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夏休み
がまんがまん、よん
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雪兎はいそいそと四本の鞭を用意し、机の上に空き缶を並べた。
「まず、定番のバラ鞭。これは正直雰囲気出し用で、そこまで痛くないよね?」
「はい、でも音が大きいので好きです」
持ち手から幾本もの革製の紐が垂れているのがバラ鞭。それに持ち替えた雪兎は机の上の空き缶に向かってそれを振った。
「ま、威力は大したことないよ。プレイ用だからね」
空き缶は床に吹っ飛ばされただけで凹んですらいない。
「次は乗馬用の鞭。お馬さんに使うものだね、もちろんこれは人間用だけど。よくしなるのが特徴だよ」
「性器を叩かれた瞬間は忘れられません……! 最高でした。痛みが鋭くていいんですよねぇ」
先端がヘラのようになった、長い棒状の鞭。よくしなるそれは空き缶をへこませた。
「威力はそこそこ。まぁこれもプレイ用、音はあんまりだけど痛みは大きめってところかな?」
打たれているのは俺なので、雪兎は俺の方を見る。大きく頷くと首が僅かに絞まって苦しい。
「次はこれ、ケイン。懲罰用の鞭だよ、昔は学校とかで子供のお仕置き用に使ってたんだ」
次に雪兎が持ったのは黒い棒だ。棒としか言いようがない。
「体罰があった時代ですねー、名前的にヨーロッパですか?」
「正解、ケインはイギリス英語。まぁ……棒だね。ちなみにこれはカーボン製」
新しい空き缶を置き、それを叩く──と言うより殴る。当然空き缶はへこんでしまった。先程よりもへこみが深い。
「強くやるとただの打撲だからね、加減が難しくって……練習したんだよ」
「練習……? ユキ様、何を叩いたんですか?」
「心配しなくてもこういう空き缶とか、サンドバッグ的な物だよ。叩き心地を確かめるために豚肉もやったかな」
「お肉は叩くと柔らかくなりますからね。俺も叩くとトロットロになりますよ?」
どうぞ、と手を広げたいが残念ながら腰の後ろで手錠をかけられている。
「そして最後……これ、一本鞭」
ゲームだとかで見る武器の鞭といえばこれだろう、教師キャラの武器などは除外して。振るう紐状の部分が一メートル以上あり、地面に引きずっている。
「これは本当に扱いが難しくってねぇ……大学でスポーツウィップサークルがあったから何度か参加したよ。まぁ……その、真面目にスポーツやってる中に不純な動機で混じるのは、アレで……入ってはないんだよね。上手かったからって誘われてるけどさ」
鞭ってスポーツになってたのか、知らなかった。
「一人で練習して、ワインのコルク抜いたりペットボトルのキャップ空けたりなんて特技も身につけたんだよ」
「素晴らしい……! その正確性で俺の弱点を虐めてくださるんですね!」
「そういうこと。期待してね」
雪兎は練習の成果を見せたくてたまらないようで、また新しい空き缶を置いた。飲んで空になった物をこの日のために取っておいたのかななんて考えると微笑ましい。
「見てて」
雪兎は自身の身長に匹敵するような鞭を振るった。鞭はパァンッと破裂音を鳴らし、見事に空き缶を打った。
「……この一本鞭は拷問用でね、本来なら皮膚どころか肉を裂くような代物なんだよ。しっかり振れば平気でマッハ2に到達する、音速の壁にぶつかる音が聞こえただろう? パンッて。アレは机や空き缶に当たった音じゃないんだよ」
少し演技がかった口調で雪兎は楽しげに鞭について語り、打った空き缶を拾って俺の目の前に持ってきた。アルミ缶だろうそれはへこむどころか裂けている。
「ちなみにこれはカーボン製。どう? ポチ、どの鞭でお仕置きされたい?」
もちろん一本鞭だ、一番痛そうなものを選ばない理由はない。だが──
「……ユキ様の御心のままに」
──俺は犬だ、雪兎の気持ちが全てだ。雪兎が振りたい鞭を振ってもらうべきだ。
