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十章 神々の系譜
41話
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【主な登場人物】
《ミィラス》
聖ドリード教団で若くして聖典楽師となった、孔雀色の瞳が印象的な青年
《アシェラ》
ベトラ・スーム選王候の妻で、美貌の女性
《ベトラ・スーム選王候》
カミル香国の西側領土の統治者
アシェラは眼下にある町の、人々の顔をぼんやりと眺めていた。もはや彼女には人と建物の区別もなく、これから黒い炎に灼かれ、凍りつかされるだけの存在に過ぎなかった。
黒い巨体が大きく羽ばたく。上空の空気は冷たく、体温を否が応でも奪っていくが、凍えることはなかった。アシェラの手の肉は溶けて、羽毛の下の醜い肉塊と一体化している。そこから彼女を殺さないための温もりが送り込まれてくるのだ。同時に、醜悪な神の、胸を灼き焦がす怒りや絶望が、つながった肉体を通して彼女にも流れ込み、血と泥が混ざったかのような感覚をもたらした。
嘴の無い口で、歯をガチガチと鳴らしながら、おぞましい冥府の神は炎を吐いた。
そうすると、アシェラの肉体を貫くように痛みが走る。しかしその痛みは、彼女にとって唯一の〝他者〟と共有できた感覚であり、誰かと繋がるという実感であった。
* * *
かつてベトラ・スーム選王候が西翼領の辺境を視察したとき、彼女はキアル山の奥地で暮らす少数民族の少女に過ぎなかった。
彼らは血が絶えるのも目前であり、アシェラの両親と数少ない親戚を除けば同胞はほとんどいなかった。少女はおよそ〝他人〟というものに馴染みがなかった。それでも山奥で狩りをし、川や森から恵みを受けて暮らす生活に満足していた。
そこに突然現れた男は、アシェラにとって未知そのものだった。
男にとっても、アシェラは不思議な存在に思えたらしい。
「私とともに、来てくれないか」
西翼領のヴァインという街で暮らしているという男は、少女には夢のように思えた。彼はかなり年上であったが、明るく紳士的であり、何でもよく知っていた。聞けば何でも答えてくれた。
それが恋というのならば、そうだったのだろうが、少女には憧れとの区別がつかなかった。
「ここがヴァインの街だ。豊かで素晴らしい場所だ」
夫となった彼の言葉通り、その街は輝いて見え、あらゆる物や人が行き交い、少女の心を躍らせた。しかも周囲の者たちは、みな恭しく接してくる。アシェラは生まれて初めて「特別」というものを知り、自分がそれであることを知った。
様変わりした生活に慣れようと色々なものに興味を示し、同時に「領主夫人」とやらの振る舞いを覚える努力をした。
どうやら自分に妙な性質があるようだと気づいたのは、少し経ってからだった。
たとえば類い稀な蒼玉の瞳。たとえば青みを持った黒髪。たとえば肌全体にまとう、他者の視線を吸い寄せるような艶。鏡を見れば、余人の言う「美しい」とやらがそれにあたるのだろうと思った。だがそれだけではなかった。
彼女には、他者を取り込む魅力があったが、反対に他の人間と同じ気持ちや、感覚になるということができなかった。
「領主夫人は、少し妙な御方だ」
誰かがそう言っているのが聞こえると、きっとそうなのだろうとアシェラは思った。
生まれ育った文化の違いだけではない。
人の痛みや喜びや、悲しみなどといったものを、彼女は理解できなかった。
夫のベトラ・スーム候は、そんな妻の少し変わった特徴を、大きな問題だとは捉えていなかった。彼は本当に彼女を愛していたのだし、まだ若い娘であるからと、妻自身がこれから成熟していくこともあるはずだと思っていた。
しかし、アシェラは夫のそのような思いやりも理解できなかった。
どうやら、夫を含めた周囲の者はドリード神という存在を信仰していて、生活規範もその神とやらに従っているらしい。その規範からすると自分は異物なのだ、と悟った。
ならばと試しに聖典を読んでみたものの、到底彼女には理解できず、読める範囲で理解できた内容は大変窮屈で、わざと人間を締め付ける枷のように思えた。
