いわくつきの首塚を壊したら霊姦体質になりまして、周囲の男共の性奴隷に堕ちました

ムーン

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違和感と喪失感に満ち満ちた夢

何がおかしいのか分からないのに、どんどん馴染んでいっているはずなのに、強烈な違和感が拭えない。高校に入学してからずっとそうだ、幸せなはずなのに居心地が悪い。

「もーちっ、おはよっ」

毎朝幼馴染の可愛い女の子が起こしに来てくれる、ベタベタな展開。幼い頃からの婚約者を素直に愛し返せばいいのに、俺は何故か彼女の柔らかく頼りない女性らしい身体に物足りなさを覚えている。

「もち……?」

何か大切なものを忘れているような気分にさせられるから、最近はスキンシップを控えている。寂しげな顔で俺を見つめるレンに罪悪感を煽られる。居心地が悪い。

「おはようノゾム、レンちゃん。今日はフレンチトーストよ」

優しくて料理上手な母。幼馴染との関係を茶化したりせず、静かに見守ってくれている。まさに誰もが望む理想の母親。俺はそんな母の元に生まれたことを幸福に思うべきなのに、どうにも居心地が悪い。

「最近元気ないなぁノゾム、高校に慣れないのか? 辛かったら少しくらい休んでもいいからな」

父が生きている、しかも優しい。彼への違和感が一番大きいかもしれない。そもそも顔に見覚えがないのだ、この十数年間毎日見てきた顔のはずなのに。気持ち悪い、居心地が悪い。

「おはよぉ、ノゾムくん如月ちゃん」

ミチがすんなりと挨拶出来るのも不自然だ。彼の吃音なんて聞いたことがないはずなのに、もしあったら彼はそれをとても気にして暗い性格になっているだろうに、吃音症なんてない方がいいとミチは考えるだろうに、俺はミチの可愛い個性だと思ってしまう。

「ノゾムくん……今日もなんか顔色悪いね」

どもらずに俺の名前を呼ぶミチは、俺以外の人間とも平気で仲良く話すミチは、ドジらずに球技で活躍してみせるミチは、髪がボサボサでなくて目が隠れてもいないミチは、あんまり可愛くない。

「お大事にねっ、如月ちゃん様子見てあげてね」

「ったりめぇだぜ」

レンと一緒に仲良く過ごしていたら、ミチには嫉妬して欲しい。俺の腕に抱きついて自分にも構えと涙目でねだって欲しい。そんなミチ、本当のミチとは全く違うはずなのに、俺にとってはそっちの方が本物のように思えてくる。

「一時間目は理科か、理科室だったな。俺日直だから鍵係だぜ、面倒臭ぇ」

「そっか、じゃあ俺先行ってるから」

「えっ? 待っててくれないのか? んだよ……付き合い悪ぃの」

レンの拗ねた声に振り向きもせず俺は一人で理科室へと向かった。机に筆記具を置き、準備室の中へ入った。

「ん……? 月乃宮くん、どうかしましたか?」

「センセ……」

くせっ毛の洒落たマッシュルームヘアや顔立ちに違和感はないが、温和な態度は気に入らない。根野はもっと気持ち悪い雰囲気をまとっている、爬虫類のような……蛇のような執念深さと気味の悪さのある視線を俺に向けていたはずだ。そんな経験一度もないのに、そう思えてならない。

「せん、せぇ……」

授業で使う道具の準備をしている根野の懐に潜り込み、抱きついた。根野は慌てて俺を引き剥がし、驚いた顔で俺を見下げた。

「ど、どうしたんですか? 月乃宮くん」

「センセ……?」

根野は俺が抱きついたら喜んでくれるはずだ。二度と離さないと伝えるように強く抱き返したり、スタンガンを首に当てて車に運び込むようなヤツだ。そんな人間が教師になれる訳がないだろう、数日前に初めて会ったばかりの人間にどんな印象を抱いているんだ俺は……違う印象じゃない経験だ! 俺は可哀想で気持ちの悪いクズの根野を知っているんだ!

「どぉ、して……なんで、なんでぇ……」

確かに俺は根野の孤独を癒して愛し合ったはずなのに、ミチともそうしていたはずなのに、その記憶がない。感覚だけが微妙に残っている。感覚と違う男達が不気味で、悲しくて、寂しくて、切なくて、何も分からないまま俺は記憶と現実と感覚のギャップに咽び泣いた。



俺は体調が悪いということにさせられて保健室に連れてこられた。根野は保健室のベッドに俺を寝かせると俺に手を出さず、すぐに保健室を出ていった。保健室のベッドの上で根野にレイプされなかったのが何故か悲しくて悔しくて、また泣いた。



