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後輩を調教してみた

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日曜日の早朝、センパイの隣で目が覚める。スマホを見てみるとレンからの着信通知が並んでいた、音を消しておいてよかった。

「…………早起きだな」

ソシャゲのログインボーナスを回収しているとセンパイが目を覚まし、俺の頭をポンっと撫でた。

「あっ、お、おはようございます國行センパイ!」

「……おはよう」

まだ完璧に目が覚めていない様子のセンパイは乱れた服のまま立ち上がる。ベルトが抜かれたスラックスは太腿の筋肉に引っかかって止まり、大きな膨らみがある下着を覗かせている。羽織っただけのシャツからは胸筋と腹筋が丸見えだ。

「センパイってすっごい筋肉ですよね」

俺はセンパイのトレーナーだけを着ている。ぶかぶかのトレーナーは何とか股間を隠してくれているが、襟ぐりが広く肩が片方露出してしまうし、袖が長すぎて指先が出ない。

「えっと……何か、鍛えた理由とかありますか?」

寡黙なセンパイとの会話には常に緊張が付きまとう。何を言っても無表情だから機嫌が分からないし、無口だから返事すらしないこともあって怒っているのかと不安になる。

「………………小学生の頃」

「は、はいっ、小学生の頃ですね!」

無言の時間が長く、また返事がもらえないのかと思っていた。

「…………親父によく殴られてた、ギャンブルに負けると不機嫌になるからな」

「えっ……ぁ、そ、そうだったんですか」

「……中学生の頃に背が伸び始めて、目つきが悪いせいで絡まれることが多くて、喧嘩慣れしていった」

センパイのツリ目は切れ長で綺麗な形をしている。しかし三白眼と人の顔をひたすら見つめるクセのせいで威圧感がある。

「……親父に殴られる時、避けられるな……と思って、避けて、今なら入るな……と思って、殴った。それから親父に殴られなくなった」

「そうなんですか、よかったです」

「…………強ければ何にも虐げられない。だから鍛えた」

突然の昔話は俺の「鍛える理由は?」という質問への答えだったのか。寡黙と言うより会話が不得意と言った方が正しいんじゃないか?

「俺も虐められたくなくて髪染めてピアス開けたんですよ、お揃いですね」

媚びを売ってセンパイの表情をじっと観察する。微かに目を見開き、微かに口角が上がった。驚きと好意的な感情……かな? 気に入ってもらえたようだ。

「……可愛いな、お前は」

三つのピアスがある右耳を指で撫でられ、くすぐったさに目を閉じる。いつの間にかセンパイの顔が近付いていて、唇が短く重なった。

「……朝食が終わったらすぐにしよう」

朝食は昨晩コンビニで買ってきたらしいサンドイッチだ。ハムとチーズの単純なものだが、スーパーのスライスチーズとは一味違ってコクがある。

「コショウもきいてて美味しいですね」

サンドイッチを食べ終えるとベッドに寝かされる。下半身裸でベッドに仰向けになればもう後はやることは一つだ、俺はセンパイに怒られたくなくて自分から開脚した。

「……お前を気に入っている。だからちゃんと開発したい」

そう言いながらベッドの下からダンボール箱を引っ張り出し、その中から大人の玩具を取り出した。センパイは鮮やかな色の奇妙な形状の玩具を持ち、俺の後孔にあてがった。

「……これは前立腺マッサージ器具だが、同時に精嚢と会陰を責められる優れものだ」

「はぁ……なんか、よく分かりませんけど」

「…………お前の身体を男に抱かれるための身体に変える器具だ」

「んぁっ……! ぁ、太くはないですね……センパイのより、楽で……」

簡単に挿入された前立腺マッサージ器具とやらはセンパイの説明通り前立腺をぐっと押し込んだ。しかし動かさなければ耐えられる。

「センパイ……あの、これで何を?」

膝を立てた仰向けのままセンパイを見上げる。トレーナーの上から大きな手で腹を撫でられる。

「あの……?」

意図が分からずただ見上げる。センパイはトレーナーの中に手を入れ、少し力を込めて先程と同じように撫でた。腹筋を意識して自然と力が入り、腸壁もマッサージ器を締め付ける。

