冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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停まったエレベーターの使い方 (水月+荒凪・ヒト・サン・ネイ・ミタマ・サキヒコ)

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着地したのはおそらくエレベーターの天井、いや外側からなら屋根と呼ぶべきか。先程荒凪が破壊した扉が乗っていたが、荒凪はそれを雑に尻尾で払ってどかした。

「ひぃいぃ……ワイヤーこれ? これなの? これで吊ってるの? 意外と細いよぉ……」

エレベーターを吊るワイヤーを初めて見た俺は、予想よりも細いそれに不安を覚えた。荒凪の体重は見た目より重いんじゃなかったかと恐怖を膨らませる。

「荒凪~! 端っこに避けてろ!」

秘書の声が聞こえたかと思えば、社長を抱えた彼が飛び降りてきた。

「ギャアア! ガンッて鳴った揺れた揺れてる落ちる落ちるぅ! なんでそんな躊躇なく飛び降りてこれるんですか!? 落下って本能的な恐怖じゃないんですか!? 避けろって言ったのになんでそんなすぐ飛び降りてくるんですか! 当たらなかったから今それはいいけども!」

秘書が社長ごと飛び降りてきたことでエレベーターが揺れ、それに恐怖して泣き叫ぶ俺を無視し、秘書はエレベーターの屋根を調べる。

「エレベーターって大体天井が開くようになってるじゃないですか。エレベーターに閉じ込められた時に天井から脱出する話、よく見るでしょう? 多分この辺だと思うんですけど……」

「非常ハッチだね。これじゃないかな」

「ありました? 流石社長! 物部も、こんな色んな法律無視してそうな秘密基地作ってても、エレベーターは既存の物を使うしかなかったみたいですね」

「まぁ、そうだろうね」

「……押しても引いても開かないですねコレ。荒凪、やれるか?」

荒凪は秘書が指したハッチに右主腕の手のひらを当て、ぐっと押し込んだ。すると簡単にハッチの扉が外れ、エレベーター内に落ちた。

「流石怪力。えらいぞ荒凪。お前ら先に降りてろ」

秘書に褒められた荒凪は気を良くして頷き、外れたハッチの穴に頭から入っていった。

「お前らは降りてくるな! 一旦待機だ! 警戒を怠らず、円形に固まること! 敵は怪異の可能性もある、壁や床、天井をすり抜けてくることも考慮しろ!」

「分かりました、ボス! あなたの留守はこのヒトにお任せ下さい!」

「人の背中の上で何言ってんの……」

サンに背負われたヒトの返事が聞こえたかと思えば、こちらに飛び降りてくる影があった。

「……待機って言ったの聞こえませんでした?」

「私、あなたの部下じゃありませんから」

ネイだ。

「本物の物部が居るなら私は顔を確認しなければなりませんし、水月くんをあなた方と一緒にしておくのも心配です。怖い思いをしたでしょう水月くん、あなたの悲鳴、聞こえていましたよ」

