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幼馴染に襲われてしまった
ウッドデッキにレンの身体が横たわる。立った状態から足を払って転ばせたから背中でも打ったのか、レンは痛みに顔を歪めている。
「レン……レン、レンっ、レン……!」
大好きなレンの上に跨っているという状況に興奮し、俺は弱々しく抵抗するレンのシャツのボタンを引きちぎった。
「も、もち……!? 何してるんだよっ、やめろよ!」
肌着をめくる俺の手を押さえるレンの手を掴み、もう片方の手と一緒に頭の横へ持ち上げる。
「好きだって言ってるだろ、ふざけてなんかない、冗談なんかじゃないっ! 本気なんだ、本当で好きなんだ! なんで……なんで破ったりするんだよ! なんで俺の気持ち受け取ってくれないんだよ! 俺の幸せ願ってくれるなら俺のこと好きになってくれよぉっ!」
レンの頬に大粒の涙が落ちる。今の俺は駄々っ子でしかない、最悪の行動だと分かっているのに自分を止められない。俺はもう、俺を監禁した担任を咎められない。手段さえあれば俺もレンを──
「……だって、俺……女の子じゃないじゃん。もちは女の子がいいんだよな? 言ってたもんな、俺が女だったらよかったって! なんで女に生まれてこなかったんだってネチネチ言ってきたもんな!」
「レ、レン……? いや、俺は……男のお前が好きで」
「嘘つきっ! 嘘つき、嘘つきっ……! 女になれって何年もずっと言ってきたくせに! 俺の言うこと聞かずに変な連中とつるんで挙句レイプされてあっさりメス堕ちかまして「やっぱ男でもいいです」はないだろバカもちふざけんなぁっ! 背伸びませんように髭生えませんように声変わりしませんようにって毎日毎日毎日毎日怖くて怖くてっ……!」
何年も……あぁそうだ、俺はことある事に言ってきた。冗談のつもりで、いや、冗談に聞こえるように、無意識に何度も何度も告白していたんだ。
「女だったら付き合いたい」なんて最低の言葉で。
「レン……レン、ごめん、俺……ごめん、本当にごめん……でも好きなのは本当なんだ、本気なんだ、好きだよレン……大好き。男でも女でも、レンが好き」
レンは俺がしつこく言っていたから女の子になりたがっていた。つまり俺のことが好きなんだ。なら、このキスに応えてくれるはずだ。
「……っ、やめろよ」
顔を近付けるとレンは横を向いてしまった。俺の唇はふわりと柔らかい頬に触れる。
「レン……? ぁ……ご、ごめん」
まずい、早まったか? この確執さえどうにかすればレンが応えてくれるのは間違いないのに、俺達は両想いなのに……
「俺はお前と付き合う気なんかない。キスもセックスも絶対しない。彼氏居るんだろ? しかも二股して……その上俺も欲しいって? 贅沢言うなよ。どけよ」
「…………嫌だ。キスしてくれるまでどかない」
レンの怒りを冷ます方法も、レンを口説き落とす言葉も分からないガキな俺はガキらしく駄々を捏ねた。
「レン、本当に好きなんだ。付き合ってくれるなら二人と別れる。レンだけにする。もう絶対浮気しないから……お願い」
自分でも守れるとは思えない最低の約束をチラつかせ、更にレンの神経を逆撫でする。
