いわくつきの首塚を壊したら霊姦体質になりまして、周囲の男共の性奴隷に堕ちました

ムーン

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彼氏の後に続けなかった

怪異堕ち、レンの今の状態をオカルトのエキスパートである社長はそう言った。赤紫の瞳には憐憫も焦燥も感じられない、氷を思わせる瞳と表情からは事態の深刻さは測れない。

『どうにも、ならない……? なんですかそれっ、怪異堕ち? 何それ……俺、人間に戻れないってことかよ!』

「一回成長したもんは戻りませんよ、クジラがイルカになりますか?」

『はぁ!? んっだよ、その、他人事みたいな言い方……!』

「そんなつもりはなかったんですけどね、気に触ったならすいません。でも他人事ではありますし」

従兄の冷めた態度にレンは垂らしていた茶髪をまた揺らめかせ始めた、どうやら感情の起伏に合わせてある程度勝手に動くらしい。

「死後に怪異と化すことはよくある……でも生きながらに怪異堕ちなんて平安の世ですら滅多になかった。前から逸材だとは思ってたけどこんな貴重な症例を作ってくれるなんて……データを取っておかなきゃ。犬、この場を頼む。僕は機材を取りに行ってくるよ」

『ふざけんなっ、行かせるか! 俺を元に戻せ!』

レンが社長に飛びかかる。従兄の持つバールとレンの爪が衝突し、剣戟の響きに似た音が鳴る。

「怪異堕ちすると精神構造も怪異寄りになっちゃうんですよね……つまり、キレっぽくなるってことです。負の感情を抱きやすくなって、その感情のままに暴れ回る、厄介でしょう?」

冷静に話す従兄の背後を平然と社長が歩き去っていく、機材とやらを取りに行くのだろう。彼にとってレンは大事な弟子じゃなかったのか? モルモット程度に考えていたのか? 少なくとも今はただの調査対象としか見ていないように俺は感じた。

『俺は、俺は……お前らの言う通りにやってただけだ! メモ取りながら怪異退治やって、一人の時は言われた通り瞑想してっ、読んどけって言われた本をマーカー引きながら読んだ!』

「真面目ですね。それやってるだけなら、別に怪異堕ちなんてしないはずですが……心当たりは? 少なくとも、俺が最後に見たあなたは怪異堕ちの兆候すらありませんでしたよ」

行き場のない怒りをぶつけるようにレンは爪を振るい、従兄はそれを全て余裕そうな顔でいなした。バールという金属の塊と何度もぶつかり合っているのに、レンの爪は一本も折れていないし、レンが痛がる様子もない。

「レン……」

「……ノゾム、出るな」

「話だけでも! レン、レンこっち向いてくれ、レン!」

『心当たり……心当たり? お前らがこの街出てった後…………ノゾムを助けに行った時に、なんか……バケモン食って、その後ノゾムとヤって……ノゾムが美味そうに見えて、やばいって思って、慌てて他のもんで……幽霊とかで、腹膨らませて』

センパイに押さえられながらも結界から顔だけを出してレンを呼ぶ、だが、レンは自分の頭を引っ掻くようにしていて俺の声に気付いてもくれない。

「あー……完全にそれですね、怪異食ったんでしょ、んで完璧に消化しちゃったんだ。如月様は前にも月乃宮様に取り憑いた首塚の怪異を食べましたよね? あの時は向こうの方が強かったから消化出来なかった、でも、今回はあなたの方が強かった」

『食ったら化物になる……? そんな馬鹿な、人間は鳥食っても空飛べるようにならねぇだろ!』

「肉体と霊体じゃ違いますよ……んー、だからぁ、ほら……使徒食べた初号機的な? ぁ、アニメ版ですよアニメ版。分かります? 最近の子映画くらいしか見てないからなぁ……量産機が超好きなんですよね俺、白いから」

『ふざけんな……ふざけんなよっ』

「怪異食べて、怪異の持つ負のエネルギーを吸収もしくは生産、そして放出する能力を得た……つまり、幽霊を食ったり人を妬んだりして溜めたエネルギーを怪奇現象として消費してるってことです」

