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幼馴染を萎えさせてみた
レンがセンパイに秘書の話をねだり、それから流れは次第に百物語の様相を呈した。怖い話ではなく、萎える話。俺の気分が盛り下がる話、または快楽とは別方面の盛り上がる話、ジャンルは多岐に渡った。
「そ、そそ、それでねそれでねっ、二ヶ月くらい経ってようやく触らせてくれるようになってね、すっごいふわふわで……!」
現在はミチの番。近所の公園に住み着いた野良猫の話だ。自分が食うものにも困っている彼に餌付けの策は取れず、ただただ頻繁に顔を見せて慣れさせていき、今ようやく一定の信用を得たところだ。
「ね、猫ってすごく温かいんだよ、触るとこによっては骨の感じとかも分かって……ぃ、い、生き物だなぁって……へ、変な感想だよねっ」
「……いや、分かる。以前、犬の背を撫でて……背骨がハッキリと分かって、少し怖かった」
「マジ? 俺が昔触らせてもらった犬は背骨なんか分かんなかったけどな」
「い、ぃ、犬は触ったことないや……」
俺もない。散歩中の犬を街中で時折見かけるけれど、触らせてくださいなんて言えやしないし、そこまで興味もない。でもこうして話を聞いていると触ってみたくなってくる、身勝手なものだ。
「……どんな犬だ? 俺が触ったのはプードルだ、昔繁華街でゴミを漁っていてな……捕まえて洗って兄ちゃんに渡したんだ」
「繁華街やべぇな、野良プードル居るのかよ」
「……俺は一度しか見ていない……で、お前の犬は?」
「姉ちゃんの彼氏の知り合いの飼い犬、パグとか言う……顔ぺたんこの変わった犬。シワシワでムチムチだった」
センパイが触った犬は野良で痩せていたのかもしれないし、レンが触った犬は犬と言われて一番にイメージする形とは少し違うみたいだし、もっとなんかこう、柴犬とかそういうザ・犬みたいなのに触れた体験談が欲しい。
「ノ、ノノ、ノゾムくんはっ? 犬とか、猫とか……」
「触った覚え、ないな……ぁ、でも、うさぎ……小学生の時に遠足で行った動物園か何かで、ふれあいコーナーとかで触った気がする」
「お前手ぇ噛まれて泣いてたぞ」
「え、嘘、覚えてない……」
レンは記憶力がいい、幼稚園の頃のことだって覚えている。今も情けない男だが、幼い頃の俺は相当なヘタレだったらしく、カッコ悪いエピソードばかりレンに話される。恥ずかしい、旦那さんらしくない、忘れて欲しい、そんな気持ちでいっぱいだ。
「どうよ動物話は、萎えたか?」
「……動物話と呼べるほどのものはなかったがな」
「ちょっと前の虫話よりよっぽどいいよ……アレでだいぶ萎えたけどさ」
「虫系はみっちー強かったなぁ」
「う、うち、ボロアパートだからねっ、虫エピソードには事欠かないよっ」
怪談話やヒトコワよりも余程寒気がする、数々の虫の話──思い出したくもない。記憶の片隅に追いやって、いや、頭から放り出そう。
「動物話はもう尽きたし、虫エピはみっちーに勝てないし……後は、ヒトコワ?」
「…………兄ちゃん行きつけの高級店は、元ヤクザがやってる店が多い」
「一行で怖いな」
「……俺が兄ちゃんに初めて会ったのは法事の時で、兄ちゃんが俺の親父の頭を後ろからぶん殴ったのが出会いだ」
「イカれてんなぁ」
「……花瓶か壺か、何かだったと思うんだが……幼い頃の記憶だ、上手く思い出せない」
「しかも凶器攻撃かよ……!」
レンと全く同じ感想だ、頷いておきたいが首が動かない。
「ひとこわ……ひ、ひ、人が怖いって意味だよね? えっと、ほ、ほほ、本当の借金取りの人よりねっ、ぅ、う、うりかけ? 取りに来たホストの人の方が、怖いんだよっ! 意外だよね?」
「あー、なんか後払いみたいなシステムあるんだっけホストって……ミチママホス狂かよ救えねぇな」
「しゃしゃ、借金取りの人は顔怖いけどっ、ぼ、僕はほっといてくれてね……ホホ、ホストの人はなんかっ、僕蹴ったりするんだよっ。最近来ないけど……」
「素人のが怖いって訳だな。形州……先輩も心当たりあるんじゃねぇか? 喧嘩慣れしてるヤツより加減知らねぇ素人が厄介ってありがちなんだろ?」
「……いや、俺には判別がつかない」
「お前ほど強ぇと不良も素人も関係ねぇか」
