冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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道徳より損得 (水月+フタ)

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ヒトは隣の部屋に、フタは隣のベッドに居るらしい。何故部屋が違うのだろうと思いつつ、隣のベッドを覗いた。

(フタさ~ん……?)

眠っているようだ。薄手の毛布を捲ってみると、彼の腕にガーゼらしき物が貼られているのが見えた。

(確か、荒凪きゅんの呪いのダメージ返しの打撃の方が痛がってましたよな)

物部に操られていた時の荒凪は、藁人形が釘を打たれた箇所に不幸を与えるように、フタの蹴りのダメージをそのままフタに返した。あの時のフタは化け猫達に取り憑かれパワーアップしていた、相当痛かったはずだ。

(もうアザとか見えますかな)

もうアザが現れるくらいの時間は経っただろうか。服を捲って腹を覗くと、何やら白い物が貼られていてアザの有無は確認出来なかった。

(この独特の臭さ……湿布ですな)

肩や背中、ふくらはぎなんかは馴染み深いけれど、脇腹に湿布貼ってるのは初めて見た。

「スースーする……何、えーと…………みつき!」

服を捲ってしげしげと眺めていたせいか、フタを起こしてしまった。彼は腕の傷も腹部の打撲も気にせずに起き上がり、俺の名を呼んだ。

『起こしちゃいましたね。ごめんなさい』

名前を覚えてくれていることに喜びを感じる。だが期待し過ぎるな、俺。フタは俺の名前以外の全てを忘れている可能性がある。思い出はもちろん、恋人であることを記憶しているかも怪しい。

「な、みつき。これ見て」

フタは俺の疑いなど察することなく俺に向かってスマホを突き出してきた。表示されているのはカメラロール、俺の写真や動画でいっぱいだ。

「みつき、いっぱい撮ってた。これとかすっごいかわいい」

『恥ずかしいです』

「ん……? 何、みつき。何この紙ぃ……みみ、こころ、ずかしい……? 何書いてんの?」

『喉を傷めてしまったので、筆談で失礼します。ちなみに「恥」は「はじ」って読んで、送りがながある場合は「は」ですよ』

「長い長いぃ~……なにぃ、えーとぉ……く、口? イ、ユ…………? を、イ……何これ、日は分かる、他、なにこれ…………みつきぃ、漢字やめて」

義務教育受けてないのかなこの人。受けてない可能性割と高そうだから聞かないでおこう。

(恥はまだ横並びだから分かるんですが、なんで喉を解体して読んじゃうんですか。ユって何のことなのか来たのか一瞬迷いましたぞ)

俺は謝罪の意を込めてはにかみながら頭を下げ、漢字の上に読み仮名を振った。

「みつき喉痛いの? 話せないの? かわいそう……よしよし」

フタは眉尻を下げて俺の頭と首を撫でてくれた。触れられるだけで浮かれてしまう俺はチョロい男だ。

「ひつ、だん……? って何? あと、しつれーしますは部屋入る時に言うヤツだよ」

『筆談っていうのは声じゃなくて、文字でお話することです。失礼しますは他でも使いますよ、ちょっとごめんねって意味なんです。しゃべるより時間かかるし、読むのも面倒だろうから、ごめんねってことです』

いちいち読み仮名書くの面倒臭いな。でもひらがなで書くのもなぁ、読みにくいよな。

「へぇー、水月かしこいねぇ。でもさみつきぃ、書いてあった方が長いの分かるからぁ、俺は気にしないからごめんねいらなーい」

可愛いなぁ。

『怪我はどうですか? 痛いですか?』

「けが……? あー、大丈夫~。痛いけど、痛いだけだし」

包帯、眼帯、絆創膏、等々をフタはよく身に着けている。ヒトに暴力を振るわれ、飼い猫に引っ掻かれ、よく車に撥ねられるらしい。だから怪我や痛みには慣れているのかも。

「…………」

なんだか悲しくて、フタの左手を握った。温かい。彼の手はいつだって温かい。

「ん~……? みつきなんか落ち込んでる?」

フタの右手が俺の頭を撫でる。優しい手つきだ、慈しむ気持ちが伝わってくる。この手は今日、何人も殺したのに。

『人を殺したことは覚えてますか?』

「……? 殺した? 俺が?」

頷くとフタは「覚えてない」と首を横に振った。キョトンとしていて、記憶も実感も全くなさそうだ。もし俺が記憶を失っていて、お前は人殺しだと言われたら、多分その言葉をすぐには信用しない。だがフタには疑念もなさそうだ。それほど俺を信頼しているのか、自分が人を殺すことに違和感がないのか、どちらかまでは感じ取れない。

「覚えてないけど、それがなぁに? みつき」

『いえ、いいんです。忘れてください』

「うん……?」

殺人の罪悪感をフタに求めるのが間違いだ、彼は生まれつきの霊能力者で死者と生者の境が曖昧で、俺を殺そうとしたことも何度もあったくらいなのだから。

『フタさん、大好き』

「……へへ。俺もみつきすきぃ~」

俺を殺そうとした連中を殺して、もしもフタが気に病んでいたら可哀想だ。フタが殺人に嫌悪感のないタイプでむしろよかったじゃないか、すぐに忘れるんだし…………今までにも、何人か殺しているのだろうか。あの手際の良さ、躊躇いのなさは、身体が殺人を覚えているからではないだろうか。

『俺、用事があるのでもう行きますね。おやすみなさい』

「行っちゃうの? そっか、おやすみぃ」

フタの元を去り、カーテンを締めながら、秘書がフタを重宝しているのはフタの霊能力や取り憑いた化け猫達の有用性だけが理由ではないのではと疑い始めた。殺人の便利な道具としてフタを利用しているのではないかと。

「…………」

だとしたら、嫌だ。俺の一般的な倫理観では彼を許すことは出来ない。でも俺には秘書もフタも裁けないし救えない、この疑いをハッキリさせようとすることすらやめよう。聞けば多分、秘書は正直に教えてくれる。嫌な真実を知るだけというデメリットと、俺の愚かな妄想だったと安心出来るメリット、メリットの方が明らかに小さい。忘れよう、疑いを抱いたことすらも。
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