『アレしか方法がなかったんだ、あの時はっ……腕が、だって、口しかなくてっ……なのに、なのになのにっ、なのにっ! それで怪異になった!? ふざけんなぁあっ!』

レンが叫んだ瞬間、まだ昼前なのに街灯が眩く光った。

「國行っ! 中入れっ、ドア閉めろ!」

それまでとは違う焦った声にセンパイは即座に反応し、俺とミチを玄関に転がして扉を閉めた。扉が閉まる音に一拍遅れてまるで台風の中に一瞬だけ入ったかのように家全体からガタガタと窓が揺れる音がして、玄関の灯りが消えた。

「…………兄ちゃん? いつ開けていい? 兄ちゃん?」

家中の灯りが消えている、玄関の電灯は人感センサーのはずだから身動きを取れば昼間でも点くはずなのに、手を振っても暗いままだ。

「ね、ねっ、ねぇっ! ねぇ! どぉいうことっ? きききっ、如月くんどうなったの? お化けになっちゃったの? なんで? 死んじゃったの? 死んでないよねっ、身体に入ればいいんじゃないの?」

「……落ち着け、ミチ。兄ちゃんが何とかしてくれる、きっとすぐに元の如月が帰ってくるよ」

半分泣いているようなミチにセンパイは気休めを言う。

「化物になったって……なんだよそれ。ちょっと怒りっぽくなって、ガラスとか電球とか壊しやすくなって、動物に嫌われるようになっただけだろ……レンは何にも変わらない」

「…………ノゾム、あのサイズのバールと爪で打ち合えるようなのになってもまだ、変わってないと言えるのか」

「センパイだって鉄パイプ腕で何回受け止めても平気だったじゃないですか」

同じことをした先輩は一発で腕にヒビが入ったのに。

「今だってレンは混乱して、怖くて、助けて欲しいって思ってるだけのはずです。通してくださいセンパイ、俺ならレンをなだめられます」

「…………………………お前の、そういうところが好きだ」

薄暗い玄関でセンパイの顔を見上げる。震える声で愛を告げた彼の目は潤んでいた。

「……分かった、しっかり如月を助けろ。だが条件がある、俺にお前を守らせろ。如月がお前に手を出すとは考えにくいが、無意識にガラスだのを割るみたいだからな」

「センパイが庇ってくれるってことですか? そんなのダメです! 俺はガラス浴びてもいいけど、センパイは浴びちゃダメです!」

「…………なら出さない」

玄関扉に手をついたセンパイは悪戯っぽく笑った。

「ぅ……分かり、ました。レンを落ち着かせれば何か飛んできたりなんてありませんよね……」

「…………もう一ついいか? 質問だ」

「はい」

「………………もしも俺が如月と同じようなことになっても、お前は化物になった俺を受け入れて、今みたいに助けようとしてくれるか?」

「当たり前じゃないですか」

「……口だけじゃないんだろうな、お前は」

むに、と頬をつままれる。

「じゃあミチ、行ってくる。結界のおかげかまだ割れてはないみたいだけど、一応窓には近付くなよ。覗き窓覗くのもやめとけ」

「ま、ままっ、ま、待って、待って……僕も、僕も行く」

「怖いんだろ? やめとけ。危ない。じっとしとけ」

センパイがドアノブをひねる。俺はミチに手を振って外に出た。

「い、いい、行く……僕も、如月くんの力になりたいっ……恩人、なんだっ……ノゾムくんだけに危ないことさせるのも嫌っ……ぼ、ぼ、ぼぼ、僕も行くっ、行くから、待って」

ミチは自分を抱き締めるように二の腕をぎゅっと掴んでおり、内股になってガクガク震えていた。

「ぼ、ぼ、僕……僕も、君の頼りに」

「お前は俺の癒しだよ。安全なとこで待っててくれ」

ミチを除け者にするような真似はしたくないと思っていたが、人には向き不向きがある。勇気を出すこと、強いことばかりが正義じゃない、怯えて隠れることが大事なことだって多いはずだ。

「行ってきます」

一歩も踏み出せずに泣き出してしまったミチにキスをして、外へ飛び出した。
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