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7月

55.ジニア・リネアリス

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金曜日のテスト二日目。
あァ、今日のテストも英語の範囲が予測より広くて、先生の罠に嵌まった最悪。とか机にだらけて伸びながら思っていたら、珍しく早紀ちゃんも疲れた表情だった。早紀ちゃんもこんな顔する事あるんだなぁって変なところで感心してしまう。

「あれ~、早紀ちゃん、何が撃沈?」
「英語…ヤマが外れてたの…。」

国語とか数学とかはヤマなんてかけなくても得意だからなんともないらしい早紀ちゃんは、実は英語が苦手だったことが発覚。しかも、今回は事前に皆が噂していたのより範囲が広かったのもあって、早紀ちゃんですらヤマが外れちゃったらしい。つまりは長文読解になった出題のページが、思っていたのと違うモノが出ちゃったということ。早紀ちゃんでもそんなことがあるんだと思ったら、何か妙に親近感。いや私はもっと色々駄目だけど、でも苦手なものがある早紀ちゃんって知らなかったし。
何か親近感に嬉しくなった私がヘラヘラっと笑ってるのに気がついた早紀ちゃんが、少し不満そうに可愛く頬を膨らませ表情を変える。何だかまた少し早紀ちゃんが近くなったような気がして、私は嬉しくなった。
色々なことの結果で別れた友への思いとは違う新しい友達へのくすぐったいような思いが心の中に満ちてくる。

「すっごいアンニュイ~って顔してる、早紀ちゃん。」
「だって…流石にへこむよ……頑張ったのに、一番のヤマが外れるなんて…。」

思わずそのショボンとした早紀ちゃんの表情が可愛くて、私は思わずニヤニヤしてしまう。 
親密になればなるほど、同じ共通点があるって見えたり分かったりするんだよね。最初は本や作家さんの好みだけだったけど、その後に映画の話やゲームの話。それだけじゃなくアトピーとか体質の話まで。物事の考え方はまるっきり違うのに、何故か好きなものは同じ。これって凄く気があうっていうか、なんていうか…もうこれって親友って言ってもいいよね?おかしくないよね?何て心の中で思ったりして。


香苗はあの後別になにもいってこないし、木内梓は相変わらず時々睨み付けては来るけど大きな動きはしてこない。まあ、あっちも同じテスト受けてるんだからそれどころではないんだろうけど、このまま何もないで過ぎてくれたらいいなって思う。
香苗の噂話もあの日から耳に入らなくなった気がするけど、時々まだ他のクラスの子が意味ありげに覗きに来ることがある。だから、他のクラスとか他の学年に広がってるのかどうかまでは分からないんだけど、もしこれがお家の人に伝わったりしたらどうなるんだろうって少し心配な気もするんだ。勿論、あの矢根尾って人が真剣に香苗の事を大事にするって人だったら、違ってくるんだろうけど正直あの人が香苗を大事にしているとは思えないでいる。でも、これも勝手な想像で二人っきりだったら、凄く宝物みたいに大事にしてくれるのかな?最初の辺り香苗が勝手に話していた時、確か凄く大事にしてもらってるって話していたような気もする。そうだったら何か起きてもいいのかな?とか考える。
先生とかお家の人に聞かれたら何て言う気なのか分からないけど、香苗自身は本当にどうする気なんだろう。 

結婚しちゃうとか?高校生で結婚かぁ。

結婚なんてどんなものなのか私には想像も出来ないけど、香苗はそういうことも考えてるのかな?何かあの人と一生って私としてはやだなって思っちゃうけど、矢根尾って人は一回結婚してるとかって噂になってなかったっけ?前の奥さんとは子供いるのかな?なんて、全然関係のない私が考えてもどうしようもないんだけど。
香苗は前ほど木内梓と楽しそうにあの頭を付き合わせて内緒話するみたいな姿を見せなくなった。何か考え込むように俯いて香苗が黙りこむから、木内梓も面白くないんだろう時々1人で他のクラスの子のとこに行っている。それを追いかける訳でもない香苗は今、一人で何を考えているんだろう。

「麻希ちゃん、須藤さんのこと心配?」

私があんまり香苗の事を眺めていたせいだろう、早紀ちゃんが心配そうに声をかけてくれた。私は小さく頷きながら、教室の奥だからか少し顔色が悪く見えるような香苗の事を見つめる。

「何も起きないといいなぁって思って。」

私の言葉に早紀ちゃんが少しだけ驚いたように目を丸くしてから、何時もの優しい笑顔で微笑む。

「麻希ちゃんは優しいね。」
「え?何で?」

早紀ちゃんが微笑むのに、私は理由がわからなくてキョトンとしてしまう。早紀ちゃんはそれでも微笑んで私の顔を見つめていて、私は首を傾げて理由を考え込む。

何にも起きないで過ぎればいいけど、社会って大概そうはいかない事が沢山ある。それくらいの事は、子供の私にだってもう分かってきた。香苗が何をどう選んでいるのかは分からないし、香苗には散々振り回されてきたんだけど、でも今は何だか凄い心配だ。何か起きなきゃいいんだけどって私は心の中で考えながら、その背中を見つめていた。

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