが怪訝な顔になる。市場が立つには妙な時間であるし、なにより男たちの表情が険しかったからだ。
地面に置かれた筵の中から、金属の光がぎらぎらと漏れた。彼らが運んできたのは大量の武器だったのだ。
「これで全部だな。自警団の分はこっちだ。松明は分散して管理しろ、ひとところにまとめるな」
周囲に指示を出している男は色黒で、片目には眼帯をつけていた。恐らくどこかの工房の親方格だろう。
「まるで戦いの前みたいだわ」
パルラがそう呟いたのが聞こえたのか、男がじろりとこちらを見た。
「あんたたち、見ない顔だな」
「こんにちは」
ミィラスとパルラがお辞儀をすると、その仕草で聖ドリード教団の者だと気づいたのだろう。彼は一瞬戸惑ったあと、やや居住まいを正しながら歩み寄ってきた。
「ドリード神への感謝を……」
男は聖典楽師と踊り子に敬意を払って言い、しかし渋面で二人を見た。
「お早いお着きですな」
「早い……とは?」
顔を見合わせるミィラスとパルラに対し、男はぶつぶつと口の中で何かを言いながら「あなた方は」と表情を改めた。
「ザルバ小聖堂の再建のために来られたのでは?」
聞いたミィラスは驚き、男に尋ねた。
「我々は訳あって旅をしている者です。小聖堂の再建とは?」
どうやら想定していた事情とは違ったようだと気づいた男は、「あれですよ」と、広場の先、町並みの一箇所を指さした。
そちらに視線を向けたミィラスは驚愕した。
ザルバの小聖堂。鍛冶の町らしい灰色の煉瓦とタイル造りの質素な見た目である。聖ドリード教団の紋章をしるした垂れ布が、唯一華やかな色を添えていたのだろう。
だが今はそれもあるべき場所になく、とりあえずといったふうに、崩れた塀の上に引っ掛けられている。その奥に半壊した小聖堂があり、今にも崩れるのではないかと不安に駆られるような傾き方をしていた。落ちた屋根瓦も、破れて穴が空いた壁も、周囲に散乱した煉瓦も、ただごとでない何かが起こったことを示唆していた。
ミィラスは唖然とし、男に向き直った。
「何があったのです?」
尋ねながら、ミィラスの胸にざわめくものがある。これが危惧の通りであるならば──
「もしかして、これらの武器と関係が?」
そのとき、武器の数を数えていた男の一人が「親方!」と叫んだ。
「一本足りません!」
「なんだって?」
男は振り返り「倉庫を確認して来い!」と怒鳴り返した。
「ええ、なんでしたっけ」
男はミィラスに向き直る。
「ああ、小聖堂のあの有様についてでしたな。ほんの数日前ですよ。なんというか、そう、化け物が出ましてね」
「化け物……」
「本当に信じられないことですがね」
親方は苦々しい顔でため息をつく。
「この町は見ての通り鍛冶屋が多い。忌々しいその化け物が暴れたせいで、いくつかの工房が駄目になりましたし、職人が巻き込まれて何人も死にました。他にも女や子ども、年寄りも、化け物の黒い炎に当たった者は……。そのさなか、あの小聖堂も被害を免れませんで」
そのときに神職も犠牲になったのだと言う。もともと人数が少なかったこともあり、小聖堂を再建するには、別の場所から神職を呼び寄せなくてはならなくなった。だから最初、親方は「お早いお着きで」と言ったのだ。
「そう、だったのですか……」
ミィラスは心臓のあたりに生じた痛みに、無意識に手を添えた。
ヴァインの街に次いで、鴉の魔物が人に危害を加えたという明らかな証拠だった。予想されるべき事態だったが、ついに──と胸に氷を差し込まれたような心地がする。
「それじゃあ、ここにある武器ってもしかして」
パルラが言うと、親方はぐっと胸を反らし、腕を組んだ。
「あの化け物が飛び去るとき、声を聞いた者がおりましてな。七日後にまた来る……と。また住人を殺されたり、町をめちゃくちゃにされるわけにはいきませんでしょう。あと三日ある。動ける者は準備を進めています。自分たちの身を守るためだ」
「迎え討つのですか」
ミィラスは身が竦むような気がした。またあの惨劇が起こるのだ。脳裏に白夜城の光景が蘇る。
彼らを止めなければならない。すぐに町から避難するべきだと。
口を開きかけたミィラスの袖が引かれた。隣を見ると、パルラが視線を前に向けたまま、法衣を引っ張っているのだった。
「ああそうだ。せっかく教団の方が来てくださったんだ。我々に祝福を授けていただけませんか」
親方が言った言葉に、周囲の者が顔を上げてこちらを見てくる。彼らの血気盛んな顔には、死と破壊に対する憤りと不撓の覚悟が見られた。普段は火床の前でふいごや鎚を握っているであろう彼らは、その逞しい手に今は武器を握りしめ、仇討ちの日を待ち構えているのだ。
ミィラスは、喉元まで出かかった言葉を飲み込むと、パルラに言う。
「パルラ、君に舞を頼みたい。この町の人がドリード神の加護を授かるように、使う道具に英気を宿す儀式にしよう」
その言葉にパルラは頷いた。〝聖典の詩〟を失っているミィラスの代わりに、踊り子の舞踊による儀式を行うのだ。
広場には鍛冶職人を中心に男達が輪を作った。その外側から女子どもが窺うように眺めている。
増えていく人だかりにじっと視線を注ぎながら、ミィラスは考えていた。
彼らの顔に浮かぶ不安の色。自分たちにはそれを晴らしてやることなどできない。壊された町を元通りにしてやることも、失われた命を引き戻してやることも。
聖典楽師の、ドリード神に仕える者の務めとはなんだ?
神の教えを学んでも、ドリード神は常に天上界にあり、地に生きる人々とともにある自分たちはその声を聞くこともなく、神の望みすら知らない。
此岸の川辺でリィンが言っていた言葉を思い出す。
『私は結局、神の教えの真髄に至ることはできなかった』と。
かの者ほどの聖典楽師でさえ会得できなかったものを、果たして自分が見つけられるだろうか。『真理』もまた、そこにはあるのだろうか。
群衆のざわめきが聞こえる。そこにいる人々の、様々な視線が、ミィラスやパルラに向けられている。彼らの息づかいがしんしんと身に染みる。
ミィラスは一度目を閉じ、頭上から注ぐ光と、足許に落ちる影、その間で呼吸をする自分自身に集中した。
己が目よ、曇ることなかれ。真理の光を求めても、その輝きに眩むことなく、盲目となって深淵の闇に囚われることもなく、歩むべき道のみを示し給え。
ミィラスは竪琴を構え、パルラの準備が終わるのを待った。彼女は小聖堂の瓦礫の中から、わずかな香灰を集めてきて、広場の地面に撒き、さらに自身と集められた武器の上にも振りかけて清めていた。
最後にパルラが装束の裾をぱっとはらうと、日焼けした腕が踊り子特有の長い袖に覆われて見えなくなる。
ミィラスは弦に優しく指をかけ、最初の音をつま弾いた。
澄んだ音色が、瀞々と、凜々と、こぼれ出す。
群衆のあちこちから、ほうとため息が上がった。
小聖堂から時折聞こえていた音楽とは、また少し違うようだと人々は思った。
朗々と響く人の声のようでいて、まるで夜明けに開く花のつぼみが弾ける音、焚き火の爆ぜる音、軒先から雨だれの落ちる音、そういったささやかで取るに足らない──しかしいずれも知っている音がより合わさったような、そんな音色だった。
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