「そう」
微笑みをたたえた雪兎は裂けた空き缶を机に置き、一本鞭を振り上げた。
「まず、定番のバラ鞭。これは正直雰囲気出し用で、そこまで痛くないよね?」
「はい、でも音が大きいので好きです」
持ち手から幾本もの革製の紐が垂れているのがバラ鞭。それに持ち替えた雪兎は机の上の空き缶に向かってそれを振った。
「ま、威力は大したことないよ。プレイ用だからね」
空き缶は床に吹っ飛ばされただけで凹んですらいない。
「次は乗馬用の鞭。お馬さんに使うものだね、もちろんこれは人間用だけど。よくしなるのが特徴だよ」
「性器を叩かれた瞬間は忘れられません……! 最高でした。痛みが鋭くていいんですよねぇ」
先端がヘラのようになった、長い棒状の鞭。よくしなるそれは空き缶をへこませた。
「威力はそこそこ。まぁこれもプレイ用、音はあんまりだけど痛みは大きめってところかな?」
打たれているのは俺なので、雪兎は俺の方を見る。大きく頷くと首が僅かに絞まって苦しい。
「次はこれ、ケイン。懲罰用の鞭だよ、昔は学校とかで子供のお仕置き用に使ってたんだ」
次に雪兎が持ったのは黒い棒だ。棒としか言いようがない。
「体罰があった時代ですねー、名前的にヨーロッパですか?」
「正解、ケインはイギリス英語。まぁ……棒だね。ちなみにこれはカーボン製」
新しい空き缶を置き、それを叩く──と言うより殴る。当然空き缶はへこんでしまった。先程よりもへこみが深い。
「強くやるとただの打撲だからね、加減が難しくって……練習したんだよ」
「練習……? ユキ様、何を叩いたんですか?」
「心配しなくてもこういう空き缶とか、サンドバッグ的な物だよ。叩き心地を確かめるために豚肉もやったかな」
「お肉は叩くと柔らかくなりますからね。俺も叩くとトロットロになりますよ?」
どうぞ、と手を広げたいが残念ながら腰の後ろで手錠をかけられている。
「そして最後……これ、一本鞭」
ゲームだとかで見る武器の鞭といえばこれだろう、教師キャラの武器などは除外して。振るう紐状の部分が一メートル以上あり、地面に引きずっている。
「これは本当に扱いが難しくってねぇ……大学でスポーツウィップサークルがあったから何度か参加したよ。まぁ……その、真面目にスポーツやってる中に不純な動機で混じるのは、アレで……入ってはないんだよね。上手かったからって誘われてるけどさ」
鞭ってスポーツになってたのか、知らなかった。
「一人で練習して、ワインのコルク抜いたりペットボトルのキャップ空けたりなんて特技も身につけたんだよ」
「素晴らしい……! その正確性で俺の弱点を虐めてくださるんですね!」
「そういうこと。期待してね」
雪兎は練習の成果を見せたくてたまらないようで、また新しい空き缶を置いた。飲んで空になった物をこの日のために取っておいたのかななんて考えると微笑ましい。
「見てて」
雪兎は自身の身長に匹敵するような鞭を振るった。鞭はパァンッと破裂音を鳴らし、見事に空き缶を打った。
「……この一本鞭は拷問用でね、本来なら皮膚どころか肉を裂くような代物なんだよ。しっかり振れば平気でマッハ2に到達する、音速の壁にぶつかる音が聞こえただろう? パンッて。アレは机や空き缶に当たった音じゃないんだよ」
少し演技がかった口調で雪兎は楽しげに鞭について語り、打った空き缶を拾って俺の目の前に持ってきた。アルミ缶だろうそれはへこむどころか裂けている。
「ちなみにこれはカーボン製。どう? ポチ、どの鞭でお仕置きされたい?」
もちろん一本鞭だ、一番痛そうなものを選ばない理由はない。だが──
「……ユキ様の御心のままに」
──俺は犬だ、雪兎の気持ちが全てだ。雪兎が振りたい鞭を振ってもらうべきだ。
「そう」
微笑みをたたえた雪兎は裂けた空き缶を机に置き、一本鞭を振り上げた。
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