これ、ヒトコワかなぁ。暴力的な人間の話は嫌いだ、気分が落ち込んでくる。俺が不良なのは見た目だけなんだ、中身はずっと陰気で気弱なまま、情けない限りだ。
「なぁ……もうちょい明るい話がいい」
「お前萎えさせるためにやってんだぜ?」
「ゃ、ややっ、病は気からだよっ、気分落ち込んじゃダメだよぉ!」
「一理あるな……んー、じゃあ、もっちーが今一番聞くべき話をしてやろう」
「何だ?」
「お前が苦手な理数の話だ、レンくんが簡単に解説してやるぜ。まずはお前が諦めたモルの計算からだ、そもそもモルってのは──」
気が遠くなっていく。
「──だから三角関数ってのは──」
大好きなレンの声なのに聞き取れない。右から左へ抜けていく。
「──ついでに歴史もやるか、コロンブスはインドに行くつもりで──」
瞼が下りてきた。
「………………ノゾム、寝てないか?」
「──SVCとSVOの違いは……えっマジ? もう寝た?」
勉強が苦手な俺は、中学の時もよくレンに勉強を診てもらっていた。けれどどうしてもそういったものに興味が持てず、大好きなレンの声ですら頭に入らず、何度も居眠りをかましてきた。今日もその一つになったようだ、レンの話が始まってすぐ俺はウトウトとし始め、そのうち眠ってしまった。
目が覚めて、辺りを見回す。窓の外はすっかり暗くなっている。俺が起きたことに気付いたレンがベッドを操作して上体を起こさせてくれた。
「おはようもっちー、そろそろ晩飯の時間だ。ちょうどよかったな」
「うん……センパイとミチは?」
「みっちーはおつかい。ジャンケン負けてコンビニに晩飯買いに行ってる。形州は「もう我慢出来ない」とか言いながらどっか行った」
「え、何センパイどうしたの」
「タバコでも吸いに行ったんだろ、ん? お前首動いてないか?」
言われて気付く。眠る前は真っ直ぐ前を向いたまま動かせなかった首を、起きた途端に左右に揺らして辺りを見回していたことを。今も首を動かせていることを。
「ホントだ!」
「順調に治ってきてんだな、ゆっくりだけどよ」
「息苦しさもマシになった気がする。あっ、指、指もちょっと曲がる!」
「マジか、ホントだちょっと曲がってる。俺の手握れるか?」
レンが手を握ってくれた。温かく、柔らかい。
「んっ……!」
「お、弱々しいけどちょっと握り返されてる。指は?」
レンの人差し指が手のひらにぽんと置かれる。指はまだ中途半端にしか曲がらない、レンの人差し指には触れられない。
「ダメか、ホントゆっくりだな……夏休み終わるまでに治るか? これ」
「足の指もちょっと曲がるよ」
「最悪一生曲がらなくてもそこまで困んねぇだろ」
「困るよ!? 多分走れなくなるよ!」
「他の関節よりマシだろ」
それはそうかもしれないが「そこまで困らない」という発言には全力で反対したい。
「たっ、たた、ただいまっ、如月くん」
「おかえりみっちー、もち起きたぜ」
「えっ……!? ほ、ほんとだ……タイミング悪いなぁ、おつかい中に起きちゃうなんてさ。あっ、きき、如月くんっ、これお釣り」
「形州なんて「いつノゾムが起きるか分からない」とか言って貧乏揺すりしながらタバコ我慢してたんだぜ? そんで限界来て吸いに行った時に起きるとかウケるよな。ナイスだぜもっちー!」
レンはおかしくてたまらないと言った具合に笑い出す。屈託のない笑顔が見られるのは嬉しいけれど、その理由がセンパイのタイミングの悪さというのは複雑な気分だ。
「カッコつけてタバコスパつかせてようが、所詮は情けねぇニコチン中毒って訳だ」
「な、な、なんで吸うんだろうね? 美味しいのかなぁ……」
「イキって吸い始めたら中毒んなってやめらんなくなるだけだ、まともな理由なんかねぇよ」
「そ、そ、そうなのかなぁ」
「酷い言いようだなぁ……吸ってるセンパイカッコイイよ? 横から見上げるとすっごい絵になるし」
最近は喫煙中のセンパイを近くで見られなくなった、俺を部屋に置いて外へ行ってしまうし、俺が追いかけたら消してしまうし……以前はベットで吸っていたりもしたのに。
「ヤった後、吸ってるセンパイ見るの好きだったんだけどなぁ……」
「けっ、け、健康に悪いよぉっ」
「その通りだみっちー、喫煙者なんざただのアホだ」
