冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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狐の首

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神社を出てからしばらく歩くと耳元で「おかえり」とサキヒコの声が聞こえた。

「……ただいま」

「ん? みっつん何か言った?」

「あぁ、いや、何でも……」

「にしてもさ~、酷いよねぇお稲荷さんの首もぐとかさ~。バチ当たっちゃえ」

「……稲荷の首?」

サキヒコが話に興味を示した。

「あぁ、神社の狐の像の首をもぐなんて、罰当たりにも程があるよな」

なので説明的なセリフで返事をしてみた。ハルは違和感を覚えはしなかったようで、うんうんと頷いていた。

「ミツキを待っている間この辺りを見て回っていたのだが……それらしき物を見たぞ」

「えっ?」

「ん? 何、みっつん」

「そこの茂みの中だ」

生い茂り過ぎた街路樹の足元の低木。その枝葉を傷付けることに罪悪感を覚えつつ低木をかき分けてみると、石で作られた狐の首があった。

「あーっ!? すっごいみっつんなんでなんで~!? よく見えたね~! すごいよみっつん!」

「…………茂みの中見てたの?」

「ぼんやり光っているだろう。茂みが光っていれば気になって覗く」

ムッとしたような声だった。光ってなどいないが……やはり幽霊は生きた人間とは物の見え方が違うらしい。像は神社にあったものだし、何かしら神聖な力を持っていてもおかしくはない。そういうものが見えるのだろうか?

「これ絶対あの神社のだよな、持って行こうか」

「うんうん、行こ行こ~」

踵を返し、狐の首を持って神社に戻った。

「あぁ、さっきのアベックさん。どないし……はっ!? えっ……!?」

「あ、えっと、近くの茂みに落ちてて、たまたま見つけて……やっぱりここの像の首ですか?」

「ほんまぁ! 確かにここのやわぁ、あら~……こんなんなってしもて……あー……」

宮司に首を渡すと、彼は一瞬嬉しそうに笑ったけれど、すぐに暗い顔になった。

「……おおきになぁ、見つけてくれて」

「いえ……」

宮司はそっと首を胴に置いた。だが、綺麗に二つに分かれた訳ではないので隙間はもちろん空いている。

「周りに落ちとった破片もね、一応取っといたんよ」

宮司はそう言って布に包んだ五つほどの破片を俺に見せた。見せられてもなぁ。

「パズルするの~?」

「うーん……」

「俺そういうの得意ですよ、接着剤とかあるなら直せますけど」

「……ほんまにおおきになぁ、ええ子やなぁ。接着剤……一応買っといたんよ、戻ってきた時のためにー言うてなぁ」

宮司は目に涙を浮かべて微笑む。俺とハルはパズルのような修理を手伝い、狐の像を復元した。

「割れた跡、見えますね。パテで一回埋めて、ヤスリかけて、塗装すれば何とかなるかな……」

「そない見ぃひんかったら気付きはらへんやろ。長い間手伝わせてしもぉてすんまへんなぁ」

「いえいえ」

「神社のもん直したんだから~、絶対絶対いいことあるよね~。楽しみ! ライブの抽選系がいいな~」

「そういのって下心出すとなくなったりするよな」

「……! 俺無欲!」

ギュッと目を閉じ足を肩幅に開いて腕を組む、それがハルが考えた無欲のポーズなのか? 可愛い、可愛過ぎる。抱き締めたい、でもハルは突然抱き締めてはいけない、怯えさせないように立ち回らなければ。

「無欲無欲……ん? なっ、何みっつん……」

腕をゆっくりと広げている最中にハルが目を開け、衝動を噛み殺している俺の表情に一歩引いた。

「……あっ、ハグ? えへへ~……みっつん大好き!」

しかしすぐに俺の意図を察し、俺の胸に飛び込んできた。ハルを怯えさせることに怯えて腕に力を込め切れずにいる俺に対し、彼は俺に力いっぱい抱きついている。

「みっつん……今日は独り占め出来ると思ったの。なのに姉ちゃん達着いて来てさぁ~……最悪……でも、抜けられてよかった。ちょっとだけだけど二人きりでデート出来てさぁ、えへへ……みっつん大好き~」

「……うん。ごめんな最初ひよっちゃって」

「いいってそんなこと~……ね、みっつん、キスして?」

「……あぁ」

背に左腕を、頭に右腕を回し、そっと唇を重ねた。ハルの腕が首に回ったので舌を伸ばしてみるとハルは俺の舌を受け入れてくれた。

「んっ、んんっ…………はぁっ、えへへ~……みっつん大好き……ほんとに、大好き」

「……俺も愛してるよ」

上気した頬を撫で、ハルの愛らしい表情を堪能する俺の視界の端で僅かに何かが動いた。

「…………ぁ」

にこにこと微笑んで俺達を見ていた宮司だ。

「ぇ、と……失礼しましたぁっ!」

人前で、それも神社であんなふうにイチャついてしまうなんて、鳴雷水月一生の不覚……いやもっと酷い不覚があるから、今月一の不覚くらいかな。

「恥ずかしかったぁ~……忘れちゃってたね、おじいさんのこと」

「うん……ごめんな?」

「いいよいいよ~、実家からはだいぶ遠いし噂広まったりしないからさ」

「……そっか。ハルが気にしてないならいいんだ」

「うん、姉ちゃんから鬼電来てんだけどさ~……そろそろ合流する~?」

「いいのか? ちょっと団子食っただけだぞ、ずっと像の修理してて……つまんなくなかったか?」

「ううんっ、みっつんマジ手先器用なんだな~って実感したしぃ……アレ楽しかったから! みっつんとの共同作業~……えへへへ」

退屈なデートにしてしまったと悔やんでいたが、そう思ってくれていたならよかった。安堵した俺はスマホを取り出し、アキのスマホからの着信を確認した。

「みっつんも電話来てる?」

「と、思って見たんだけど……着信はないな、メッセは来てる。えーっと「はぐれたのわざとだろ、気が済むまで二人で遊んでこい」だってさ。セイカだな……セイカ、スマホ持ってないからアキの使って連絡くれるんだよ」

「ふ~ん……結構察し良いし気遣いも出来るんだね~……せーか」

「いい子だよ」

「…………みたいだね」

やはりまだセイカに対して苦手意識があるのか、ハルの表情は複雑だ。
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