8 / 68
第一章
翔子とハク様の物語
しおりを挟む
「ウチの神社に祀られている白龍のハク様。ハク様のお力によりこの街は昔から様々な災害や厄災から守られてきたんじゃ。ハク様も【白龍】と言われる様に本来のお姿は龍なのじゃよ。儂らも真のお姿である完全なる龍の姿は見たことがないのじゃが、代々引き継がれている巻物にはそれはそれは立派な龍のお姿が描かれておる。
では、なぜハク様は今、蛇の姿であられるのか。白龍様の鱗には不思議な力が宿っており、疫病などが流行った時代には白龍様がご自分の鱗を一枚剥がし疫病が鎮まる事を願うと、たちまち疫病は広まりを止め、更に一枚鱗を剥がし疫病に罹った者の回復を願えば疫病に罹ってしまった者たちも回復へと向かっていく。その様にハク様はご自分の鱗を一枚一枚剥がし、願いを込め、ご自分を犠牲にしながらもこの街を守ってくれていたのじゃ」
「ハク様はとても優しい神様なんですね」
「うむ。ただ、剥がした鱗は自然と生えてくるものではないので、ハク様はご自分の鱗を失うばかり……。厄災や災害が起こるたびに鱗を剥がしていったため、鱗が無くなり今の様な蛇のお姿になってしまわれたんじゃ」
「なるほど……。ハク様の首元に一枚だけあるのもウロコですか?ハート型の様な花びらが一枚だけついている様にも見えるのですが、花びらの様に見えているのは私だけなんですよね。皆さんには首元に光の玉が視えているのでしょうか?……首元のあれも、ハク様の【ウロコ】?」
「ほぉ……。翔子さんにはコレも視えておるのか。やはり巫女の力がなかなか強く流れているとみえるな」
「そうだね、俺たちには首の下に光の玉が光ってる様に視えるよ。ハート型って事はこういう向きについてるってこと?」
そう言って空中にハトマークを描くカケルに頷く翔子。
「翔子さんは沢山本を読んでおられるようじゃが、【逆鱗】と言う言葉の語源を知っておるかな?」
「【逆鱗】……ですか。確か、こちらも語源は【龍】に関係するものだったとは思いますが、詳しくは知りません」
「ふむ。龍には八十一の鱗があると言われており、そのうち一枚だけ逆さまにのど元に生えている鱗があるという。それを【逆鱗】と言うのじゃが、龍は【逆鱗】に触れられることを非常に嫌う。その為、この【逆鱗】に触れた場合は龍が激昂し、触れたものを即座に殺すとされていた。そんな言い伝えもあり【逆鱗】は触れてはならないものを表現する言葉となったのじゃ」
「へぇー。知りませんでした。凄く勉強になります」
「そして、今、ハク様の首元に残っている最後の一枚の鱗、これが【逆鱗】じゃ。ハク様はご自分の【逆鱗】以外の八十枚の鱗を全て使ってこの街を何十年、何百年とお守りくださっておるのじゃ。さすがのハク様も【逆鱗】まではお使いになることはせん。【逆鱗】を使う事は禁忌とされておるからの」
「八十枚も使って、何百年も……。あの……、鱗を取る時って痛くはないんですか?ハク様は街を守る為、ご自分が痛い思いをなさっているのでは……」
そんな風に翔子がハク様の身を案じて神主へと話を聞こうとした時だった、急に社務所内の何もない天井からふわり、ふわりと花びらが一枚舞い落ちてきた。
「あれっ?これって……」
思わず掌を上に向け、花びらを受け止めようとした翔子。
「今日はこれでもう、二つ目だ!」
そんな様子を見ていたカケルが驚いた声を出した。
では、なぜハク様は今、蛇の姿であられるのか。白龍様の鱗には不思議な力が宿っており、疫病などが流行った時代には白龍様がご自分の鱗を一枚剥がし疫病が鎮まる事を願うと、たちまち疫病は広まりを止め、更に一枚鱗を剥がし疫病に罹った者の回復を願えば疫病に罹ってしまった者たちも回復へと向かっていく。その様にハク様はご自分の鱗を一枚一枚剥がし、願いを込め、ご自分を犠牲にしながらもこの街を守ってくれていたのじゃ」
「ハク様はとても優しい神様なんですね」
