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オカズについて

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隠していたエロラノベを読まれてしまった僕は羞恥心で混乱し、シンヤにオカズを白状するよう言った。結果、指を差された。

「…………へ?」

「オカズ……一人でする時に妄想したり、読んだりするものだよね? 俺のはヒロくんだよ♡ ヒロくんのこと妄想して、してる♡」

シンヤはラノベを置いて僕の目の前まで来ると、手をきゅっと握って持ち上げた。中指と薬指を立たせ、指の背にちゅっと口付けた。

「……ヒロくんの指、長くて綺麗♡ この指が俺の弱いとこくちゅくちゅするの妄想して、自分でする♡ っていうか、一人でするとこ見せたよね?」

「ぁ……う、うん。え……僕、だけ? 何か読んだりしないの?」

「ヒロくんのこと知ってからはヒロくんだけだよ♡」

「じゃあ、僕と出会う前は……?」

シンヤは僕の手を握ったまま何もない空間を見上げる、思い出しているのだろうか。

「……ヒロくんと出会ってから、ヒロくんに何されてもいいように後ろ開発して……えーっと、その前だから、中学生……特にないかな、してなかったかも」

「えっ……中学生の頃してなかったの!? そんな男子いる!?」

「友達いないし、本もネットも夏休みの宿題とかで調べ物する時以外使わないし、保健体育の教科書には自分ですることとか詳しく載ってたりしないし」

「えぇ……」

「だから、溜まってきたら抜くくらいかな。何も考えなくても擦れば出たし。鬱陶しく思ってたよ」

生き物の機能として精子が作られ溜められることすら疎ましく思うような、性欲が薄くて真面目な少年を、僕はどれほど歪めてしまったんだ。

「……ヒロくんに恋した時、初めて目を開けたような気分になったよ♡ ようやく目覚めたんだ……ヒロくん、ヒロくん、大好き♡」

目が覚めた? 本当に? 恋は盲目と言うだろう、僕が真面目で優秀な少年の目を閉ざしたんじゃないのか?

「な、なんか……僕のせいでえっちな子になっちゃったんだね、シンヤくん……」

感じた恐怖を茶化して外に出して誤魔化してみる。

「うん♡ 責任取ってね♡」

「も、もちろん! 取るよ、責任、もちろん」

「……ヒロくんに会うまで生きがいとかそういうのなかったんだ。何にも興味持てなかった。食べ物も勉強も遊びも、何も好きじゃなかった。ヒロくん、生きるの楽しくしてくれてありがとう♡」

「シンヤくん……」

生きがいのない不幸な少年に幸せを教えた、そう思えば僕はとってもいい人だ。だが、裏を返せばシンヤには僕以外の生きがいがないということで──

「なんか改まっちゃうの恥ずかしいなぁ……でも、本当に感謝してるんだ。ヒロくんだけ愛してる♡」

僕への愛ばかりを語るシンヤの瞳は相変わらず真っ黒で真っ直ぐで、僕の将来の幸せな日々を決定してしまう魔力を孕んでいた。
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