「んぅっ……!」

「……中にある物を意識しろ」

「は、い……意識、します」

目を閉じて腹部に意識を集中する。大きな手に撫でられて外側から腸を張形に押し付けられる。

「……ここが前立腺……に、響く位置のはず」

下腹をトンと叩かれる。

「んぅっ! せん、ぱい……これ、なんか嫌です」

センパイは俺を無視してトントンと下腹を叩く。

「は、ぁ、あっ、ぁ、あ、ぁ……ん、んぅっ、ぁあ……」

微かな刺激なのに、いや、だからこそ身体が敏感になっていく。

「……ここが会陰」

「ぅ、あ……? ぁ……」

センパイの手が下腹から足の間へと移る。勃起した性器を無視し、挿入したマッサージ器具を軽く叩く。尻穴と陰嚢の間、何もないはずのそこに刺激を送られてもなんともない。そう思いたかった。

「……どうだ?」

「きもち、ぃ……なんで、こんな……ぁ、ぅう……」

「……上々。筋がいいぞ、才能がある」

男に抱かれるための才能なら欲しくない。

「……お前は特別だ、こんなに感じる奴は今まで見たことがない。特別なんだ、分かるな?」

「そ、れっ……全員に、言ってるんでしょ」

センパイは三白眼を微かに見開き、瞳孔を狭めて俺を怯えさせる。

「んぉっ!?」

マッサージ器具を押さえたまま強く腹を押され、腸の奥深くをえぐられて変な声が出る。

「……今のが結腸だ、多分。よかったか? そこが気持ちいいならお前は本物だ」

本物……? 急に恐怖が湧き上がってきた、センパイにこのまま開発されたら元に戻れなくなる気がする。センパイとの関係が長く続く気はしないし、来週にでも神社に行ってお祓いをしてもらう気だ。

「き、気持ちよく、なかった……なかったから、もうやめて……」

男に抱かれる快感はそこそこ気に入っているけれど、俺はハスミンみたいな可愛い女の子と付き合いたい。男のみにはなりたくない、男もイケるくらいで留まりたい。

「……嘘つきは嫌いだと言っただろう? 正直に言え」

センパイは緩く拳を握り、手の甲でマッサージ器具の底を叩く。コンコン、コンコン、と粗雑な振動が腸に伝わってくる。

「気持ちよくないっ! きもちぃ、わけ……ないっ、そこっ……は、ぁっ……物、入れるとこじゃ、ない……からっ、気持ちいいわけ、ないぃっ……!」

「…………そうか」

もう片方の手が下腹に当てられる。ぐっ、ぐっ、と押されて快楽が増幅する。

「ひぅっ!? ぅぐっ、んぅっ、ぅうっ!」

「……気持ちよくないならその声はなんだ?」

「押すっ、かりゃあっ、勝手に、れるのぉっ、気持ちよく、にゃいっ!」

ダメだ、もう我慢できない。絶頂してしまう。射精してしまう。

「……ならイったりしないんだな?」

もうイきそうだ、けれど正直に言いたくない。

「イか、ないっ! こんにゃのれぇっ、イったりっ、しにゃいっ!」

「……そうか、ならやっていても仕方ないな」

「あぁんっ! ぁっ、あ……え? くにゆきせんぱい……?」

どうせまた動けなくなるまでイかされるんだと思っていたが、センパイは俺の予想に反してマッサージ器具を抜いてしまった。

「……悪かったな。お前がそんなに嫌がるなら仕方ない、もう二度とこんなもの使わないし、抱かない。ただの先輩と後輩に戻ろう」

「え……せ、せんぱい、そんな……」

「……洗ってくる。後で昼飯をおごってやる、そのあとは家まで送る、じゃあな」

センパイはマッサージ器具を持って部屋を出ていってしまった。妙な玩具を使われず、オナホ契約もなかったことにされた。よかったじゃないか、これで元の生活に戻れる。

「ぅ……とりあえず一発抜こう」

勃起している性器を扱く。確かに快感だが、俺が欲しいものとは違う。

「ふっ、ふぅっ……ぅ、ちがう……こっちじゃ、だめ……」

このまま陰茎を擦っていれば射精はできるだろう。けれど俺が本当に欲しい快楽は手に入らない、そんな気がしていた。
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