4 / 548
学校サボって後輩を怪しい店に連れ込んでみた
茂みを越えようとして転んだ俺をセンパイは無表情で見下げている。ギョロっとした三白眼が威圧的だ。
二メートル超えの長身に褐色の肌、筋肉質な体は雰囲気からして強者。実際とても強くて喧嘩は常勝無敗、不良達の憧れの的だ。もちろん俺も憧れている。
「……お前、一年だっけ」
「あ、はい! 一年三組、月乃宮 望です!」
憧れのセンパイが新しいタバコを火をつけずに咥えて揺らしながら尋ねたなら、元気よく礼儀正しく自己紹介、それが後輩というもの。
「……その金髪、見覚えある」
「覚えてくださって嬉しいです! 月乃宮です!」
表情が変わらないセンパイの機嫌は伺いにくい、うちの学校の不良はみんなそう言っている。けれど俺はその寡黙さが格好いいと思う。不良でない生徒には関わらず、女子生徒から距離を取る硬派なところも憧れた理由だ。
「あ、あの……すいません、俺ライター持ってなくて」
火をつけずに咥えたままなのは俺につけろと暗に伝えているに違いない。なのにライターを持っていないなんて俺はバカだ、気に入られるチャンスを逃してしまった。
「…………?」
「えっと……ライター貸してください」
センパイから受け取ったライターを点火し、背の高い彼が咥えたタバコに近付ける。しかしセンパイはライターの蓋を閉じてしまった。
「……何?」
「えっ……ぁ、いや、火をおつけした方がいいのかな……と、思いまして。すいません……」
タバコを揺らしているのは火をつけろという無言の圧力ではなかったようだ。ライターを返し、じっと俺を見つめているセンパイの前から動けずただ立ち尽くす。そうしていると始業のチャイムが鳴った。
「あっ……!」
うっすらと聞こえてくるチャイムの音に絶望する。変態幽霊や痴漢がいなければ間に合っていたのに……今から行くか? 不良グループの仲間入りを果たした今、毎日時間通りに学校に行っている方がおかしい。
「あのー……センパイって今日はサボる感じですか? なら……その、お供させてください」
センパイは何も言わずに咥えていたタバコを箱に戻し、公園を出ていこうとする。大きな背中で伝えているのは「着いてこい」なのか「着いてくるな」なのか、分からない。とりあえず追いかけよう。
「わ……カッコイイ! いいバイクですね、センパイに似合ってます!」
公園の入り口の脇に大きなバイクが停められていた。黒く厳つい車体はセンパイのイメージに一致している。センパイは無言でシートの収納を開け、ヘルメットを出して俺に渡した。
「あ、ありがとうございます……」
またバイクに二人乗りか……怖いから嫌だな。けれど、センパイと仲良くなれたら学校生活は安泰だ。くだらないイジメに付き合う必要もなくなる。
「わっ……センパイ、めちゃくちゃごつい」
大きなバイクに跨り、センパイの腹に腕を回す。筋骨隆々な彼の胴は太く、掴まるのには必死にならなければいけない。
「……速いですねー、風が気持ちいいです」
センパイの大きな背に遮られて少しも風を感じないし、景色もほぼ見えない。適当に媚びたセリフを吐いていると見えない手が現れ、下半身をまさぐられた。
「きたっ……ゃ、あ……クソ、変態……」
声を押さえて幽霊を罵倒しても穴を掻き回されながら扱かれると簡単に勃起した。センパイに気付かれたくなくて腰を引き、代わりに腕に込める力を強めた。
「……んっ、ぅ、ぅうっ……ふ、ぅ、んんっ」
ゴツゴツとした人差し指と中指が揃って腹側の弱点を弄っている。指の腹で撫でたり、とんとんと叩いたり、出し入れして突きまくったり、勃起した後は穴ばかり弄られた。
「ふ、ふぅっ……ぅ、ぁ……」
頭がふわふわと浮かんでいるような感覚があり、バイクが停まっていることに気付かなかった。
「……おい」
センパイの低い声に気付かされ、彼にならってバイクから降りる。
「……大丈夫か?」
「はっ、はいっ……大丈夫、です」
大丈夫じゃない、バイクを降りた途端見えない手が増え、腸壁を何本もの指で擦り上げられている。通学鞄で勃起を隠しているが、そろそろ出してしまいそうだ。
「それでっ、どこ、に……?」
声色を整えるのも楽じゃない。センパイは俺の苦労なんて露知らず、無言で先を歩いた。路地裏に入った彼の後を追い、BARらしき店に入る。店内は薄暗く、客も店員もシルエットしか見えない。
「……お、おしゃれ、ですね」
