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男女男男女男女
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待ち合わせ場所に着くと赤い和服に身を包んだ結髪の美少女が手を振っていた。
「みっつ~ん!」
「ハル! 今日は和装なのか……!」
大きく息を吸って感想を語ろうとしたが、ハルに口を手で押さえられた。
「んっ?」
「ごめんみっつん……ほんとごめん」
「んん……?」
何を謝ることがあるのかと困惑していると、水月くーんと女の声が聞こえてきた。
「久しぶり水月くん!」
「やっほ~、元気?」
「その子達誰~?」
ハルとは色違いの和服に身を包み、ハルと色違いのメッシュを入れた女達──ハルの三人の姉。
「……水月泊めてい~い? ってマっ……お母さんに聞いてたの聞かれたみたいでさぁ~……今日こっそり出てきたのに、なんか、着いてきてた……ごめんねみっつん撒けなくて」
「盗み聞きなんてしてないって~」
「超失礼~! 無礼~!」
「水月くん射止めてこいって言われたの~!」
「はぁ!? ママの裏切り者ぉ……!」
裏切りも何も、俺とハルの交際なんてハルの母親は知らないのだから仕方ないだろう。恋人の親に気に入られるのはありがたいが、この気に入られ方は少し嫌だな。
「それで水月くん、この子達は?」
「あ、弟のアキと……いとこのセイカです。弟は家庭の事情で海外暮らしが長かったので、日本語が苦手で……あと肌が弱いので、この格好です」
ややこしい事情を嘘を織りまぜて誤魔化しつつ説明した。ハルの三人の姉は納得し、アキの顔を覗き込んだ。
「全然顔見えないけど……」
「水月くんの弟だし、絶対……!」
「イケメンだよね!」
「姉ちゃん! やめてってば恥ずかしい!」
「セイカくんも似てないけどイケメン……!」
「でも、腕……あれはちょっとぉ、彼氏にはな~」
「え~ダウナー系イイじゃん、萌える~」
「姉ちゃん! やめてってばぁ!」
俺達から数歩離れ、三人で顔を寄せてアキとセイカの批評を始めた。せめて聞こえない場所でやって欲しいものだ。
「じゃあアンタ、セイカくんね。私水月くん」
「はぁ!? ずっる! 私も水月くんがいい!」
「やだやだ私だって水月くんが第一希望!」
「……よかったな、モテてるぞ」
セイカが俺の肩にぶら下がるようにしながら耳元で囁いた。からかうような口調が俺を興奮させる。
「女の子にモテてもなぁ……何の意味もないって言うかぁ……むしろ、嫌」
興奮を押し殺しつつ平静を装って返事をした。
「世のモテない男共に聞かれたら殺されるぞお前」
「殺意って言い換えれば愛情だよね」
「……は?」
「いや、殺し合いって実質セックスだろ?」
「辞書買え」
言い争っていた三姉妹がちょこちょこと俺達の方へ寄ってくるのが見えて、俺達は話すのをやめて彼女達に向き直った。
「じゃ、行こっか水月くん」
ぎゅ、と白いメッシュを髪に入れた女が俺の腕に抱きついた。腕に柔らかいものが押し付けられている。
「私と行くよね~水月くん!」
ぎゅうっ、と青いメッシュを入れた女が俺の反対側の腕に抱きついた。こちらもやはり脂肪の塊の気配を感じる。世の男性方がありがたがりがちなアレだ。
「ちょっと終夏! アンタセイカくん派でしょ!」
「セイカくんもいいなってだけで水月くん派です~!」
「……終夏さん?」
「はっ、はい! なぁに水月くんっ」
「本、面白かったです」
「……っ!」
三女の終夏は顔を一気に青ざめさせ、俺の腕を離した。
「そ、その話は……また今度で~!」
裏返った声でそう叫びながら走って逃げてしまった。
「本ってなぁに? 水月くん」
「……この間、外出先でバッタリ会いまして、オススメしていただいて」
同人誌の話はしない方がいいのだろうと察した俺は適当に嘘をついた。彼女達に対しては嘘をつきっぱなしだが、罪悪感はあまりない。
「え~、なんでちょっと仲良くなっちゃってんの~。水月くんは私と裸見せ合った仲なのにぃ~」
ハルの家に泊まった際、風呂に入っている時に押し入ってきたのは長女だったか。勝手に入ってきて裸を見せつけてきたくせに、見せ合っただなんて……随分と認知が歪んでいると見える。
「じゃあ水月くんの左手は私のね~」
黄色いメッシュが入った次女が空いていた俺の左腕に抱きついた。そろそろと戻ってきた三女は悔しそうな顔をしている。
「ムカつく~……えっと、アキくんだっけ? 紫外線対策すごいのね、尊敬するな~。お姉ちゃんと一緒に回ろっか!」
しかしすぐに気を取り直してアキを狙い始めた。そういえばアキは女に興味はあるのだろうか? 他の彼氏はバイなのかゲイなのか、元ノンケなのかだいたい把握しているのだが、アキはよく分かっていない。今日分かるだろうか。
《ハルの姉貴か? そっくりだな。だがビッチっぽさはアンタのが上だ、あのお嬢は随分とウブだからなぁ。なんでビッチ臭ぷんぷんの三姉妹の弟があんなんになったんだか》
なんか長々と話したな、口説き文句とかじゃないよな?