「……もち、悪いこと言わないからミチと付き合ってろよ。あの子いい子だから。形州はちょっとヤバそうだけど……まぁ、案外出世しそうだしな。どっちでもいいからさ、俺だけは諦めろよ」
「…………レンも、俺のこと好きだろ? なんでそんなこと言うんだよっ……」
「自信満々だなおい……俺と付き合ってもすぐ後悔するぞ」
「しない! レンがどんなえげつないプレイ要求してきても俺応えてみせる!」
レンは目を丸くして俺を見つめ、不意に噴き出したかと思うと大笑いし始めた。
「えげつないプレイって……はははっ! そういう意味じゃねぇよ、バカもち……」
笑われたのは心外だが、怒りなどは少し弱まったように思う。
「レン……レンは、俺のこと好きなんだよな?」
「お前には幸せになって欲しい……俺の願いはそれだけなんだ、だからさ、みっちーと仲良くな」
押さえつけた細い身体は弱々しく、本気になれば犯すのも殺してしまうのも出来そうな気がした。
「俺が誰かと付き合う前だったら、俺が付き合いたいって言ったら……付き合ってくれた?」
「………………頼むからどいてくれ。お前のこと嫌いになりそうだよ」
レンは俺の瞳をまっすぐに見つめて言った。俺はレンの手を離し、彼の上からどいた。膝を抱えて座ってそれ以上動く気になれなかった。
「痛て……手首痛いっての。力強くなったな、もち。成長をひしひしと感じるよ……」
ぽすん、と髪の上にレンの手が乗る。力ない愛撫を受けた俺は自分の膝に顔を押し付けた。
「…………なぁ、ちょっと気持ち悪い話したいんだけど引かないでくれるか?」
「うん……」
俺がレンを気持ち悪く思うなんてありえない。俺にとってレンは完璧なアイドルなんだ。
「俺な、お前のお母さんになりたかった。お前を産んでやりたかったんだ。意味分かんないよな? でもさ……俺に抱きついて、泣いてさ、俺にだけ甘えてくるお前見てたらさぁ……もうすっごい母性本能膨らんじゃってさ」
温かい。頭を抱かれている。恋心ゆえの鼓動の激しさは今は落ち着き、胎児のように丸まって甘える。
「…………まま」
「……はははっ! それ、前もやってたな。赤ちゃんプレイがお好みでちゅかー? はは……ごめんな、お前の母親じゃなくて……女の子でもなくて、ごめんな……ごめんな、もち、ごめん」
この謝り方には聞き覚えがある。確か、中学生の頃──女装させられたレンを見て「美少女じゃん、なんでマジの女子じゃねぇんだよ」なんて軽口を叩いた時──レンは笑いながらも悲しそうな目をして今と同じように「ごめんな」と謝っていた。
レンが謝ることなんて何もないのに。
「レンっ……! レン、ごめん、レン……謝るのは俺だ、ずっと俺、全部俺、いつも俺が悪いんだ」
蹲るのをやめてレンを抱き締める。か弱い身体は俺の腕の中でもがくが、俺は強く抱き締めて彼を離さなかった。
「ごめん……レン、ずっと嫌だったんだよな」
嫌だったなら、傷付いていたなら、そう言ってくれたらよかったのに。そうしたら俺はもっと早くにレンの気持ちに気付いて、俺自身の恋心にも気付いて、今頃はレンと──そんな都合のいい妄想はやめろ。今責めるべきなのは俺だけだ。
「もち……やめてくれよっ、離してくれ……こんなことされたらっ……! せっかく諦めたのに、俺……また」
諦めた? 何を? 俺を? またって何? また好きになってくれたの? そうだ、そうに違いない、やっぱりレンも俺が好きなんだ!