絶対未成年が入っていい店じゃないよな……けど、未成年がしてはいけないことをしてこそ真の不良。センパイは俺を試している、俺が腰抜けでないかを探っている、ここで俺の悪さを見せつけてやる。
「……いつもの。お前は?」
隅のテーブル席についてすぐ注文を求められた。今何円持ってたっけ、こういう店ってかなり高そうだよな。
「センパイと同じのでお願いします」
この暗さじゃメニューを見ても読めないだろうし、酒の名前なんて分からない。以前レンに聞いたミラーリングという心理的な……なんか、アレを試そう。同じことをすると好感を持ってもらえるとか、なんかそんなヤツだ。
「……濃いめ平気か?」
「大丈夫です、バカにしないでくださいよ」
席に座ると見えない手は大人しくなり、指を二本挿入しているだけになった、動きもしない。楽なはずなのに腰をくねらせてしまう、幽霊の指をきゅうきゅうと締め付けてしまう。身体の熱が引かず、もじもじしていると服の上から太腿を撫でられた。やはり大人しい。
「あ……き、来ましたね。失礼します」
机に運ばれた二つのグラス。冷たいそれを口に運ぶ。甘ったるい、覚えのある味だ。
「ジュースですかコレ」
「……乳酸菌飲料だ」
「体にピース……なんだ、もう……酒とかかと思って身構えてたのに」
金持ちの家のヤツだ、濃い。
「……お前」
「は、はい、なんですか?」
「…………嫌がらないのか?」
「え……?」
俺はようやく気付いた。見えない手は服をすり抜けて素肌に触れてくるのに、太腿を撫でている手は服の上から俺に触れていることに。そして布越しに体温が伝わってくることに。
「あ、あの……センパイ」
もう片方の手で頬を撫でられ、その手の大きさに力の差を察して恐怖を覚える。
「センパイて、その……男イケるんですか?」
「……幼稚園の頃から男しか好きにならない」
昔ながらの硬派な人だと思って憧れていたのに、本当に女に興味がなかっただけかよ。
「俺、は……その、男は、ちょっと」
センパイを押しのけられなくても構わない、拒絶の意を示すために胸か肩を押してみよう。そう思いついた瞬間、見えない手が俺の手を掴んで太腿の横に下ろさせた。
「……試すのも嫌か?」
ちゃんと断れば引いてくれそうだ、流石センパイ。
「は、はい、ごめんなさい……」
「…………触られても嫌がらないくせに」
「それ、はっ……」
見えない手だと思っていたから嫌がっても無駄だと諦めていただけだ。でもそんな言い訳使えない。
「……勃ってる」
太腿を撫でていた手が股間に移る。見えない手に勃起させられた陰茎に気付かれ、服の上から慎重に揉みしだかれる。
「ぁ、やっ……だ、めっ……ですって、センパイっ」
「……本当に嫌なら俺の手を掴んでみろ、弱くても止めてやる」
見えない手の拘束を抜けられない。首を横に振って「嫌だ」と言い続けたが、センパイの手は止まらない。
「……素直じゃないな」
「や、だっ……センパイっ、やめてっ、やめてくださいっ……それ以上、したらっ……!」
ビクッと体を跳ねさせ、くたっと力が抜ける。また下着を汚してしまった。
「……イったのか? こんなので?」
きっとセンパイは俺の興奮を促したかっただけなのだろう。服の上からの雑な愛撫で射精した俺に戸惑ったようだった。
「やめてって、言ったじゃないですかぁっ……!」
「……悪い。そんな敏感だとは」
恐怖だとか情けなさだとか恥ずかしさで頭がぐちゃぐちゃだ、何も考えられない。センパイの気が緩んでいるのに逃げようと思い付きもしなかった。
「…………部屋を使う」
センパイはバーテンダーから鍵を投げ渡され、俺を軽々と抱えて店の奥へ進む。
「はっ!? ちょっ、下ろしてっ、部屋って何……!?」
鍵を使って入った部屋にはベッドだけがあり、枕側の壁に大きな鏡が張ってある。シャワールームも併設されているようだが、ガラス張りで中が丸見えだ。
……ラブホじゃねぇか! 入っとことはないけどネットで見た感じこんなんだった。
「あ、あの……センパイっ、俺……本当に、そっちの趣味ないんですって」
「……換えの下着買ってくる。シャワー浴びとけ」
「え……? あ、はい! ありがとうございます」
センパイは部屋を出ていった。狙われてはいそうだが今日抱かれることはなさそうだ。落ち着いてからハッキリ断ればいい。
「……とりあえず、シャワー」
センパイが同性愛の方だったことも、妙に優しいのも、多分狙われているのも、今は気にせずシャワーを浴びよう……あぁダメだ、また見えない手が襲ってきた。
二メートル超えの長身に褐色の肌、筋肉質な体は雰囲気からして強者。実際とても強くて喧嘩は常勝無敗、不良達の憧れの的だ。もちろん俺も憧れている。
「……お前、一年だっけ」
「あ、はい! 一年三組、月乃宮 望です!」
憧れのセンパイが新しいタバコを火をつけずに咥えて揺らしながら尋ねたなら、元気よく礼儀正しく自己紹介、それが後輩というもの。
「……その金髪、見覚えある」
「覚えてくださって嬉しいです! 月乃宮です!」
表情が変わらないセンパイの機嫌は伺いにくい、うちの学校の不良はみんなそう言っている。けれど俺はその寡黙さが格好いいと思う。不良でない生徒には関わらず、女子生徒から距離を取る硬派なところも憧れた理由だ。
「あ、あの……すいません、俺ライター持ってなくて」
火をつけずに咥えたままなのは俺につけろと暗に伝えているに違いない。なのにライターを持っていないなんて俺はバカだ、気に入られるチャンスを逃してしまった。
「…………?」
「えっと……ライター貸してください」
センパイから受け取ったライターを点火し、背の高い彼が咥えたタバコに近付ける。しかしセンパイはライターの蓋を閉じてしまった。
「……何?」
「えっ……ぁ、いや、火をおつけした方がいいのかな……と、思いまして。すいません……」
タバコを揺らしているのは火をつけろという無言の圧力ではなかったようだ。ライターを返し、じっと俺を見つめているセンパイの前から動けずただ立ち尽くす。そうしていると始業のチャイムが鳴った。
「あっ……!」
うっすらと聞こえてくるチャイムの音に絶望する。変態幽霊や痴漢がいなければ間に合っていたのに……今から行くか? 不良グループの仲間入りを果たした今、毎日時間通りに学校に行っている方がおかしい。
「あのー……センパイって今日はサボる感じですか? なら……その、お供させてください」
センパイは何も言わずに咥えていたタバコを箱に戻し、公園を出ていこうとする。大きな背中で伝えているのは「着いてこい」なのか「着いてくるな」なのか、分からない。とりあえず追いかけよう。
「わ……カッコイイ! いいバイクですね、センパイに似合ってます!」
公園の入り口の脇に大きなバイクが停められていた。黒く厳つい車体はセンパイのイメージに一致している。センパイは無言でシートの収納を開け、ヘルメットを出して俺に渡した。
「あ、ありがとうございます……」
またバイクに二人乗りか……怖いから嫌だな。けれど、センパイと仲良くなれたら学校生活は安泰だ。くだらないイジメに付き合う必要もなくなる。
「わっ……センパイ、めちゃくちゃごつい」
大きなバイクに跨り、センパイの腹に腕を回す。筋骨隆々な彼の胴は太く、掴まるのには必死にならなければいけない。
「……速いですねー、風が気持ちいいです」
センパイの大きな背に遮られて少しも風を感じないし、景色もほぼ見えない。適当に媚びたセリフを吐いていると見えない手が現れ、下半身をまさぐられた。
「きたっ……ゃ、あ……クソ、変態……」
声を押さえて幽霊を罵倒しても穴を掻き回されながら扱かれると簡単に勃起した。センパイに気付かれたくなくて腰を引き、代わりに腕に込める力を強めた。
「……んっ、ぅ、ぅうっ……ふ、ぅ、んんっ」
ゴツゴツとした人差し指と中指が揃って腹側の弱点を弄っている。指の腹で撫でたり、とんとんと叩いたり、出し入れして突きまくったり、勃起した後は穴ばかり弄られた。
「ふ、ふぅっ……ぅ、ぁ……」
頭がふわふわと浮かんでいるような感覚があり、バイクが停まっていることに気付かなかった。
「……おい」
センパイの低い声に気付かされ、彼にならってバイクから降りる。
「……大丈夫か?」
「はっ、はいっ……大丈夫、です」
大丈夫じゃない、バイクを降りた途端見えない手が増え、腸壁を何本もの指で擦り上げられている。通学鞄で勃起を隠しているが、そろそろ出してしまいそうだ。
「それでっ、どこ、に……?」
声色を整えるのも楽じゃない。センパイは俺の苦労なんて露知らず、無言で先を歩いた。路地裏に入った彼の後を追い、BARらしき店に入る。店内は薄暗く、客も店員もシルエットしか見えない。
「……お、おしゃれ、ですね」
絶対未成年が入っていい店じゃないよな……けど、未成年がしてはいけないことをしてこそ真の不良。センパイは俺を試している、俺が腰抜けでないかを探っている、ここで俺の悪さを見せつけてやる。