酷い言いようだ。二人ともタバコに否定的なようだから、センパイが戻ってきたら俺だけでも味方してやらないとな。
「そ、そそ、それでねそれでねっ、二ヶ月くらい経ってようやく触らせてくれるようになってね、すっごいふわふわで……!」
現在はミチの番。近所の公園に住み着いた野良猫の話だ。自分が食うものにも困っている彼に餌付けの策は取れず、ただただ頻繁に顔を見せて慣れさせていき、今ようやく一定の信用を得たところだ。
「ね、猫ってすごく温かいんだよ、触るとこによっては骨の感じとかも分かって……ぃ、い、生き物だなぁって……へ、変な感想だよねっ」
「……いや、分かる。以前、犬の背を撫でて……背骨がハッキリと分かって、少し怖かった」
「マジ? 俺が昔触らせてもらった犬は背骨なんか分かんなかったけどな」
「い、ぃ、犬は触ったことないや……」
俺もない。散歩中の犬を街中で時折見かけるけれど、触らせてくださいなんて言えやしないし、そこまで興味もない。でもこうして話を聞いていると触ってみたくなってくる、身勝手なものだ。
「……どんな犬だ? 俺が触ったのはプードルだ、昔繁華街でゴミを漁っていてな……捕まえて洗って兄ちゃんに渡したんだ」
「繁華街やべぇな、野良プードル居るのかよ」
「……俺は一度しか見ていない……で、お前の犬は?」
「姉ちゃんの彼氏の知り合いの飼い犬、パグとか言う……顔ぺたんこの変わった犬。シワシワでムチムチだった」
センパイが触った犬は野良で痩せていたのかもしれないし、レンが触った犬は犬と言われて一番にイメージする形とは少し違うみたいだし、もっとなんかこう、柴犬とかそういうザ・犬みたいなのに触れた体験談が欲しい。
「ノ、ノノ、ノゾムくんはっ? 犬とか、猫とか……」
「触った覚え、ないな……ぁ、でも、うさぎ……小学生の時に遠足で行った動物園か何かで、ふれあいコーナーとかで触った気がする」
「お前手ぇ噛まれて泣いてたぞ」
「え、嘘、覚えてない……」
レンは記憶力がいい、幼稚園の頃のことだって覚えている。今も情けない男だが、幼い頃の俺は相当なヘタレだったらしく、カッコ悪いエピソードばかりレンに話される。恥ずかしい、旦那さんらしくない、忘れて欲しい、そんな気持ちでいっぱいだ。
「どうよ動物話は、萎えたか?」
「……動物話と呼べるほどのものはなかったがな」
「ちょっと前の虫話よりよっぽどいいよ……アレでだいぶ萎えたけどさ」
「虫系はみっちー強かったなぁ」
「う、うち、ボロアパートだからねっ、虫エピソードには事欠かないよっ」
怪談話やヒトコワよりも余程寒気がする、数々の虫の話──思い出したくもない。記憶の片隅に追いやって、いや、頭から放り出そう。
「動物話はもう尽きたし、虫エピはみっちーに勝てないし……後は、ヒトコワ?」
「…………兄ちゃん行きつけの高級店は、元ヤクザがやってる店が多い」
「一行で怖いな」
「……俺が兄ちゃんに初めて会ったのは法事の時で、兄ちゃんが俺の親父の頭を後ろからぶん殴ったのが出会いだ」
「イカれてんなぁ」
「……花瓶か壺か、何かだったと思うんだが……幼い頃の記憶だ、上手く思い出せない」
「しかも凶器攻撃かよ……!」
レンと全く同じ感想だ、頷いておきたいが首が動かない。
「ひとこわ……ひ、ひ、人が怖いって意味だよね? えっと、ほ、ほほ、本当の借金取りの人よりねっ、ぅ、う、うりかけ? 取りに来たホストの人の方が、怖いんだよっ! 意外だよね?」
「あー、なんか後払いみたいなシステムあるんだっけホストって……ミチママホス狂かよ救えねぇな」
「しゃしゃ、借金取りの人は顔怖いけどっ、ぼ、僕はほっといてくれてね……ホホ、ホストの人はなんかっ、僕蹴ったりするんだよっ。最近来ないけど……」
「素人のが怖いって訳だな。形州……先輩も心当たりあるんじゃねぇか? 喧嘩慣れしてるヤツより加減知らねぇ素人が厄介ってありがちなんだろ?」
「……いや、俺には判別がつかない」
「お前ほど強ぇと不良も素人も関係ねぇか」
これ、ヒトコワかなぁ。暴力的な人間の話は嫌いだ、気分が落ち込んでくる。俺が不良なのは見た目だけなんだ、中身はずっと陰気で気弱なまま、情けない限りだ。
「なぁ……もうちょい明るい話がいい」
