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8月
99.ネムノキ
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香苗はあの後、そのまま救急車で総合病院に入院したらしかった。丁度香苗のママが救急車が着いた時に、その場に来て、泣きながら香苗について救急車に乗るのを私は雪ちゃんと土志田センセと不安な気持ちで見送る。
香苗が倒れていたところには、ただの水には見えないものが大量に残っていて少し金気っぽい臭いがしてた。
雪ちゃんは衛を預けにきた時に私から丁度電話があって私を探しに来て、土志田センセは前の日帰ってこなかった香苗のママから連絡を貰って香苗の事を探していたみたいだ。2人とも駅前で鉢合わせして、丁度騒ぎを聞き付けて助けに来てくれたらしい。
木内梓はあの場から逃げ出したみたいけど、あの男の人達2人はそのまま警察に捕まった。香苗の事を蹴ったのは他の人も見てたし、その前に私達を無理矢理何処かにつれていこうとしていたのも見てたって話してくれた人もいたみたい。
あの後、香苗がどうなったのか私は教えてもらえないけど、あの水がだたの水じゃないことくらいは私にも分かる。人を好きになって胸のときめきを感じたのは、香苗にしてみれば本当の事だったと思う。その人と香苗がそのまま幸せになれるんだったら、1番ハッピーエンドだったんだ。でも、香苗の相手の人は香苗に対して誠実でもなければ、香苗を好きでもない最低の人だった。それに気がつかなかった香苗が悪いって言えば、それはそうなんだけど。でも、香苗だって最初はどうあれ真剣に考えていたはずなんだ。
「麻希子。」
ママの声に視線をあげると、ママが少し心配そうに私の事を見つめ横に座る。ソファーに踞るようにして座っていた私の隣に、暖かいママの体温が寄り添う。
「ねぇ、ママ、香苗はどうしてるかな?」
「そうね、どうしてるかしらね。」
ママは香苗が妊娠してた事は知らない。それなのに私を抱き寄せて頭を撫でるママは、何だか全部知っていて話しているみたいに感じる。もしかしたら、雪ちゃんが昨日の状況をママに話してたから、それで香苗の事を全部分かっちゃったんだろうか?そう考えたら無性に悲しくなって、私は膝の上に顔を押し当てて泣き出した。
「ママ、もし赤ちゃん死んじゃってたらどうなるのかな?その赤ちゃんはどこに行くの?」
凄く子供みたいな質問だって分かってる。私は人は皆死んじゃったら天国に行くって考えてるけど、産まれる前の赤ちゃんはどうなるの?産まれてこれない子は何を感じるんだろう?そんなこと今まで考えたこともない。
「何処かしらね、でも、きっとまた何処かのママのところに行くって、私は信じてるわ。」
その言葉は凄く優しくて私は驚いた。何時もママって暢気で何も心配事もないような気がしてたけど、本当は凄く強いんだって感じた。ママみたいに子供を産むって凄いことで、雪ちゃんの奥さんも同じようにして衛を産んだんだ。あのカナタ君のママだって、頑張って赤ちゃんを育てて産んだんだって考えたら涙が更に溢れる。産まれてくるのに歓喜で迎えられるのが当然だと思ってた。
香苗の赤ちゃんはどうなったんだろう?無事ならいいけど、無事だとしても香苗が育ててあげられるの?香苗も分かんないって言ってたし、私がもし香苗だったら私も考えられないと思う。
※※※
お昼を過ぎ、躊躇いがちにドアを叩く音がして、答えるとオズオズと雪ちゃんが顔を覗かせた。何か不安な様子の雪ちゃんは、昨日の姿が嘘みたいにシュンとした感じで奇妙にすら見える。
「麻希ちゃん?」
「昨日の雪ちゃんって別人みたいだったね。」
「あ、あれはカッとなって。」
「土志田センセが、雪ちゃんは短気だからすぐ怒るって言ってたの、嘘だと思ってたけど本当だったんだ?」
あいつって言う顔を雪ちゃんがしたのが見えて、少し可笑しくなってしまう。雪ちゃんってヘラッと笑って誤魔化してない時は、案外表情に出るんだ。って言うかこんなに雪ちゃんって感情が分かりやすいのに、どうして私は今まで気がつかなかったんだろう。そう考えたら不思議になって、マジマジと雪ちゃんの顔を眺める。
「な、何?麻希ちゃん」
「雪ちゃん、麻希子って言ってみて?」
「はぁ?!いや?何で突然?!」
私の言葉に狼狽する雪ちゃんを眺めていて、ああそうだって考えてる自分がいた。雪ちゃんは前からこうだったんだ。私が勝手に誤魔化し雪ちゃんを心の中に作って、その仮面越しに雪ちゃんの事眺めてたんだって気がついた。こうして見ると慌てる雪ちゃんは、智美君が慌てた時と確かに似てる様な気がする。大人になったらもしかして、智美君は雪ちゃんみたいになるのかな。
「麻希ちゃん、あの。」
戸惑っている雪ちゃんの顔を眺めて、私はボンヤリとああ雪ちゃんだなぁなんて訳の分からないことを考える。私は正直なところ、智美君と雪ちゃんのどっちが好きなのかな?自分でもよく分からないけど、雪ちゃんの事を見てるのは自分でも好きなんだって分かる。こうして見てるだけでもいいって、私は雪ちゃんが好きなのかな?