ベトラ・スーム候は妻の様子を見守っており、無理に礼拝を強いることはしなかった。自らは自室でひとり祈りを捧げ、白夜城の歴史ある礼拝室はしばらく使わないことにした。
アシェラはしかし、孤独感に苛まれるようになった。夫が優しければ優しいだけ苦しみは募った。少女には理解できぬ優しさが、いっそ気味が悪かったくらいだ。
礼拝室が使われなくなったことで、必然的に無人の空間になった。使用人も誰もいない場所がそこしかなく、アシェラは時々そこに隠れていた。祭壇の上のドリード神像を恨めしく見上げながら。
『可哀想な娘。私と話をしよう』
そんな声がしたのは、礼拝室の下に隠された地下からだった。
氷室への入り口を見つけたアシェラは、声に導かれるまま、暗闇の中へ降りていった。
アシェラに語りかけた冥府の神は、彼女の孤独に寄り添った。その声を聞いているだけで、彼女の心にじわじわと新たな感覚が生まれた。
冥府の神は、その闇の触手でもって、アシェラの心に感情を直接流し込んだ。
それまで灰色にぼやけていたものが、突如として色鮮やかに、アシェラの中で像を結ぶ。
「これが、他の人の〝気持ち〟……!」
アシェラにとっては、知りたくても知ることが出来なかった感覚を、初めて知った出来事であった。
『私ともっと仲良くなろう。そうすれば、もっと知ることができる』
こうして、アシェラは冥府の神に取り込まれたのだった。
封印された神の傀儡となっても、アシェラにとってただ一つの実感を伴った感覚に溺れることは心地よかった。
やがて白夜城にやってきた若い聖典楽師が、その身のうちに綺麗な星を宿しているのを見たとき、冥府の神は『あれはお前のものだ』と囁いた。
欲しい。あの星が。
その実、それは冥府の神の渇望であり、アシェラはそれを自身の感覚として知覚していたに過ぎなかった。
やがてその青年──ミィラスから、ドリード神の教えや聖典について学ぶことになった。必要なことだと彼は言ったし、夫もそのように思っているようだ。ならば、学ばなければならないのだろう。
だが今度は心強い味方がいた。彼女と繋がる冥府の神が、聖典というものの読み方を耳元で囁いてくれたのだ。そうすると、ミィラスの授業の内容もよく理解できた。
ああ、分かるということは、嬉しいことだ。
彼──ミィラスのことも、もっとよく知りたい、あの星の輝きを手に入れたい。
幸いにも、自分には人を虜にする美しさがある。きっと彼もこの手の中に落ちてくるはず。
だが、彼は常にアシェラと一線を引いて距離を保ったまま、手の届かない場所で星の輝きを見せつけ続けた。
彼が少なからず、自分に惹かれているのは明らかであるにもかかわらず、「アシェラには近づかない」という彼の意思があった。
どうにもそれが苦しかった。
冥府の神は、それが恋だと言った。
しかし夫とはどう違うのだろう?
『そんなことでお前が苦しむのは可哀想だ。だがお前が望むならば、あの男を手に入れられるだろう。手に入れてから、考えればよい』
そう言われて、アシェラは嬉しかった。
夜の影となって忍び込み、そこで眠っているミィラスを見たとき、なんて美しい青年だろうかと思った。自分の持つ美しさとは違う。それも中に宿る星のせいなのだろうか? ああ、この星を飲み込みたい。かき乱して、この青年を台無しにしてしまいたい。
彼の肌に触れ、接吻から溶け合うように、アシェラは一度ミィラスと一つになり、緩んだ境界の中にたゆたった。肌触りの良い布にくるまれたような、日向の草原に埋もれてそよ風を浴びるような。
ああ、彼の世界は暖かくて優しい。こんな世界を隠し持っていたなんて。
許せない。
星を奪い取り、目論み通り、青年は台無しになった。愉快だった。この星は彼女に力と愉悦を与えた。この星は途方も無い数の〝言葉〟だった。魔法だ。祝福だ。快楽だ。聖典楽師はこの〝言葉〟を用いて人々の心に響かせる。ならば、人の心を知らぬ私にも、ようやくこの〝言葉〟によって、心というものを理解することができるはず!