「お前萎えさせるためにやってんだぜ?」
「ゃ、ややっ、病は気からだよっ、気分落ち込んじゃダメだよぉ!」
「一理あるな……んー、じゃあ、もっちーが今一番聞くべき話をしてやろう」
「何だ?」
「お前が苦手な理数の話だ、レンくんが簡単に解説してやるぜ。まずはお前が諦めたモルの計算からだ、そもそもモルってのは──」
気が遠くなっていく。
「──だから三角関数ってのは──」
大好きなレンの声なのに聞き取れない。右から左へ抜けていく。
「──ついでに歴史もやるか、コロンブスはインドに行くつもりで──」
瞼が下りてきた。
「………………ノゾム、寝てないか?」
「──SVCとSVOの違いは……えっマジ? もう寝た?」
勉強が苦手な俺は、中学の時もよくレンに勉強を診てもらっていた。けれどどうしてもそういったものに興味が持てず、大好きなレンの声ですら頭に入らず、何度も居眠りをかましてきた。今日もその一つになったようだ、レンの話が始まってすぐ俺はウトウトとし始め、そのうち眠ってしまった。
目が覚めて、辺りを見回す。窓の外はすっかり暗くなっている。俺が起きたことに気付いたレンがベッドを操作して上体を起こさせてくれた。
「おはようもっちー、そろそろ晩飯の時間だ。ちょうどよかったな」
「うん……センパイとミチは?」
「みっちーはおつかい。ジャンケン負けてコンビニに晩飯買いに行ってる。形州は「もう我慢出来ない」とか言いながらどっか行った」
「え、何センパイどうしたの」
「タバコでも吸いに行ったんだろ、ん? お前首動いてないか?」
言われて気付く。眠る前は真っ直ぐ前を向いたまま動かせなかった首を、起きた途端に左右に揺らして辺りを見回していたことを。今も首を動かせていることを。
「ホントだ!」
「順調に治ってきてんだな、ゆっくりだけどよ」
「息苦しさもマシになった気がする。あっ、指、指もちょっと曲がる!」
「マジか、ホントだちょっと曲がってる。俺の手握れるか?」
レンが手を握ってくれた。温かく、柔らかい。
「んっ……!」
「お、弱々しいけどちょっと握り返されてる。指は?」
レンの人差し指が手のひらにぽんと置かれる。指はまだ中途半端にしか曲がらない、レンの人差し指には触れられない。
「ダメか、ホントゆっくりだな……夏休み終わるまでに治るか? これ」
「足の指もちょっと曲がるよ」
「最悪一生曲がらなくてもそこまで困んねぇだろ」
「困るよ!? 多分走れなくなるよ!」
「他の関節よりマシだろ」
それはそうかもしれないが「そこまで困らない」という発言には全力で反対したい。
「たっ、たた、ただいまっ、如月くん」
「おかえりみっちー、もち起きたぜ」
「えっ……!? ほ、ほんとだ……タイミング悪いなぁ、おつかい中に起きちゃうなんてさ。あっ、きき、如月くんっ、これお釣り」
「形州なんて「いつノゾムが起きるか分からない」とか言って貧乏揺すりしながらタバコ我慢してたんだぜ? そんで限界来て吸いに行った時に起きるとかウケるよな。ナイスだぜもっちー!」
レンはおかしくてたまらないと言った具合に笑い出す。屈託のない笑顔が見られるのは嬉しいけれど、その理由がセンパイのタイミングの悪さというのは複雑な気分だ。
「カッコつけてタバコスパつかせてようが、所詮は情けねぇニコチン中毒って訳だ」
「な、な、なんで吸うんだろうね? 美味しいのかなぁ……」
「イキって吸い始めたら中毒んなってやめらんなくなるだけだ、まともな理由なんかねぇよ」
「そ、そ、そうなのかなぁ」
「酷い言いようだなぁ……吸ってるセンパイカッコイイよ? 横から見上げるとすっごい絵になるし」
最近は喫煙中のセンパイを近くで見られなくなった、俺を部屋に置いて外へ行ってしまうし、俺が追いかけたら消してしまうし……以前はベットで吸っていたりもしたのに。
「ヤった後、吸ってるセンパイ見るの好きだったんだけどなぁ……」
「けっ、け、健康に悪いよぉっ」
「その通りだみっちー、喫煙者なんざただのアホだ」
酷い言いようだ。二人ともタバコに否定的なようだから、センパイが戻ってきたら俺だけでも味方してやらないとな。
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