「え、ゃ……まぁ、悲鳴は……その、エレベーター落ちないか怖かっただけで……ネイさん降りてきた振動で余計ビビったって言うか……いや何でも」

情けない悲鳴を聞かれていたことを改めて実感させられ、頬が熱くなった。顔を伏せた俺の肩を誰かが抱く。

「ワシらはみっちゃんに憑いとるんじゃから、もちろん文句ないじゃろぅ?」

「ええ、あなたにはむしろ来て欲しいので」

ほんのり獣臭い。顔を上げるまでもなく分かる、ミタマだ。ワシら、と言っているからサキヒコも居るのだろう。

「みつき、受け止める」
「降りてこい水月」

荒凪の声が下から聞こえる。俺は恐る恐るハッチの穴をくぐってみた。

「……っ、ありがとう、荒凪くん」

一瞬の落下感に心臓が縮む。荒凪に抱きとめられ、安堵が胸に広がる。

「荒凪、端寄れ」

秘書の声に荒凪が従うと、再び社長を抱えた彼が飛び降りてきた。そんな彼らがまた端に寄ると、今度はネイが降りてくる。

「荒凪、開けられそうか?」

「きゅ……多分」
「狭い。尾、無理」

このエレベーターは先程乗った大きな物とは違い、五人でも狭さを感じるような小さな物だ。扉を尾で殴り抜くには勢いをつけるスペースが足りない。

「……っ、う……」

荒凪は尾を使うのを諦め、こじ開けることにしたようだ。ヒレを扉の隙間に差し込んで隙間を拡げ、そこに黒い爪を押し込んで四本の手で力づくでこじ開けていく。酷い金属音に俺は思わず耳を塞いだ。

「きゅ、ぅゔっ! 開いた!」
「キュルルル……うるさかった」

「お疲れ様、荒凪。よくやった」

「……ありがとう、荒凪くん」

耳を塞いでいたから出遅れた。荒凪の持ち主も彼氏も俺なのだ、秘書にばかり褒めさせている現状はよくない。頭を撫で、礼を言う。荒凪は秘書に褒められた時よりも緩んだ笑顔を見せてくれた気がした。

「さて、探すのは物部とコントロールルーム……狐、占いでしたっけ。やってくれません?」

「ひとまず一本道なんじゃから進みゃあええじゃろ。占うのもタダじゃないんじゃぞ」

そんな会話を聞き流しながら、エレベーターを出て一本道を真っ直ぐに進んでいく。すると、道の突き当たりに扉を一枚見つけた。

「開けますよ」

鍵がかかっていないことを確認し、秘書はその扉を蹴り開けた。秘書達に続いて突入すると、男の情けない声が聞こえてきた。

「ひぃいっ!? く、来るな……来るなぁ!」

キャスター付きの椅子から転がり落ちた男は銃を構え、怯えたように喚く。男が任されていたのはおそらくこれだろうと、壁一面のモニター画面に目をやった。ところどころ黒く映らなくなってはいるが、これはおそらく監視カメラだ。今まで通った場所が映っている。

「セーフティ外れてないぞ」

「……!? あっ……え、えっと、どうやるんだっけ……」

「こんなのが最後の関門か? 怪しい」

「システムの保守か何かが担当の非戦闘員でしょう。銃を下ろしてください、私にあなたの命を取る気はございません」

クンネが閉じ込められていたカラス加工場も、荒凪が壊した扉の近くで待機しているヒト達の姿も、モニターに映っている。全て見られていたと思うと気味が悪い。

「みんな居る、ちっちゃい」
「これ、カメラ」

ネイが男に銃を向けたままゆっくりと近付き、男の銃を取り上げると、ヒレを広げて俺を守っていた荒凪は警戒を解いたのかモニターを見て回った。

「ねい殿、えれべぇたぁの操作について聞き出せないか?」

「これあーちゃん、もにたぁを見るのは構わんが、よう分からんぼたんに手を置くでない。爆発したらどうする」

「爆発は多分しないよコンちゃん……」

しばらくは気を抜いていて良さそうだ。大きく伸びをして、肌や服に付着して乾いた血が割れるパリパリという音を聞く。

「んー……」

欠伸をして潤んだ視界、換気口付近で何かがキラリと光るのが見えた。

「……っ!?」

直後、キィンッと軽い金属音がして、肩に鋭い痛みが走る。

「痛っ……な、何?」

トンっと床に何かが落ちる。だが、その小さな影はすぐに机の下に隠れてしまう。

「秘書さん! 何か居ます! なんかっ、小さいの!」

「……! 荒凪、狐、どっちか見てませんか」

「きゅ?」

「見とらんかった」

「そっちの机の下に……でももう多分移動して、どこに居るかは」

あの小ささ、素早さ、まるでクンネのような……そういえばクンネは? 何か見たか? いつの間にかまた胸ポケットを抜け出し肩の上に移動しているクンネに質問するため、俺は机の下を覗いていたミタマを呼び付けた。
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