都合のいい思考回路は両想いでQEDを叩き出した。
「レン……俺のこと好きだよな、なぁ頼むよ、俺と付き合って、お願い、レン……今度こそ大事にするから」
「嫌だっ! やめてくれ、もうやめてくれよっ! もう、もう俺は……全部諦めなきゃいけないんだ、お前のことも将来のことも何もかもっ!」
「な、なんでそんなに嫌がるんだよ! 何もかもって……そんな、大げさな。俺もレンが好きだって言ってるじゃん! レンも俺が好きなんだろ!? なんで、なんでそんなに……」
「大好きだからだよっ! お前が不幸になるって分かってて俺なんか選ばせられるわけないだろ!? こんな体で……お前を幸せになんて出来ない」
「こんな体って……だから、俺は男のレンが好きなんだって。ミチもセンパイも男だし……ん?」
レンの説得中、インターホンが鳴る。窓を閉めていれば聞こえなかっただろうこの音は、きっとセンパイが買い出しから戻った合図だ。
「レン、俺行ってくるから……その、服、ごめん破っちゃって」
「あぁ、後でお前の家に請求書送っとくよ」
目を潤ませているが冗談を言えるくらいには精神的に安定しているようだ。俺はひとまず胸を撫で下ろし、玄関へ向かった。
「レン……レン、レンっ、レン……!」
大好きなレンの上に跨っているという状況に興奮し、俺は弱々しく抵抗するレンのシャツのボタンを引きちぎった。
「も、もち……!? 何してるんだよっ、やめろよ!」
肌着をめくる俺の手を押さえるレンの手を掴み、もう片方の手と一緒に頭の横へ持ち上げる。
「好きだって言ってるだろ、ふざけてなんかない、冗談なんかじゃないっ! 本気なんだ、本当で好きなんだ! なんで……なんで破ったりするんだよ! なんで俺の気持ち受け取ってくれないんだよ! 俺の幸せ願ってくれるなら俺のこと好きになってくれよぉっ!」
レンの頬に大粒の涙が落ちる。今の俺は駄々っ子でしかない、最悪の行動だと分かっているのに自分を止められない。俺はもう、俺を監禁した担任を咎められない。手段さえあれば俺もレンを──
「……だって、俺……女の子じゃないじゃん。もちは女の子がいいんだよな? 言ってたもんな、俺が女だったらよかったって! なんで女に生まれてこなかったんだってネチネチ言ってきたもんな!」
「レ、レン……? いや、俺は……男のお前が好きで」
「嘘つきっ! 嘘つき、嘘つきっ……! 女になれって何年もずっと言ってきたくせに! 俺の言うこと聞かずに変な連中とつるんで挙句レイプされてあっさりメス堕ちかまして「やっぱ男でもいいです」はないだろバカもちふざけんなぁっ! 背伸びませんように髭生えませんように声変わりしませんようにって毎日毎日毎日毎日怖くて怖くてっ……!」
何年も……あぁそうだ、俺はことある事に言ってきた。冗談のつもりで、いや、冗談に聞こえるように、無意識に何度も何度も告白していたんだ。
「女だったら付き合いたい」なんて最低の言葉で。
「レン……レン、ごめん、俺……ごめん、本当にごめん……でも好きなのは本当なんだ、本気なんだ、好きだよレン……大好き。男でも女でも、レンが好き」
レンは俺がしつこく言っていたから女の子になりたがっていた。つまり俺のことが好きなんだ。なら、このキスに応えてくれるはずだ。
「……っ、やめろよ」
顔を近付けるとレンは横を向いてしまった。俺の唇はふわりと柔らかい頬に触れる。
「レン……? ぁ……ご、ごめん」
まずい、早まったか? この確執さえどうにかすればレンが応えてくれるのは間違いないのに、俺達は両想いなのに……
「俺はお前と付き合う気なんかない。キスもセックスも絶対しない。彼氏居るんだろ? しかも二股して……その上俺も欲しいって? 贅沢言うなよ。どけよ」
「…………嫌だ。キスしてくれるまでどかない」
レンの怒りを冷ます方法も、レンを口説き落とす言葉も分からないガキな俺はガキらしく駄々を捏ねた。
「レン、本当に好きなんだ。付き合ってくれるなら二人と別れる。レンだけにする。もう絶対浮気しないから……お願い」
自分でも守れるとは思えない最低の約束をチラつかせ、更にレンの神経を逆撫でする。
「……もち、悪いこと言わないからミチと付き合ってろよ。あの子いい子だから。形州はちょっとヤバそうだけど……まぁ、案外出世しそうだしな。どっちでもいいからさ、俺だけは諦めろよ」