「……いつもの。お前は?」
隅のテーブル席についてすぐ注文を求められた。今何円持ってたっけ、こういう店ってかなり高そうだよな。
「センパイと同じのでお願いします」
この暗さじゃメニューを見ても読めないだろうし、酒の名前なんて分からない。以前レンに聞いたミラーリングという心理的な……なんか、アレを試そう。同じことをすると好感を持ってもらえるとか、なんかそんなヤツだ。
「……濃いめ平気か?」
「大丈夫です、バカにしないでくださいよ」
席に座ると見えない手は大人しくなり、指を二本挿入しているだけになった、動きもしない。楽なはずなのに腰をくねらせてしまう、幽霊の指をきゅうきゅうと締め付けてしまう。身体の熱が引かず、もじもじしていると服の上から太腿を撫でられた。やはり大人しい。
「あ……き、来ましたね。失礼します」
机に運ばれた二つのグラス。冷たいそれを口に運ぶ。甘ったるい、覚えのある味だ。
「ジュースですかコレ」
「……乳酸菌飲料だ」
「体にピース……なんだ、もう……酒とかかと思って身構えてたのに」
金持ちの家のヤツだ、濃い。
「……お前」
「は、はい、なんですか?」
「…………嫌がらないのか?」
「え……?」
俺はようやく気付いた。見えない手は服をすり抜けて素肌に触れてくるのに、太腿を撫でている手は服の上から俺に触れていることに。そして布越しに体温が伝わってくることに。
「あ、あの……センパイ」
もう片方の手で頬を撫でられ、その手の大きさに力の差を察して恐怖を覚える。
「センパイて、その……男イケるんですか?」
「……幼稚園の頃から男しか好きにならない」
昔ながらの硬派な人だと思って憧れていたのに、本当に女に興味がなかっただけかよ。
「俺、は……その、男は、ちょっと」
センパイを押しのけられなくても構わない、拒絶の意を示すために胸か肩を押してみよう。そう思いついた瞬間、見えない手が俺の手を掴んで太腿の横に下ろさせた。
「……試すのも嫌か?」
ちゃんと断れば引いてくれそうだ、流石センパイ。
「は、はい、ごめんなさい……」
「…………触られても嫌がらないくせに」
「それ、はっ……」
見えない手だと思っていたから嫌がっても無駄だと諦めていただけだ。でもそんな言い訳使えない。
「……勃ってる」
太腿を撫でていた手が股間に移る。見えない手に勃起させられた陰茎に気付かれ、服の上から慎重に揉みしだかれる。
「ぁ、やっ……だ、めっ……ですって、センパイっ」
「……本当に嫌なら俺の手を掴んでみろ、弱くても止めてやる」
見えない手の拘束を抜けられない。首を横に振って「嫌だ」と言い続けたが、センパイの手は止まらない。
「……素直じゃないな」
「や、だっ……センパイっ、やめてっ、やめてくださいっ……それ以上、したらっ……!」
ビクッと体を跳ねさせ、くたっと力が抜ける。また下着を汚してしまった。
「……イったのか? こんなので?」
きっとセンパイは俺の興奮を促したかっただけなのだろう。服の上からの雑な愛撫で射精した俺に戸惑ったようだった。
「やめてって、言ったじゃないですかぁっ……!」
「……悪い。そんな敏感だとは」
恐怖だとか情けなさだとか恥ずかしさで頭がぐちゃぐちゃだ、何も考えられない。センパイの気が緩んでいるのに逃げようと思い付きもしなかった。
「…………部屋を使う」
センパイはバーテンダーから鍵を投げ渡され、俺を軽々と抱えて店の奥へ進む。
「はっ!? ちょっ、下ろしてっ、部屋って何……!?」
鍵を使って入った部屋にはベッドだけがあり、枕側の壁に大きな鏡が張ってある。シャワールームも併設されているようだが、ガラス張りで中が丸見えだ。
……ラブホじゃねぇか! 入っとことはないけどネットで見た感じこんなんだった。
「あ、あの……センパイっ、俺……本当に、そっちの趣味ないんですって」
「……換えの下着買ってくる。シャワー浴びとけ」
「え……? あ、はい! ありがとうございます」
センパイは部屋を出ていった。狙われてはいそうだが今日抱かれることはなさそうだ。落ち着いてからハッキリ断ればいい。
「……とりあえず、シャワー」
センパイが同性愛の方だったことも、妙に優しいのも、多分狙われているのも、今は気にせずシャワーを浴びよう……あぁダメだ、また見えない手が襲ってきた。
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。