いわくつきの首塚を壊したら霊姦体質になりまして、周囲の男共の性奴隷に堕ちました

ムーン

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彼の名前は

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サングラスにスーツ姿の怪しい男達、従兄の部下だろう彼らが走ってくる。うち二人が結界の前で同時に聞き取れない言葉を呟き、結界を消した。

「あぁああっ! 赤いっ、ひぃいっ!? 睨むなっ、あぁあっ! 痛いっ、ぅあぁあああっ!」

幻覚と激痛に悶え狂う従兄──の、身体を乗っ取った怪異。

「躊躇するな、秘書様の命令通りに……!」

部下達は事前に命令を与えられていたらしく、金属製の拘束具が従兄に取り付けられていく。熊でもそんな扱いは受けないぞと叫びたくなるほど厳重な拘束を施された従兄の姿は見るに堪えない。

「お兄さん……あ、あの、お兄さん……大丈夫ですよね、死にませんよね……?」

拘束された従兄の身体は車のトランクに押し込まれた。その扱いも命令なのか?

「答えてくださいよっ!」

「黙れ! あのクラスの怪異の討伐に一人の死者で済むなんて本来はありえないんだ!」

「死者って……お兄さんは」

「ぁ…………すまない、怒鳴って」

「ぁ、い、いえ……」

従兄は部下に慕われる人なのだろう、少なくとも今話している彼はかなり動揺している。

「名前さえ奪われなければ……本人が本名を言わなければ、魂を破壊されることはない……はずだ。秘書様は本名を怪異に教えなかったよな? 偽名だったよな?」

名前……? 従兄は犬鳴塚いぬなきづか 真尋まひろと名乗っていた。

「わ、分かりません……名前は言ってたけど、それが本名かどうかは」

「俺も……秘書様の本名は知らない。若神子はおそらく本名ではないし……」

「月乃宮様、家までお送り致します。お乗りください」

別の者に促されて従兄が運ばれる車とは別の車に乗り、俺は自宅前まで送られた。窓の外を流れる静かな夜の景色を見る俺の頭にあったのは「センパイに何て言えばいいんだろう」だけだった。



自宅ではなく如月家に戻った俺はミチに抱きつかれた。呆然としながらも俺は彼を抱き返し、土埃などで汚れた服を着替え、もう一度シャワーを浴びて彼と抱き合って眠った。
翌朝、レンの父親が帰ってきた。彼は気を失う前の記憶が一部欠けていて、停電の暗さで転んで頭を打ったと認識していた。気付くと病院に居た件に関しては俺とミチが救急車を呼んだことにされていた、従兄の部下達の説明だろう。