「うむ。ただ、剥がした鱗は自然と生えてくるものではないので、ハク様はご自分の鱗を失うばかり……。厄災や災害が起こるたびに鱗を剥がしていったため、鱗が無くなり今の様な蛇のお姿になってしまわれたんじゃ」
「なるほど……。ハク様の首元に一枚だけあるのもウロコですか?ハート型の様な花びらが一枚だけついている様にも見えるのですが、花びらの様に見えているのは私だけなんですよね。皆さんには首元に光の玉が視えているのでしょうか?……首元のあれも、ハク様の【ウロコ】?」
「ほぉ……。翔子さんにはコレも視えておるのか。やはり巫女の力がなかなか強く流れているとみえるな」
「そうだね、俺たちには首の下に光の玉が光ってる様に視えるよ。ハート型って事はこういう向きについてるってこと?」
そう言って空中にハトマークを描くカケルに頷く翔子。
「翔子さんは沢山本を読んでおられるようじゃが、【逆鱗】と言う言葉の語源を知っておるかな?」
「【逆鱗】……ですか。確か、こちらも語源は【龍】に関係するものだったとは思いますが、詳しくは知りません」
「ふむ。龍には八十一の鱗があると言われており、そのうち一枚だけ逆さまにのど元に生えている鱗があるという。それを【逆鱗】と言うのじゃが、龍は【逆鱗】に触れられることを非常に嫌う。その為、この【逆鱗】に触れた場合は龍が激昂し、触れたものを即座に殺すとされていた。そんな言い伝えもあり【逆鱗】は触れてはならないものを表現する言葉となったのじゃ」
「へぇー。知りませんでした。凄く勉強になります」
「そして、今、ハク様の首元に残っている最後の一枚の鱗、これが【逆鱗】じゃ。ハク様はご自分の【逆鱗】以外の八十枚の鱗を全て使ってこの街を何十年、何百年とお守りくださっておるのじゃ。さすがのハク様も【逆鱗】まではお使いになることはせん。【逆鱗】を使う事は禁忌とされておるからの」
「八十枚も使って、何百年も……。あの……、鱗を取る時って痛くはないんですか?ハク様は街を守る為、ご自分が痛い思いをなさっているのでは……」
そんな風に翔子がハク様の身を案じて神主へと話を聞こうとした時だった、急に社務所内の何もない天井からふわり、ふわりと花びらが一枚舞い落ちてきた。
「あれっ?これって……」
思わず掌を上に向け、花びらを受け止めようとした翔子。
「今日はこれでもう、二つ目だ!」
そんな様子を見ていたカケルが驚いた声を出した。
74
あなたにおすすめの小説
女王ララの再建録 〜前世は主婦、今は王国の希望〜
香樹 詩
ファンタジー
13歳で“前世の記憶”を思い出したララ。
――前世の彼女は、家庭を守る“お母さん”だった。
そして今、王女として目の前にあるのは、
火の車の国家予算、癖者ぞろいの王宮、そして資源不足の魔鉱石《ビス》。
「これ……完全に、家計の立て直し案件よね」
頼れない兄王太子に代わって、
家計感覚と前世の知恵を武器に、ララは“王国の再建”に乗り出す!
まだ魔法が当たり前ではないこの国で、
新たな時代を切り拓く、小さな勇気と現実的な戦略の物語。
怒れば母、語れば姉、決断すれば君主。
異色の“王女ララの再建録”、いま幕を開けます!
*カクヨムにも投稿しています。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
弁えすぎた令嬢
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。
彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。
彼女は思った。
(今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。
今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる