いわくつきの首塚を壊したら霊姦体質になりまして、周囲の男共の性奴隷に堕ちました

ムーン

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後輩にラブレター書いてみた

何もすることが出来ず、ただ従兄の泣き声を聞いていると彼の部下がスマホを奪ったらしく、冷静な声でセンパイが搬送された病院の名前を知らされた。

『あんな奴に教えんなぁっ!』

『し、しかし……彼と話をつけさせなければ』

『しゃあしい!』

ガタガタと物音の後、電話は切れた。俺は当然制服を着直して財布とスマホだけを持って如月宅を出た。



ミチからの着信を無視して走り、電車を乗り継ぎ、また走り、俺はようやく病院に辿り着いた。もうこの病院の常連だな。

「あっ……お、お兄さんっ!」

センパイはまだ処置中で彼には会えない。部屋の前の椅子に座り込んでいる従兄を見つけ、スーツ姿の部下達に囲まれた彼に声をかける。

「秘書様、彼が……」

「ぁ……? あぁ……」

掴みかかってこられることも想定していたが、従兄は一瞬顔を上げただけだった。

「あの……センパイ、えっと……どれくらい、ですか?」

従兄からの返事はない、彼は自分の膝に顔を押し付けて泣いており、うわごとのようにセンパイの名前を呼んでいるだけだ。

「月乃宮様」

従兄の部下の一人が俺に手招きをする。彼はそっと俺に全てを教えてくれた。

センパイは家に帰ってすぐに遺書をしたため、浴槽に水を溜めて手首を切ったらしい。従兄はセンパイが風呂に入ったのだと思い、リビングでくつろいでいた。しかし風呂が焚かれていないのを不審に思い、様子を見に行ってセンパイのリストカットが発覚した。
浴槽の中は真っ赤に染まり、センパイに既に意識はなかったそうだ。従兄はすぐに応急処置と救急車の手配を済ませ、その後で半狂乱になって壁に頭をぶつけ始めたらしい。
その後、あの黒い高級車で救急車の後を追いながら部下が俺に電話をかけさせた。

「よく……分かりました、ありがとうございます…………センパイ、助かりますよね?」

俺は心のどこかでまだ甘えていた。どうせ無事だと、きっと助かると、根拠のない安心を持っていた。

「骨までいってたんだぞこのクソガキっ! お前のせいでっ、お前のせいでぇっ!」

「秘書様っ、秘書様落ち着いてください! クソっ……おい、その子どっか連れてけ!」

突然暴れ出した従兄は部下に数人がかりで押さえられてもまだ俺の方へ向かおうとしてくる。俺に説明してくれた部下が俺の手を掴み、俺は待合室へ連れていかれた。

「ここならゆっくり話せますね」

「はい……ぁ、あの、センパイ、センパイ……死んじゃうんですか? ほ、骨って、手首の骨……? 結構中にありますよね……嘘だ、こんなとこまで切るなんて、センパイ筋肉すごいのに、切ったら痛いのに、こんなとこまでなんて、そんなのできっこない」

俺の向かいに座った部下は深いため息をついた。

「これが國行様の遺書です。秘書様にあてられたものですが、私はあなたも見るべきだと思います。しかし渡すわけにはいきませんので、読み上げさせていただきます」

破った跡が目立つノートのページ一枚が、クリアファイルに挟まれている。
まず、従兄へこれまでの感謝。自殺についての謝罪。そして何故死を選ぶか、どうして未来に希望を抱けなくなったかが丁寧に説明された。

「いつからかノゾムが俺の全てになった。ノゾムのために生まれてきたと悟った、ノゾムのために存在していると確信している。ノゾムに出会って、ノゾムの優しさに触れて、人間らしくなれた。ノゾムには感謝してる──」

「感、謝……? 嘘だっ! なんで、なんでそんなっ……!」

恨みこそすれ、センパイに俺に感謝する理由なんてない。

「──ノゾムが笑っていると嬉しくなった、ノゾムが泣いていると悲しくなった、こんな経験今までなかった。ずっと空いていた穴が埋まった気分だった──」

「もう……もう読まないで、もう……!」

「──兄ちゃんも言ってくれただろ、最近表情豊かだって。それは多分ノゾムのおかげだったんだ。俺はノゾムに救われたんだ──」

「もうやめてくださいっ! 耐えられない!」

「黙って聞け!」

泣き叫んだが怒鳴られて萎縮し、声が出なくなった。部下は咳払いをして読み上げを続ける。

「──悲しみの中で死ぬわけじゃない。俺は幸せだった──」

「嘘だっ……嘘だぁ……せん、ぱい……」

「──もうノゾムと過ごした時間以上の幸せは手に入らないから、もう生きるのをやめる。それだけだ。後悔があるとすればフラれる前に死ねばよかったと、それだけだ──」

吐きそうだ、喉が痛い。もう何も聞きたくないし考えたくない。

「──いや、嘘だ。後悔は山ほどある、もっとずっとノゾムと過ごしたかった。でももう無理だから仕方ないんだ。今まで迷惑と金をかけさせてごめんなさい兄ちゃん──」

俺はどこで何を間違えたんだろう。

「──兄ちゃん、不出来な従弟の最後の我儘を聞いてくれ。ノゾムには何も知らせないで欲しい、優しいあの子はきっと気に病むから、冬までは失恋相手に会うのは嫌だと言っていると誤魔化して、その後は遠くの大学へ進んだのだと言って欲しい。絶対に何も言わないでくれ、ノゾムの不幸になりたくない。ノゾムには心の底から幸せになって欲しい──」

なんで、こんなに優しい人に、俺は……

「これで終わりです。注文していた服が来週届くとか、そういうのはまだ書いてありますが……あなたに関係があるのはここまでです」

部下は席を立つ。俺の相手はもう終わりらしい。俺はこの後どうすればいいのだろう。

「あぁ……あなたは怪異に取り憑かれていますから、今死んだらそいつらの養分になるだけですよ」

ポケットの中でスマホが震えている。何も言わずに家を出たからミチが怒っているのだろう。

「それでは」

今度こそ部下は去り、俺は待合室で一人になる。ミチからの電話を無視して写真フォルダを開き、センパイの写真を眺める。俺を撮るのは好きなくせに撮られるのは嫌がったから、彼の写真はそう多くない。

「國行、センパイ……」

寝顔の隠し撮りがいくつかある。寝ていると幼く見えるのは普段のギャップのせいだろうか。あの恐ろしい三白眼が見えないと頬をつまんだりしたくなる。

「なん、で……なんでっ、なんでぇっ……」

ギョロっとしていて怖いはずなのに、あの目は俺に対しては優しかった。いつの間にかあの目に安心するようになっていた。

「何してる、早く押さえろっ!」
「バカなっ、まだ動ける状態じゃ……」
「ひ、引きずられっ……ぅわあっ!」

なにやら外が騒がしい、彼の死を知らせる声が聞こえたらと思うと怖くて、俺は耳を塞いだ。

「やだ……やだっ、死んじゃやだっ、やだぁ……」

もう二度とあの目に見下ろされることはないのだろうか。あの太い腕に抱かれることも、優しい声を聞くことも、体温を感じることも──

「嫌……嫌だっ! センパイっ! センパイ……ごめんなさいセンパイっ、ごめんなさい、別れないからっ、別れるのやめるからぁっ! センパイずっと幸せにしてみせるから死なないでよぉっ!」

意味のない叫びを一人きりの待合室に響かせる。

「…………その、言葉……本当か」

返事があった。
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