「恥ずかしい限りだよ……ミチちゃんもノゾムも無事でよかった、停電の中二人だけで心細かったろ、すまなかったね」

頭に包帯、首にコルセット、痛々しい姿の彼はまず俺達の心配をした。

「お父さん……」

「お前にお義父さんと呼ばれる筋合いは……ぁ、いや……そうだな、ノゾム、お前も私の息子だよ」

俺のせいで怪我を負ったなんて知らない父親は昔のように優しく俺を抱き締めてくれた。従兄のこともあって後から後からポロポロと涙が溢れた。

「昨晩はそんなに怖かったのか? おいおい、停電程度で泣くような男にレンはやれないぞ」

そう言いながらも父親はしゃくりあげる俺の背や頭を優しく撫でてくれる。

「あ、ぁあっ、ぁ、あ、あのっ、おおっ、ぉ、おじさんっ……つつ、つ、月乃宮くんのお父さんなんですかっ? とと、と、隣の家と不倫……?」

「違う違う、俺は死んだ妻一筋だよ。ノゾムの父親は早くに亡くなったし、母親が酷いからな……幼稚園や小学校の頃、よく面倒を見てやってたんだ。父親代わりなんだよ」

「な、ななな、な、なるほど……ぁあ、あの、ぼぼっ、ぼ、ぼ、僕……の、おお、お父さんにも……なな、なってください」

ミチはそっと父親の肩に手を添える。

「ミチちゃん、お父さんは?」

「わわ、わ、わ、分かりませんっ……でで、でも、僕できたせいで店辞めさせられたとかっ……たた、多分お客の誰かだって、お母さんは」

「あぁ……分かった、もういいよ、おいで。あまり大したことはしてあげられないけれど、お風呂とご飯とお布団はいつでも用意してあげるよ」

俺を抱き締める腕が片手に変わり、空いた手はミチを抱いた。血の繋がりのない二人の息子もどきを抱き締める父親の表情は嬉しそうに見えた。



昼食の後、父親は会社に向かった。俺達は再び二人きりになる。

「あ、あの……つつ、月乃宮くん、すす、す、すごく無口だけど……どうしたの? きき、昨日、何かあったの?」

お化けはどうなったのかとミチは昨晩から聞いてきていたが、俺はずっとそれを無視していた。落ち着いてきたし、何も知らない父親も出社した。そろそろ話さなければ。

「お化け……除霊したんだ、俺にはもう何も取り憑いてない」

「ほほっ、ほんとっ? よかったじゃん! なな、なんでそんなに暗いのさ」

「俺に取り憑いたお化けは……別のお化けによって、俺に封印されてたんだ。その別のお化け倒して封印が解けたから、俺以外に取り憑けるようになって……今お化けはお兄さんの体にいるんだ」

「え、ぁ……あぁ、あ、あの人に移ったの? へぇ……」

「取り憑いたんじゃなくて、体を乗っ取らせたんだ。ただ取り憑かせるんじゃお化けへの旨みが薄くて作戦に乗ってこないしっ、取り憑かせただけじゃ首輪で体内に封印出来ないしっ、俺を助けるためにっ、怪異を逃がさないためだけにっ、あの人はっ……!」

「つ、つつ、月乃宮くん? おお、落ち着いて、そんな早口じゃ何言ってるのか分からないよ」

「あの人は死んだんだっ! お兄さん……本名は、真尋さん……真尋さん、死んじゃったんだぁ……」

「え……?」

数時間かけて落ち着いた気持ちはまた昨晩の状態に戻った。俺のせいでとうとう人が死んだ、それも大恩人のあの人が、大好きな恋人の従兄が──その罪悪感で俺はまた泣きじゃくり、塞ぎ込んだ。

「し、しし、死んだ……? 嘘でしょ……嘘だ、そんなっ……」

俺を見ていれば嘘かどうかは容易に分かる。ミチにも分かっている。

「そん、なぁ……」

悲しそうな、残念そうな声。それを最後に俺達は共に無言になった。身動ぎもせず過ごして数十分後、インターホンが鳴った。

「あ…………え、と……ぼぼっ、ぼ、僕出てくるよっ!」

ミチが早足で玄関へ向かった。玄関の扉が開く音の早さからして、彼は多分覗き窓で確認せずチェーンをかけることもなく扉を開けた。父親が帰ってくるにはまだ早いから警戒するべきなのに、この空気から逃れたい気持ちが強かったのだろう。

「つ、つつ、月乃宮くん……」

ダイニングの扉を開けたミチは気まずそうにしていた。その背後から褐色肌の大男が現れ、三白眼が俺を捉えた。

「お……お兄さんっ!?」

「……俺だ、國行だ。そんなに似ているか?」

ふっ、と微笑む。その表情変化の微細さは、純朴そうな慣れていない笑い方は、従兄のものではない。彼はもっと胡散臭く、嘘臭く、口元だけで上手に笑う。

「センパイ……」

「……俺が退院出来たと言うことは、お前に取り憑いたモノは祓われたんだな?」

「う、ぅ、うんっ、月乃宮くんはもう自由の身だよっ! あ、あぁ、あの、せせせ、せんぱい、なんでここに居るって……?」

「……兄ちゃんの部下の人から聞いた」

センパイの明るい様子から察するに、その部下の人とやらは従兄のことを伝えなかったんだな。

「……兄ちゃんが祓ったんだよな、今どこに居るんだ? ミチ……だったか、お前知らないか?」

「ししっ、し、し、しし、知らないっ!」

ミチも伝えないことを選んだ。部下はともかく、ミチには俺に押し付けようなんて気はなかっただろう、ただ自分が言いたくなかっただけだ。

「…………強い怪異の傍に居ると気が滅入り、死にたくなるらしい。取り憑かれたお前が傍に居るだけで精神が不安定になる……兄ちゃんはそう言っていた、だからお前も長時間共に居ないようにと……俺は何故かそれを信じられず、俺とお前を引き離そうとする兄ちゃんを敵視していた」

センパイは何の断りもなく俺の隣に座った。

「……間違っていた。兄ちゃんへの不信感すら、怪異の影響だったんだな。頭の中の霧が晴れた気分だ、ノゾム……お前と恋人になった日に近い。なんの不安もない、兄ちゃんにも謝りたい、仲直りしたい……」

俺に取り憑いた怪異の影響を受けて精神不安定になっていたセンパイはそれから脱し、晴れやかな心持ちだろう。

「…………今はとりあえず、お前とキスでもしたいな」

そんなセンパイの心をすぐに曇らせるのは気が引ける。そう言い訳しながら俺はとりあえずキスしたい一心で黙り、後で殴られようと諦めて口を突き出した。
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