ああ、なんて心地いいの。
白夜城で冥府の神を復活させ、人々を、夫を殺した。黒い炎は冷たく、命をいとも簡単にかき消した。
しかしミィラスが、星を奪い取ってやった聖典楽師のなれの果てが、なぜか炎で死ぬことはなかった。
どうして?
彼女は彼の孔雀色の瞳を見る。
瓦礫の中で、深い絶望で見つめ返してくる彼が、やはり美しくそこにいた。
* * *
眼下の町で、武器を構えた人々が自分たちを睨んでいる。
神は嘲笑った。
無駄なことだ。無力な人間が、憐れにも小さな武器を構え、その二本足がくずおれるとも知らず、立ち向かおうとしている。
神は冷たい炎を人々に向かって吐き出した。
この地は、かつては冥府の神の支配地であり、忌まわしいドリード神のものではない。返せ、そうでないなら死ね。
だが、冥府の神にとって予想外のことが起こった。黒い炎に巻かれた人々は、咳き込みはするが死にはしなかったのだ。
馬鹿な!
我の純然たる死の炎に触れて無事でいるなど、あり得ない!
かっと潰れた目を見開いて見下ろすと、風に翻る法衣が見えた。
朝焼け色の髪を乱れさせ、揺るぎなくこちらを射貫く孔雀色の瞳の男。その手に握られた黄金の二枚貝。その中に己の分身が封じられているのを見て、神は驚愕した。
おのれ──!
神は激怒し、町に向かって急降下した。
《ミィラス》
聖ドリード教団で若くして聖典楽師となった、孔雀色の瞳が印象的な青年
《アシェラ》
ベトラ・スーム選王候の妻で、美貌の女性
《ベトラ・スーム選王候》
カミル香国の西側領土の統治者
アシェラは眼下にある町の、人々の顔をぼんやりと眺めていた。もはや彼女には人と建物の区別もなく、これから黒い炎に灼かれ、凍りつかされるだけの存在に過ぎなかった。
黒い巨体が大きく羽ばたく。上空の空気は冷たく、体温を否が応でも奪っていくが、凍えることはなかった。アシェラの手の肉は溶けて、羽毛の下の醜い肉塊と一体化している。そこから彼女を殺さないための温もりが送り込まれてくるのだ。同時に、醜悪な神の、胸を灼き焦がす怒りや絶望が、つながった肉体を通して彼女にも流れ込み、血と泥が混ざったかのような感覚をもたらした。
嘴の無い口で、歯をガチガチと鳴らしながら、おぞましい冥府の神は炎を吐いた。
そうすると、アシェラの肉体を貫くように痛みが走る。しかしその痛みは、彼女にとって唯一の〝他者〟と共有できた感覚であり、誰かと繋がるという実感であった。
* * *
かつてベトラ・スーム選王候が西翼領の辺境を視察したとき、彼女はキアル山の奥地で暮らす少数民族の少女に過ぎなかった。
彼らは血が絶えるのも目前であり、アシェラの両親と数少ない親戚を除けば同胞はほとんどいなかった。少女はおよそ〝他人〟というものに馴染みがなかった。それでも山奥で狩りをし、川や森から恵みを受けて暮らす生活に満足していた。
そこに突然現れた男は、アシェラにとって未知そのものだった。
男にとっても、アシェラは不思議な存在に思えたらしい。
「私とともに、来てくれないか」
西翼領のヴァインという街で暮らしているという男は、少女には夢のように思えた。彼はかなり年上であったが、明るく紳士的であり、何でもよく知っていた。聞けば何でも答えてくれた。
それが恋というのならば、そうだったのだろうが、少女には憧れとの区別がつかなかった。
「ここがヴァインの街だ。豊かで素晴らしい場所だ」
夫となった彼の言葉通り、その街は輝いて見え、あらゆる物や人が行き交い、少女の心を躍らせた。しかも周囲の者たちは、みな恭しく接してくる。アシェラは生まれて初めて「特別」というものを知り、自分がそれであることを知った。