「…………な、何語? お姉ちゃん英語には自信あるんだけどな~……ヨーロッパの方、でもないよねぇ?」
「……ロシア語です」
「なるほどぉ! そりゃ分かんないよね~、ロシア語知らないもん。ところでこの車椅子、セイカくんの?」
「え、ぁ、はい……歩けるんですけど、一応持ってけって、鳴雷が」
「……写真撮っていいかな? 私絵描くの趣味で……車椅子の資料欲しいの」
「はぁ……ご自由にどうぞ」
「ありがと~! ぁ、姉ちゃん達にはあんまり大っぴらにしてないから、後でね」
「はぁ……」
三女はセイカと話し始めてしまった。アキが何を言ったのかセイカに聞いて欲しかったな……
「もぉお~! 姉ちゃん達! みっつんは俺の友達なのぉ!」
「男友達より女よね~?」
「年増より若いのがいいよね~?」
「それなら俺一番若いし!?」
「アンタ女なの顔と足だけじゃん」
「やーいまな板~」
男女間でも胸をまな板呼ばわりする煽りってあるんだ。
「京都は女の子と回った方が楽しいよ~」
「年増と回っても楽しくないから私と行こ~ね」
「いや、あの……」
ハルは目に涙を浮かべ、顔を真っ赤にし、悔しいとも悲しいとも怒りとも断定し難い複雑な表情で姉達を睨んでいる。
「……み、みんなで回りましょっ、ねっ?」
ハルだけを選びたいが、姉達が納得するとは思えない。ひよった選択はハルにとっても姉達にとっても不満の残るものだったが、反対はされなかった。
「みっつ~ん!」
「ハル! 今日は和装なのか……!」
大きく息を吸って感想を語ろうとしたが、ハルに口を手で押さえられた。
「んっ?」
「ごめんみっつん……ほんとごめん」
「んん……?」
何を謝ることがあるのかと困惑していると、水月くーんと女の声が聞こえてきた。
「久しぶり水月くん!」
「やっほ~、元気?」
「その子達誰~?」
ハルとは色違いの和服に身を包み、ハルと色違いのメッシュを入れた女達──ハルの三人の姉。
「……水月泊めてい~い? ってマっ……お母さんに聞いてたの聞かれたみたいでさぁ~……今日こっそり出てきたのに、なんか、着いてきてた……ごめんねみっつん撒けなくて」
「盗み聞きなんてしてないって~」
「超失礼~! 無礼~!」
「水月くん射止めてこいって言われたの~!」
「はぁ!? ママの裏切り者ぉ……!」
裏切りも何も、俺とハルの交際なんてハルの母親は知らないのだから仕方ないだろう。恋人の親に気に入られるのはありがたいが、この気に入られ方は少し嫌だな。
「それで水月くん、この子達は?」
「あ、弟のアキと……いとこのセイカです。弟は家庭の事情で海外暮らしが長かったので、日本語が苦手で……あと肌が弱いので、この格好です」
ややこしい事情を嘘を織りまぜて誤魔化しつつ説明した。ハルの三人の姉は納得し、アキの顔を覗き込んだ。
「全然顔見えないけど……」
「水月くんの弟だし、絶対……!」
「イケメンだよね!」
「姉ちゃん! やめてってば恥ずかしい!」
「セイカくんも似てないけどイケメン……!」
「でも、腕……あれはちょっとぉ、彼氏にはな~」
「え~ダウナー系イイじゃん、萌える~」
「姉ちゃん! やめてってばぁ!」
俺達から数歩離れ、三人で顔を寄せてアキとセイカの批評を始めた。せめて聞こえない場所でやって欲しいものだ。
「じゃあアンタ、セイカくんね。私水月くん」
「はぁ!? ずっる! 私も水月くんがいい!」
「やだやだ私だって水月くんが第一希望!」
「……よかったな、モテてるぞ」
セイカが俺の肩にぶら下がるようにしながら耳元で囁いた。からかうような口調が俺を興奮させる。
「女の子にモテてもなぁ……何の意味もないって言うかぁ……むしろ、嫌」
興奮を押し殺しつつ平静を装って返事をした。
「世のモテない男共に聞かれたら殺されるぞお前」