「麻希ちゃん?」
困惑したままの雪ちゃんを見上げながら、私は何故か少し可笑しくなって声をあげて笑い出していた。
香苗が倒れていたところには、ただの水には見えないものが大量に残っていて少し金気っぽい臭いがしてた。
雪ちゃんは衛を預けにきた時に私から丁度電話があって私を探しに来て、土志田センセは前の日帰ってこなかった香苗のママから連絡を貰って香苗の事を探していたみたいだ。2人とも駅前で鉢合わせして、丁度騒ぎを聞き付けて助けに来てくれたらしい。
木内梓はあの場から逃げ出したみたいけど、あの男の人達2人はそのまま警察に捕まった。香苗の事を蹴ったのは他の人も見てたし、その前に私達を無理矢理何処かにつれていこうとしていたのも見てたって話してくれた人もいたみたい。
あの後、香苗がどうなったのか私は教えてもらえないけど、あの水がだたの水じゃないことくらいは私にも分かる。人を好きになって胸のときめきを感じたのは、香苗にしてみれば本当の事だったと思う。その人と香苗がそのまま幸せになれるんだったら、1番ハッピーエンドだったんだ。でも、香苗の相手の人は香苗に対して誠実でもなければ、香苗を好きでもない最低の人だった。それに気がつかなかった香苗が悪いって言えば、それはそうなんだけど。でも、香苗だって最初はどうあれ真剣に考えていたはずなんだ。
「麻希子。」
ママの声に視線をあげると、ママが少し心配そうに私の事を見つめ横に座る。ソファーに踞るようにして座っていた私の隣に、暖かいママの体温が寄り添う。
「ねぇ、ママ、香苗はどうしてるかな?」
「そうね、どうしてるかしらね。」
ママは香苗が妊娠してた事は知らない。それなのに私を抱き寄せて頭を撫でるママは、何だか全部知っていて話しているみたいに感じる。もしかしたら、雪ちゃんが昨日の状況をママに話してたから、それで香苗の事を全部分かっちゃったんだろうか?そう考えたら無性に悲しくなって、私は膝の上に顔を押し当てて泣き出した。
「ママ、もし赤ちゃん死んじゃってたらどうなるのかな?その赤ちゃんはどこに行くの?」
凄く子供みたいな質問だって分かってる。私は人は皆死んじゃったら天国に行くって考えてるけど、産まれる前の赤ちゃんはどうなるの?産まれてこれない子は何を感じるんだろう?そんなこと今まで考えたこともない。
「何処かしらね、でも、きっとまた何処かのママのところに行くって、私は信じてるわ。」
その言葉は凄く優しくて私は驚いた。何時もママって暢気で何も心配事もないような気がしてたけど、本当は凄く強いんだって感じた。ママみたいに子供を産むって凄いことで、雪ちゃんの奥さんも同じようにして衛を産んだんだ。あのカナタ君のママだって、頑張って赤ちゃんを育てて産んだんだって考えたら涙が更に溢れる。産まれてくるのに歓喜で迎えられるのが当然だと思ってた。
香苗の赤ちゃんはどうなったんだろう?無事ならいいけど、無事だとしても香苗が育ててあげられるの?香苗も分かんないって言ってたし、私がもし香苗だったら私も考えられないと思う。
※※※
お昼を過ぎ、躊躇いがちにドアを叩く音がして、答えるとオズオズと雪ちゃんが顔を覗かせた。何か不安な様子の雪ちゃんは、昨日の姿が嘘みたいにシュンとした感じで奇妙にすら見える。
「麻希ちゃん?」
「昨日の雪ちゃんって別人みたいだったね。」
「あ、あれはカッとなって。」
「土志田センセが、雪ちゃんは短気だからすぐ怒るって言ってたの、嘘だと思ってたけど本当だったんだ?」
あいつって言う顔を雪ちゃんがしたのが見えて、少し可笑しくなってしまう。雪ちゃんってヘラッと笑って誤魔化してない時は、案外表情に出るんだ。って言うかこんなに雪ちゃんって感情が分かりやすいのに、どうして私は今まで気がつかなかったんだろう。そう考えたら不思議になって、マジマジと雪ちゃんの顔を眺める。
「な、何?麻希ちゃん」
「雪ちゃん、麻希子って言ってみて?」
「はぁ?!いや?何で突然?!」
私の言葉に狼狽する雪ちゃんを眺めていて、ああそうだって考えてる自分がいた。雪ちゃんは前からこうだったんだ。私が勝手に誤魔化し雪ちゃんを心の中に作って、その仮面越しに雪ちゃんの事眺めてたんだって気がついた。こうして見ると慌てる雪ちゃんは、智美君が慌てた時と確かに似てる様な気がする。大人になったらもしかして、智美君は雪ちゃんみたいになるのかな。
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