【完結】ココ、ついてますよ

赤猫@alice

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第一章

翔子とハク様の物語

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「ウチの神社に祀られている白龍のハク様。ハク様のお力によりこの街は昔から様々な災害や厄災から守られてきたんじゃ。ハク様も【白龍】と言われる様に本来のお姿は龍なのじゃよ。儂らも真のお姿である完全なる龍の姿は見たことがないのじゃが、代々引き継がれている巻物にはそれはそれは立派な龍のお姿が描かれておる。

では、なぜハク様は今、蛇の姿であられるのか。白龍様の鱗には不思議な力が宿っており、疫病などが流行った時代には白龍様がご自分の鱗を一枚剥がし疫病が鎮まる事を願うと、たちまち疫病は広まりを止め、更に一枚鱗を剥がし疫病に罹った者の回復を願えば疫病に罹ってしまった者たちも回復へと向かっていく。その様にハク様はご自分の鱗を一枚一枚剥がし、願いを込め、ご自分を犠牲にしながらもこの街を守ってくれていたのじゃ」

「ハク様はとても優しい神様なんですね」

「うむ。ただ、剥がした鱗は自然と生えてくるものではないので、ハク様はご自分の鱗を失うばかり……。厄災や災害が起こるたびに鱗を剥がしていったため、鱗が無くなり今の様な蛇のお姿になってしまわれたんじゃ」

「なるほど……。ハク様の首元に一枚だけあるのもウロコですか?ハート型の様な花びらが一枚だけついている様にも見えるのですが、花びらの様に見えているのは私だけなんですよね。皆さんには首元に光の玉が視えているのでしょうか?……首元のあれも、ハク様の【ウロコ】?」

「ほぉ……。翔子さんにはコレも視えておるのか。やはり巫女の力がなかなか強く流れているとみえるな」

「そうだね、俺たちには首の下に光の玉が光ってる様に視えるよ。ハート型って事はこういう向きについてるってこと?」

そう言って空中にハトマークを描くカケルに頷く翔子。

「翔子さんは沢山本を読んでおられるようじゃが、【逆鱗】と言う言葉の語源を知っておるかな?」

「【逆鱗】……ですか。確か、こちらも語源は【龍】に関係するものだったとは思いますが、詳しくは知りません」

「ふむ。龍には八十一の鱗があると言われており、そのうち一枚だけ逆さまにのど元に生えている鱗があるという。それを【逆鱗】と言うのじゃが、龍は【逆鱗】に触れられることを非常に嫌う。その為、この【逆鱗】に触れた場合は龍が激昂し、触れたものを即座に殺すとされていた。そんな言い伝えもあり【逆鱗】は触れてはならないものを表現する言葉となったのじゃ」

「へぇー。知りませんでした。凄く勉強になります」

「そして、今、ハク様の首元に残っている最後の一枚の鱗、これが【逆鱗】じゃ。ハク様はご自分の【逆鱗】以外の八十枚の鱗を全て使ってこの街を何十年、何百年とお守りくださっておるのじゃ。さすがのハク様も【逆鱗】まではお使いになることはせん。【逆鱗】を使う事は禁忌とされておるからの」

「八十枚も使って、何百年も……。あの……、鱗を取る時って痛くはないんですか?ハク様は街を守る為、ご自分が痛い思いをなさっているのでは……」

そんな風に翔子がハク様の身を案じて神主へと話を聞こうとした時だった、急に社務所内の何もない天井からふわり、ふわりと花びらが一枚舞い落ちてきた。

「あれっ?これって……」

思わず掌を上に向け、花びらを受け止めようとした翔子。

「今日はこれでもう、二つ目だ!」

そんな様子を見ていたカケルが驚いた声を出した。
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