「殺意って言い換えれば愛情だよね」
「……は?」
「いや、殺し合いって実質セックスだろ?」
「辞書買え」
言い争っていた三姉妹がちょこちょこと俺達の方へ寄ってくるのが見えて、俺達は話すのをやめて彼女達に向き直った。
「じゃ、行こっか水月くん」
ぎゅ、と白いメッシュを髪に入れた女が俺の腕に抱きついた。腕に柔らかいものが押し付けられている。
「私と行くよね~水月くん!」
ぎゅうっ、と青いメッシュを入れた女が俺の反対側の腕に抱きついた。こちらもやはり脂肪の塊の気配を感じる。世の男性方がありがたがりがちなアレだ。
「ちょっと終夏! アンタセイカくん派でしょ!」
「セイカくんもいいなってだけで水月くん派です~!」
「……終夏さん?」
「はっ、はい! なぁに水月くんっ」
「本、面白かったです」
「……っ!」
三女の終夏は顔を一気に青ざめさせ、俺の腕を離した。
「そ、その話は……また今度で~!」
裏返った声でそう叫びながら走って逃げてしまった。
「本ってなぁに? 水月くん」
「……この間、外出先でバッタリ会いまして、オススメしていただいて」
同人誌の話はしない方がいいのだろうと察した俺は適当に嘘をついた。彼女達に対しては嘘をつきっぱなしだが、罪悪感はあまりない。
「え~、なんでちょっと仲良くなっちゃってんの~。水月くんは私と裸見せ合った仲なのにぃ~」
ハルの家に泊まった際、風呂に入っている時に押し入ってきたのは長女だったか。勝手に入ってきて裸を見せつけてきたくせに、見せ合っただなんて……随分と認知が歪んでいると見える。
「じゃあ水月くんの左手は私のね~」
黄色いメッシュが入った次女が空いていた俺の左腕に抱きついた。そろそろと戻ってきた三女は悔しそうな顔をしている。
「ムカつく~……えっと、アキくんだっけ? 紫外線対策すごいのね、尊敬するな~。お姉ちゃんと一緒に回ろっか!」
しかしすぐに気を取り直してアキを狙い始めた。そういえばアキは女に興味はあるのだろうか? 他の彼氏はバイなのかゲイなのか、元ノンケなのかだいたい把握しているのだが、アキはよく分かっていない。今日分かるだろうか。
《ハルの姉貴か? そっくりだな。だがビッチっぽさはアンタのが上だ、あのお嬢は随分とウブだからなぁ。なんでビッチ臭ぷんぷんの三姉妹の弟があんなんになったんだか》
なんか長々と話したな、口説き文句とかじゃないよな?
「…………な、何語? お姉ちゃん英語には自信あるんだけどな~……ヨーロッパの方、でもないよねぇ?」
「……ロシア語です」
「なるほどぉ! そりゃ分かんないよね~、ロシア語知らないもん。ところでこの車椅子、セイカくんの?」
「え、ぁ、はい……歩けるんですけど、一応持ってけって、鳴雷が」
「……写真撮っていいかな? 私絵描くの趣味で……車椅子の資料欲しいの」
「はぁ……ご自由にどうぞ」
「ありがと~! ぁ、姉ちゃん達にはあんまり大っぴらにしてないから、後でね」
「はぁ……」
三女はセイカと話し始めてしまった。アキが何を言ったのかセイカに聞いて欲しかったな……
「もぉお~! 姉ちゃん達! みっつんは俺の友達なのぉ!」
「男友達より女よね~?」
「年増より若いのがいいよね~?」
「それなら俺一番若いし!?」
「アンタ女なの顔と足だけじゃん」
「やーいまな板~」
男女間でも胸をまな板呼ばわりする煽りってあるんだ。
「京都は女の子と回った方が楽しいよ~」
「年増と回っても楽しくないから私と行こ~ね」
「いや、あの……」
ハルは目に涙を浮かべ、顔を真っ赤にし、悔しいとも悲しいとも怒りとも断定し難い複雑な表情で姉達を睨んでいる。
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