「…………レンも、俺のこと好きだろ? なんでそんなこと言うんだよっ……」
「自信満々だなおい……俺と付き合ってもすぐ後悔するぞ」
「しない! レンがどんなえげつないプレイ要求してきても俺応えてみせる!」
レンは目を丸くして俺を見つめ、不意に噴き出したかと思うと大笑いし始めた。
「えげつないプレイって……はははっ! そういう意味じゃねぇよ、バカもち……」
笑われたのは心外だが、怒りなどは少し弱まったように思う。
「レン……レンは、俺のこと好きなんだよな?」
「お前には幸せになって欲しい……俺の願いはそれだけなんだ、だからさ、みっちーと仲良くな」
押さえつけた細い身体は弱々しく、本気になれば犯すのも殺してしまうのも出来そうな気がした。
「俺が誰かと付き合う前だったら、俺が付き合いたいって言ったら……付き合ってくれた?」
「………………頼むからどいてくれ。お前のこと嫌いになりそうだよ」
レンは俺の瞳をまっすぐに見つめて言った。俺はレンの手を離し、彼の上からどいた。膝を抱えて座ってそれ以上動く気になれなかった。
「痛て……手首痛いっての。力強くなったな、もち。成長をひしひしと感じるよ……」
ぽすん、と髪の上にレンの手が乗る。力ない愛撫を受けた俺は自分の膝に顔を押し付けた。
「…………なぁ、ちょっと気持ち悪い話したいんだけど引かないでくれるか?」
「うん……」
俺がレンを気持ち悪く思うなんてありえない。俺にとってレンは完璧なアイドルなんだ。
「俺な、お前のお母さんになりたかった。お前を産んでやりたかったんだ。意味分かんないよな? でもさ……俺に抱きついて、泣いてさ、俺にだけ甘えてくるお前見てたらさぁ……もうすっごい母性本能膨らんじゃってさ」
温かい。頭を抱かれている。恋心ゆえの鼓動の激しさは今は落ち着き、胎児のように丸まって甘える。
「…………まま」
「……はははっ! それ、前もやってたな。赤ちゃんプレイがお好みでちゅかー? はは……ごめんな、お前の母親じゃなくて……女の子でもなくて、ごめんな……ごめんな、もち、ごめん」
この謝り方には聞き覚えがある。確か、中学生の頃──女装させられたレンを見て「美少女じゃん、なんでマジの女子じゃねぇんだよ」なんて軽口を叩いた時──レンは笑いながらも悲しそうな目をして今と同じように「ごめんな」と謝っていた。
レンが謝ることなんて何もないのに。
「レンっ……! レン、ごめん、レン……謝るのは俺だ、ずっと俺、全部俺、いつも俺が悪いんだ」
蹲るのをやめてレンを抱き締める。か弱い身体は俺の腕の中でもがくが、俺は強く抱き締めて彼を離さなかった。
「ごめん……レン、ずっと嫌だったんだよな」
嫌だったなら、傷付いていたなら、そう言ってくれたらよかったのに。そうしたら俺はもっと早くにレンの気持ちに気付いて、俺自身の恋心にも気付いて、今頃はレンと──そんな都合のいい妄想はやめろ。今責めるべきなのは俺だけだ。
「もち……やめてくれよっ、離してくれ……こんなことされたらっ……! せっかく諦めたのに、俺……また」
諦めた? 何を? 俺を? またって何? また好きになってくれたの? そうだ、そうに違いない、やっぱりレンも俺が好きなんだ!
都合のいい思考回路は両想いでQEDを叩き出した。
「レン……俺のこと好きだよな、なぁ頼むよ、俺と付き合って、お願い、レン……今度こそ大事にするから」
「嫌だっ! やめてくれ、もうやめてくれよっ! もう、もう俺は……全部諦めなきゃいけないんだ、お前のことも将来のことも何もかもっ!」
「な、なんでそんなに嫌がるんだよ! 何もかもって……そんな、大げさな。俺もレンが好きだって言ってるじゃん! レンも俺が好きなんだろ!? なんで、なんでそんなに……」
「大好きだからだよっ! お前が不幸になるって分かってて俺なんか選ばせられるわけないだろ!? こんな体で……お前を幸せになんて出来ない」
「こんな体って……だから、俺は男のレンが好きなんだって。ミチもセンパイも男だし……ん?」
レンの説得中、インターホンが鳴る。窓を閉めていれば聞こえなかっただろうこの音は、きっとセンパイが買い出しから戻った合図だ。
「レン、俺行ってくるから……その、服、ごめん破っちゃって」
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