ポチは今日から社長秘書です

ムーン

文字の大きさ
252 / 566
夏休み

ばーる!

しおりを挟む
何故バールを使い慣れているのかという疑問をぶつけられ、俺は「雪兎と雪風は俺の経歴を調べたんじゃないのか?」という疑問を抱き、ぶつけた。

「……俺を養子にする前に調べたんじゃないんですか?」

『まぁ車の窓割ったとか? クラスメイト椅子で殴ったとか? 教師蹴り飛ばしたとか? 色々あるけどよ、一部刺激が強い調査結果は雪兎に見せてないんだよな』

「なるほど……」

刺激が強いって何だ、俺はそこまであくどいことはしていないぞ。

「よく覚えてないんですよね……確か、喧嘩してて工事現場突っ込んじゃって、落ちてたバール使ったのが最初だったかな? その後ホームセンターでマイバール買って……持ち手にマステとか巻いてましたね」

「……喧嘩でバール使うの? 相手の人生きてる?」

「鎖骨折ると戦意失ってくれるんですよね、肩上がらなくなるし闇討ちの心配がしばらくなくなるんです」

辞書にドン引きという言葉を載せる時、今の雪兎の顔写真を乗せていれば日本語が読めなくても意味を理解出来るだろう。

「それまでは金属バット持ってたんですけど、野球部でもないのに持つのもアレだし……俺が中学ん時ちょうどアニメやってたんで、あだ名が口先の魔術師になっちゃったし……俺口下手なのに」

『すまんアニメネタは分からん』

「元はゲームです」

『もっと分からん。その辺は飛ばしていいぞ』

アニメ、ゲームネタを飛ばせだなんて……若神子家の養子になるまでの俺の存在を否定するようなものだ。

「長いバールは便利でしたよ、うるさい暴走族をバイクごと一掃出来ましたし、俺を轢こうとした車のフロントガラスに突っ込んで運転手を引っ張り出すことも出来ました、引っ掛けるとこがありますからね。バットじゃ出来ないことですよ」

バールは一部界隈でエクスカリバールなんて揶揄されるアイテムだ、エクスカリバーは伝説の聖剣、つまりバールは最強ということだ。

「約束された勝利のバール……バールを掴んだ時点で俺の勝ちは確定するんですよ。なので、バールください」

『スタン警棒にしとく。同じ長物だからいいだろ』

「えー……俺の宝具バール…………分かりましたよ」

『不満そうな顔しやがって可愛いぜぇ』

雪兎を叱っていた時とは打って変わって機嫌良さげな雪風を見て安堵する。叱る理由も気持ちも分かるが、しゅんとした雪兎を見ているのは胸が痛かったのだ。

『とにかく、雪兎。早いうちにお前を帰国させる、抵抗するようなら睡眠薬でも何でも盛る。真尋、お前も説得しとけよ』

「そんなぁ!」

「ユキ様、仕方ありませんよ。ご学友の調査が終わるまでの間だけでしょうから……ね? それに夏休みは帰省するものですよ、おじい様の誕生日も少し前に過ぎましたから、一緒にお祝いしましょう?」

「ポチぃ……ぅぅ……やだけど、どうしようもないよね……」

ガックリと肩を落とした雪兎は挨拶もせずに雪風との通話を切り、水兵風の服のままベッドに飛び込んだ。

「……ポチ、これからバール振り回すようになるの? 僕やだよ……ポチは可愛い愛玩犬がいい」

「スタン警棒になりましたから大丈夫ですよ。それに人の骨くらい今の俺なら徒手空拳で折れます。手足なら両手で両端掴んで真ん中を膝でドンッ、鎖骨なら仰向けに転がして即踵落としでドンッ、完璧です!」

「猛獣じゃん……僕の愛玩犬どこやっちゃったの……?」

雪兎が何故か落ち込んでいる、愛玩犬をご所望のようなので俺はお手をしながらワンと鳴いてみた。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

上司と俺のSM関係

雫@不定期更新
BL
タイトルの通りです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

疲弊した肉体は残酷な椅子へと座らされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

少年達は吊るされた姿で甘く残酷に躾けられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...