俺は仮病を決め込んで放課後まで寝て過ごした。休み時間の度に会いに来たレンが迎えに来る約束をしてくれていたけれど、俺はレンの迎えを待たず窓から外に出た。

「何なんだよ……」

他者から見れば俺はとても幸せな男なのだろう。なのに俺にあるのは違和感や喪失感ばかりだ。自分の感覚を嫌悪する、本当に頭がおかしくなってしまったのだろうか……そんなふうに悩む俺の視界に、異様に背の高い男が入ってきた。

「センパイっ……!」

二メートル超えの身長、筋骨隆々の肉体、褐色の肌は顔がハッキリと視認出来なくても彼を彼だと認識させた。

「センパイ! 國行センパイ!」

叫びながら彼の元へと走る。理由……理由は何だろう。分からない。でも走った。

「…………お前は、美術部の見学に来てたヤツだな」

スケッチブックを持った彼は鬱陶しそうな目で俺を見下ろした。

「……何か用か?」

「ぁ……あ、の、何……するんですか? 今から」

「…………校舎のスケッチだが」

「隣で見てもいいですか?」

「………………邪魔はするなよ」

センパイは校庭をウロウロと歩き回り、ある一点で止まると座り込んでスケッチブックを開いた。俺はスケッチブックに影を落とさない位置で彼が絵を描く様子をボーッと眺めた。センパイは俺を気にしていない、俺ではなく鉛筆と紙にばかり触れている。そのうちどうしようもなく寂しくなって、涙が溢れ出した。

「…………」

声を殺してはいるが、俺が泣いていることにセンパイは気付いているはずだ。なのにセンパイは振り向きすらしてくれない。こんなのセンパイじゃない。

「もーちっ、何してんだよこんなとこで……待ってろって言っただろ」

俺はセンパイに何を期待していたんだろう。美術部に見学に行った時に見かけただけの他人に、どうして……他人じゃない、他人じゃないはずなのに、分からない、思い出せない、大切なことを俺はたくさん忘れている。

「レン……レンっ、おかしいんだよ俺」

「あぁ、おかしいな。家に帰ってゆっくり休もうぜ、レンちゃんが癒してやんよ。ぱふぱふしてやろうか?」

可愛らしいウインクだ、でも、どこか物足りない。

「記憶が……違うんだ、今俺の頭にあるのは俺の記憶じゃないんだよ。俺じゃない……可愛い女の子の幼馴染が居るのもっ、優しい両親に愛されてるのもっ、コミュ力の高い美少年の親友が居るのもっ、まともな担任に教わってるのも、冷たいセンパイが居るのも! 俺じゃない!」

「もち……疲れてるんだよお前、家に帰ろう? な?」

「うるさいっ! お前誰なんだよ、俺の記憶返せよぉ! 俺のっ、俺の大事な人の記憶……大切な思い出、返せよぉ……」

「はぁ…………現実世界は辛いだろう?』

ザザン……と波の音が聞こえた瞬間、センパイも学校も校庭も消えた。暗い。何も見えない。暗黒の──海、だ。夜の海。月明かりも星明かりもない夜の海。

『君の幼馴染は女の子になれなんて無茶振り言われず幸せで、君が虐めた子は吃音症でも虐められっ子でもドジっ子でもなくて幸せで、君の先生は生徒に手を出したり暴れ回ったりせずマトモに生きられて幸せで、君の先輩は君に依存して執着して手を怪我したりせず自分の夢に熱中出来て幸せで……何の不満があるの?』

レンの声じゃない。いつの間にか知らない声に変わっていた。

『自分の感覚と違うってだけで、記憶もほとんどないくせに、君以外の全員は幸せなのに、どうしてそんなワガママ言うのかな』

「ワガママって、そんな……だって…………ぁ、そう、だ……鏡の中のレンに聞いたっ、あのレンはそうだっ、男だった、なんで今まで気付かなかったんだ、なんで今まで忘れてたんだよ……アレが、本物……アレがレンだ。そうだっ、夢、レンから聞いた、これは夢だ! 俺がここに引きこもったって誰も幸せになんかならない!」

『あぁ……そう、君が居なければ誰も人生を踏み外さずに生きられたってのは、君の考えであって……そこから組み立てた夢だったんだけどな。これじゃダメか、作り直さないと。記憶も消したつもりだったのに……もっと念入りにごっそり洗わないとかぁ、面倒臭い……ここまで粘る人間居なかったよ? 素直に食べさせて欲しいもんだよ』

雲が晴れ、月明かりが射す。海面からザバンッと現れたのはタコかイカの足だ。巨大なそれに俺は昔見た映画に出てきたクラーケンを思い出した。

『今度こそ君が気に入る夢を作ってくるから、その間は大人しくしていてね』

ぬるぬるとした骨のない足が俺にぐるぐると絡み付く。先端が口の中に押し込まれ、言葉を発することすら許されなくなった。
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