様変わりした生活に慣れようと色々なものに興味を示し、同時に「領主夫人」とやらの振る舞いを覚える努力をした。
どうやら自分に妙な性質があるようだと気づいたのは、少し経ってからだった。
たとえば類い稀な蒼玉の瞳。たとえば青みを持った黒髪。たとえば肌全体にまとう、他者の視線を吸い寄せるような艶。鏡を見れば、余人の言う「美しい」とやらがそれにあたるのだろうと思った。だがそれだけではなかった。
彼女には、他者を取り込む魅力があったが、反対に他の人間と同じ気持ちや、感覚になるということができなかった。
「領主夫人は、少し妙な御方だ」
誰かがそう言っているのが聞こえると、きっとそうなのだろうとアシェラは思った。
生まれ育った文化の違いだけではない。
人の痛みや喜びや、悲しみなどといったものを、彼女は理解できなかった。
夫のベトラ・スーム候は、そんな妻の少し変わった特徴を、大きな問題だとは捉えていなかった。彼は本当に彼女を愛していたのだし、まだ若い娘であるからと、妻自身がこれから成熟していくこともあるはずだと思っていた。
しかし、アシェラは夫のそのような思いやりも理解できなかった。
どうやら、夫を含めた周囲の者はドリード神という存在を信仰していて、生活規範もその神とやらに従っているらしい。その規範からすると自分は異物なのだ、と悟った。
ならばと試しに聖典を読んでみたものの、到底彼女には理解できず、読める範囲で理解できた内容は大変窮屈で、わざと人間を締め付ける枷のように思えた。
ベトラ・スーム候は妻の様子を見守っており、無理に礼拝を強いることはしなかった。自らは自室でひとり祈りを捧げ、白夜城の歴史ある礼拝室はしばらく使わないことにした。
アシェラはしかし、孤独感に苛まれるようになった。夫が優しければ優しいだけ苦しみは募った。少女には理解できぬ優しさが、いっそ気味が悪かったくらいだ。
礼拝室が使われなくなったことで、必然的に無人の空間になった。使用人も誰もいない場所がそこしかなく、アシェラは時々そこに隠れていた。祭壇の上のドリード神像を恨めしく見上げながら。
『可哀想な娘。私と話をしよう』
そんな声がしたのは、礼拝室の下に隠された地下からだった。
氷室への入り口を見つけたアシェラは、声に導かれるまま、暗闇の中へ降りていった。
アシェラに語りかけた冥府の神は、彼女の孤独に寄り添った。その声を聞いているだけで、彼女の心にじわじわと新たな感覚が生まれた。
冥府の神は、その闇の触手でもって、アシェラの心に感情を直接流し込んだ。
それまで灰色にぼやけていたものが、突如として色鮮やかに、アシェラの中で像を結ぶ。
「これが、他の人の〝気持ち〟……!」
アシェラにとっては、知りたくても知ることが出来なかった感覚を、初めて知った出来事であった。
『私ともっと仲良くなろう。そうすれば、もっと知ることができる』
こうして、アシェラは冥府の神に取り込まれたのだった。
封印された神の傀儡となっても、アシェラにとってただ一つの実感を伴った感覚に溺れることは心地よかった。
やがて白夜城にやってきた若い聖典楽師が、その身のうちに綺麗な星を宿しているのを見たとき、冥府の神は『あれはお前のものだ』と囁いた。
欲しい。あの星が。
その実、それは冥府の神の渇望であり、アシェラはそれを自身の感覚として知覚していたに過ぎなかった。
やがてその青年──ミィラスから、ドリード神の教えや聖典について学ぶことになった。必要なことだと彼は言ったし、夫もそのように思っているようだ。ならば、学ばなければならないのだろう。
だが今度は心強い味方がいた。彼女と繋がる冥府の神が、聖典というものの読み方を耳元で囁いてくれたのだ。そうすると、ミィラスの授業の内容もよく理解できた。
ああ、分かるということは、嬉しいことだ。
彼──ミィラスのことも、もっとよく知りたい、あの星の輝きを手に入れたい。
幸いにも、自分には人を虜にする美しさがある。きっと彼もこの手の中に落ちてくるはず。
だが、彼は常にアシェラと一線を引いて距離を保ったまま、手の届かない場所で星の輝きを見せつけ続けた。
彼が少なからず、自分に惹かれているのは明らかであるにもかかわらず、「アシェラには近づかない」という彼の意思があった。
どうにもそれが苦しかった。
冥府の神は、それが恋だと言った。
しかし夫とはどう違うのだろう?
『そんなことでお前が苦しむのは可哀想だ。だがお前が望むならば、あの男を手に入れられるだろう。手に入れてから、考えればよい』
そう言われて、アシェラは嬉しかった。
夜の影となって忍び込み、そこで眠っているミィラスを見たとき、なんて美しい青年だろうかと思った。自分の持つ美しさとは違う。それも中に宿る星のせいなのだろうか? ああ、この星を飲み込みたい。かき乱して、この青年を台無しにしてしまいたい。
彼の肌に触れ、接吻から溶け合うように、アシェラは一度ミィラスと一つになり、緩んだ境界の中にたゆたった。肌触りの良い布にくるまれたような、日向の草原に埋もれてそよ風を浴びるような。
ああ、彼の世界は暖かくて優しい。こんな世界を隠し持っていたなんて。
許せない。
星を奪い取り、目論み通り、青年は台無しになった。愉快だった。この星は彼女に力と愉悦を与えた。この星は途方も無い数の〝言葉〟だった。魔法だ。祝福だ。快楽だ。聖典楽師はこの〝言葉〟を用いて人々の心に響かせる。ならば、人の心を知らぬ私にも、ようやくこの〝言葉〟によって、心というものを理解することができるはず!
ああ、なんて心地いいの。
白夜城で冥府の神を復活させ、人々を、夫を殺した。黒い炎は冷たく、命をいとも簡単にかき消した。
しかしミィラスが、星を奪い取ってやった聖典楽師のなれの果てが、なぜか炎で死ぬことはなかった。
どうして?
彼女は彼の孔雀色の瞳を見る。
瓦礫の中で、深い絶望で見つめ返してくる彼が、やはり美しくそこにいた。
* * *
眼下の町で、武器を構えた人々が自分たちを睨んでいる。
神は嘲笑った。
無駄なことだ。無力な人間が、憐れにも小さな武器を構え、その二本足がくずおれるとも知らず、立ち向かおうとしている。
神は冷たい炎を人々に向かって吐き出した。
この地は、かつては冥府の神の支配地であり、忌まわしいドリード神のものではない。返せ、そうでないなら死ね。
だが、冥府の神にとって予想外のことが起こった。黒い炎に巻かれた人々は、咳き込みはするが死にはしなかったのだ。
馬鹿な!
我の純然たる死の炎に触れて無事でいるなど、あり得ない!
かっと潰れた目を見開いて見下ろすと、風に翻る法衣が見えた。
朝焼け色の髪を乱れさせ、揺るぎなくこちらを射貫く孔雀色の瞳の男。その手に握られた黄金の二枚貝。その中に己の分身が封じられているのを見て、神は驚愕した。
おのれ──!
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